マクドナルドでの結婚式

2025-10-16

マクドナルドでの結婚式

中国の若者の価値観の多様性により、マクドナルドや海底捞(火鍋店)で結婚式を挙げる若者が増えているとの記事が、北京中央広網をはじめとする、各種サイトに掲載されています(2024年10月9日)。

記事では、マクドナルド・ケンタッキーなどのファーストフード店や、海底捞で結婚式を挙げる若者を紹介し、その理由を分析しています。

まず挙げられるのは、「安い」という事ですが、それは当然でしょう。マクドナルドでは、数十人が集まり、最低消費金額を満たせば場所を貸し切りにできます。広東省仏山市のマクドナルドでは、2階スペースの貸し切りが、800元の最低消費で可能であり、総費用2000元(約4万円)未満で挙式したという実例を紹介しています。

また、日本にも進出している火鍋チェーン海底捞では、従業員が式のセッティングを手伝うだけでなく、婚礼歌の合唱までしてくれるという事で、従業員もなかなか大変です。

ただ、費用以上に、ポイントとなっているらしいのが、人付き合いと儀礼的対応を最低限にしたいという動機です。記事では、内向的な新郎新婦の、「結婚式で大勢の人が詰めかける光景を想像しただけで怖くなる。式の進行に合わせることや、儀礼的な乾杯、挨拶がつらい」という心情を紹介しています。

ファーストフード店で挙式をすれば、親しい人間しか集まらないし、自分たちで進行やドレスコードなどの一切が決められる。ご祝儀も省略できるので、後々を考えれば面倒がない、というようなメリットが紹介されています。

ファーストフード店での挙式は極端ですが、日本においても、最近は、筆者の時代より、結婚式が簡略化される傾向にあるようです。筆者が結婚した折は、ホテルで100人以上を招待しての式が普通であり、会社・取引関係の内、誰を招待するかに頭を悩ませたものです。招待客や仲人が、会社内の人間関係にも影響するため、今後の社会人生活を左右する場合もあります。

この様な煩わしさを避けるため、親族や親しい友人だけで、小規模に挙式するケースが増えているようですし、それを周りも許容している。つまり、日本の社会も、徐々にドライになってきているように思えます。

中国のファーストフード店での挙式は、その究極系という感があり、まあ、実際には、記事で匂わせているほど多くはないのでしょうが、ドライな人間関係の行き着く先といえるでしょう。

一般的には、中国人の方が、日本人よりも肉食系というイメージが有りますが、少なくとも、若者に関しては、中国人も草食比率が増しているのでしょうか。

ただ、筆者も中国人の友人から、親が口を出しすぎるという、結婚に関する愚痴をよく聞きます。特に、農村部では、同郷ではない、ひどい場合には、同じ村でないという理由で結婚が反対される場合も有るようで、日本人と比較すると、親の意見を尊重する傾向がある中国の若者が、結婚自体を煩わしく感じるケースも有るようです。

また、現在審議中の婚姻登記条例では、改善が図られていますが、現時点では、結婚時に戸籍簿(户口簿)の提示が必要であり、これが実家に保管されているため、結果として、両親の同意がなければ結婚できないという問題も有ります。

このような、日本とは異なる結婚手続や、日本以上に伝統を重んじる中国では、結婚式が極度に儀礼的になる傾向が有り、自由を求める若者の気持ちにつながっている面があるのかもしれません。

まあ、過度に子供の結婚に介入する毒親は、当然、ファーストフードでの挙式は認めないでしょうから、こうした選択をする新郎新婦の両親は、理解があると思われ、その意味では、幸せな二人です。。

尚、記事では、各種表現を弄して、ファーストフードでの挙式を礼賛していますが、ちょっと押しつけがましいなとの印象を持ちました。

記事で最も腹に落ちた内容は、子供の挙式には、両親が15万元を出してくれると約束してくれたので、先に結婚した兄弟は13万元で挙式。一方、当人は、マクドナルドで1万元の挙式をし、10万元でエーゲ海旅行に行き幸せだったというもので、これなら納得。心から、良かったねと思えます。

結婚するかしないか。どの様な式を挙げるかは本人の選択です。豪華な結婚式であれ、質素な式であれ、本人たちが幸せであれば、それが一番でしょう。

水野コンサルタンシーグループ代表 水野真澄