輸入食品海外製造企業登録管理規定 執筆日:2021年11月26日

2021-11-26

執筆日:2021 年 11 月 26 日

輸入食品海外製造企業登録管理規定

「輸入食品海外製造企業登録管理規定(税関総署令 2021 年第 248 号)、以下、登録管理規定(2022 年 1 月 1 日施行)」により、中国に食品を輸出する海外の食品製造会社、及び、倉庫会社は、中国での登記が義務付けられました。

1.登録管理規定に基づく登録義務

①  登録を要する海外企業

登録管理規定(第 2 条)は、「中国本土向けに食品を輸出する海外製造、加工、貯蔵企業」に対して、登記を義務付けています。

尚、同条には、「輸入食品海外製造企業には、食品添加物、食品関連製品の製造、加工、貯蔵企業を含まない」と規定されていますが、この「食品関連」とは、「食品に使用する包装材料と容器。食品生産経営に使用する工具・設備。食品に使用する洗剤・消毒剤等」を指します。

②  貯蔵企業の位置付け

税関総署の公布した登録管理規定の解釈では、「食品の生産加工と保管は、共に食品安全に影響する」ため、製造、加工企業だけではなく、貯蔵企業も適用対象となる事が記載されています。

尚、貯蔵企業とは、食品を保管できる場所・設備を有し、且つ食品保管安全衛生要求に基づき、食品に対して保管を実施する企業」を指します。過去に上海税関・食品科にヒアリングした結果では、一部の冷凍冷蔵食品を保管する貯蔵企業が登録対象になるとのことでしたが、今回、改めてヒアリングした結果では、「原則的には、全ての食品を保管する国外貯蔵企業が適用対象になる」との回答でした、

因みに、日本国農林水産省の公表している Q&A では、「貯蔵の範囲にはどこまでですか」という質問に対し、「現在中国へ確認中です。農林水産省としては常温の場合、登録不要と考えております」と回答されています。

③  商社

食品を取り扱う商社の場合、「輸出入食品安全管理弁法(税関総署令 2021 年第 249 号)、2022 年 1 月 1 日施行」により、登録が義務付けられていますが、これは、現時点(改定前の輸出入食品安全管理弁法)でも同様の登録義務が規定されており、改定に伴い、大きな変更がある訳ではありません。

2.登録要件と登録方法

①  登録要件

輸入食品海外製造企業の登録条件は、第 5 条に以下の通り規定されています。

(一)所在国(地域)の食品安全管理体系が、税関総署の同等性評価、審査に合格している。

(二)所在国(地域)主管当局による承認を経て設立され、その有効な監督管理下にある。 (三)有効な食品安全衛生管理・防御体系が確立されており、所在国(地域) において合

法的に製造・輸出を行い、中国本土向けに輸出する食品が、中国の関連法律法規・食品安全国家基準に適合する事を保証できる。

(四)税関総署と所在国(地域)の主管当局が、協議の上で定めた検査検疫要件に合致して

いる。

②  登録方法

登録方式は、取扱商品によって「所在国(地域)の主管当局による推薦登録と、企業自身による申請登録」の二種類に分かれています(第 6 条)。

1)所在国の政府機関による推薦登録

以下の食品に該当する場合、所在国の主管当局(日本企業の場合は、日本国政府・農林水産省)により、中国政府(税関総署)での登録が行われます(第 7 条)。

●  肉及び肉製品(肉与肉制品)、ケーシング(肠衣)、水産物(水产品)、乳製品(乳品)、ツバメの巣及びツバメの巣製品(燕窝与燕窝制品)、ミツバチ製品(蜂产品)、卵及び卵製品(蛋与蛋制品)、食用油脂及び搾油原料(食用油脂和油料)、餡入り小麦粉製品(包馅面食)、食用穀類(食用谷物)、穀類製粉工業製品及び麦芽(谷物制粉工业产品和麦芽)、生鮮及び乾燥野菜並びに乾燥豆類(保鲜和脱水蔬菜以及干豆)、調味料(调味料)、堅果及び種子類(坚果与籽类)、ドライフルーツ(干果)、未焙煎の珈琲豆及びカカオ豆(未烘焙的 咖啡豆与可可豆)、特別用途食品(特殊膳食食品)、保健食品(保健食品)。

2)企業自身の登録

それ以外の食品取扱企業は、自ら又は代理人に委託して、税関総署のシステム(国際貿易単一窓口:China International Trade Single Window)で登録申請する事になります。

