中国における外資企業の解散方法 執筆日:2020年3月13日

2020-05-31

中国における外資企業の解散方法

中国における外資企業の解散(清算・破産)方式に付いて解説します。

1. 清算・破産のステップ

外資企業の清算(任意清算・特別清算)と、破産の関係は、以下の通りです。

① 解散決議

2020 年 1 月の外商投資法施行により、外資三法(独資企業法・中外合資企業法・中外合作企業法)は廃止されています。これにより、外資企業の解散は、会社法に基づき手続を進める事になります。

会社法では、会社の解散は、経営期間の満了、若しくは、定款に定めた解散事由に該当する場合を除き、出資者総会(股東会)の三分の二以上の議決権を有する出資者の可決が必です(会社法・第 43 条)。

一方、外商投資法は、会社の組織(出資者総会の組成等)に関しては、5 年間の移行期間を認めていますので、2020 ~ 2024 年の間、出資者総会を設置せず、引き続き、董事会を最高意思決定機関とする中外合弁企業もあり得ます(独資企業の場合は、外商投資法施行前から、出資者総会が最高意思決定機関となっています)。この様な中外合弁企業に付いては、期前解散には、董事会の満場一致決議が必要です。

② 清算

会社清算に際しては、解散事由発生日より 15 日間以内に清算委員会を組成し、清算業務を開始する必要が有ります。清算委員は出資者により構成されると会社法・第 183 条には規定されていますが、通常は、董事会メンバーが、清算委員となります。

この様な形、つまり、出資者が会社の清算作業(資産処分、債務弁済、会社登記の抹消など)を進めるのが、任意清算となります。

これに対して、期限を過ぎても出資者が清算委員会を組成せず、清算を開始しない場合、債権者は裁判所に、関係者を指定して清算委員会を組成し、清算業務を行なう事を申請できます(会社法・第 183 条)。この様に、会社が自主的な清算手続きを開始しない場合において、債権者主導で清算委員会を組成し、清算作業を行うのが特別清算です。

この様に、任意清算と特別清算の違いは、清算委員会を自社(出資者)で組成できるか否かであり、何れの形式であっても、会社資産の範囲で債務弁済を完了できるようであれば、双方、清算と位置付けられます。

一方、債務弁済ができない場合、清算形式での会社の解散はできなくなり、破産手続に移行する事になります。

③ 破産

会社法・第 187 条に、清算委員会は会社の財産を清算し、資産負債表と財産リストを作成した後、会社の財産で債務返済が足りない事を発見した場合、法に基づき人民裁判所に破産宣告を申請するものとする。会社が人民裁判所に破産を宣告された後、清算委員会は清算業務を裁判所に引渡すものとすると規定されています。

つまり、会社の残余財産により、債務弁済ができない場合、裁判所に破産を申告する必要が有ります。勿論、債権者が、債務弁済を求めて訴訟を提起する事により、破産に移行する場合もあります。

破産手続きになると、会社の自主的な解散手続はできなくなり、裁判所主導で、手続が進められます。

2.出資者の責任

外資企業は、殆どの場合、有限責任会社形態で設立されます(外資パートナーシップ形態を採用する場合を除く)。よって、出資者は出資金の範囲内で責任を負う事になり、外資企業が債務弁済できない場合でも、出資者が債務保証などをしていない限り、代理弁済義務は有りません。

但し、「外資の非正常撤退による中国関連利益の国際間の追及と訴訟活動の手引(商資字[2008]323 号)」には、正常な会社解散業務を行わず、債権者に損害をもたらした場合、有限責任会社の出資者、董事は相応の民事責任を負い、会社の債務に対して弁済責任を行う事が定められています。