尚、「輸入食品海外製造企業登録管理規定と輸出入食品安全管理弁法実施に関する事項の公告(税関総署公告 2021 年第 103 号)」では、登記に関する実務的な事項(登記に使用するシステムの URL 等)が紹介されています。

●  輸入食品国外生産企業登録管理システム

https://cifer.singlewindow.cn/

●  中国国際貿易単一窓口(このシステムから輸入食品海外製造企業登記管理システムにアクセス可能)

https://www.singlewindow.cn/

3.申請資料

登録に際しての申請資料に付いては、所在国政府推薦の場合、企業自身の場合で、以下の通り規定されています。

企業の登録申請書には、企業名、所在国(地域)、製造地住所、法定代表人、 担当者、連絡先、所在国(地域)主管当局が承認した登録番号、登録申請食品種別、製造種別、製造能力等の情報を含むことが規定されています(第 10 条)。

①  所在国の政府機関による推薦登録の場合

所在国の政府機関による推薦登録の場合、所在国政府機関は審査・検査を経て、登録要件に適合することを確認した後、税関総署に登録を推薦するとともに、以下の申請資料を提出することが求められています(第 8 条)。

(一)所在国(地域)政府機関の推薦状

(二)企業リスト及び企業登録申請書

(三)所在国(地域)主管当局が交付した営業許可証等、企業の証明書類

(四)所在国(地域)主管当局による推薦企業が規定の要件に適合する旨の声明書

(五)所在国(地域)主管当局が関係企業に対して審査及び検査を行った審査報告書。

尚、税関総署が必要と認める場合は、企業の工場、製造ライン、冷凍冷蔵庫の平面図、工程フローチャート、企業の食品安全衛生・防御体系に係る文書の提出が求められます。

因みに、日本側では、農林水産省作成した「中国向け輸出食品の製造等企業登録に付いて」では、同省による企業登録対象企業に対して、以下の書類提出を求めています。

●  食品衛生法に基づく営業許可証(有効なもの)、食品衛生法に基づく営業届出を行ったことを閉める書類、条例に基づく営業許可証、条例に基づく届出書の写しの何れか。

●  食品衛生監視票の写し(許可業種は 1 年前からのもの。届出業種は直近の監視の際に交付されたもの)

●  申請書と登録手数料(10,400 円)分の収入印紙

②  企業自身の登録の場合

上記以外を取扱う企業に対して、自ら又は代理人に委託して税関総署に登録申請を行うとともに、以下の申請資料の提出を求めています(第 9 条)。

(一)企業登録申請書

(二)所在国(地域)主管当局が交付した営業許可証等、企業の証明文書

(三)本規定の要件に適合することを誓約する旨の企業の声明書

③  登記実務の近況

登録管理規定施行前の現状の登録手続きに付いて、税関総署のホットラインに確認したところ、「現時点(2021 年 11 月末)では、税関が指定した一部の国外生産企業のみをパイロット企業(試行企業)として、国際貿易単一窓口で登録をテストしている。パイロット企業以外は、暫定的に登録申請しないように(申請しても審査されない)」との回答でした。ただ、既に登記を申請した日本企業(インプットは完了・中国側の反応待ち)の企業も有りますので、施行後の状況を、随時確認する必要があります。

4.登録後の状況

①  登録通知

税関総署審査後、条件に合致する企業に対しては、中国での登録番号を交付し、所在国(地域)主管行政機関、若しくは、輸入食品海外製造企業に書面で通知します。

要件に合致しない場合は、登録を行わず、その旨を書面で通知します(第 14 条)。

②  登録番号の印刷

登録された企業は、中国本土向けに食品を輸出する際に、食品の内部、及び外部包装に中国での登録番号、若しくは、所在国(地域)主管当局が承認した登録番号を記載する必要があります(第 15 条)。

③  登録の有効期限

登録の有効期間は 5 年となります(第 16 条)。

有効期間内に、輸入食品海外製造企業の登録情報に変更が生じた場合は、登録申請ルートを通じて、税関総署に変更申請を行う必要があります。

尚、製造地移転、法定代表者の変更、所在国(地域)が付与する登録番号の変更については、中国での登録番号は自動的に失効しますので、再申請が必要となります(第 19 条)。

また、期限の延長に付いては、有効期間満了前 3 ~ 6 カ月以内に、登録申請ルートを通じて、税関総署に登録延長申請をする必要があります(第 20 条)。