外資企業の移転について 執筆日:2018年6月9日

2020-05-31

外資企業の移転について

中国においては、企業を設立した場合、その登録地を移転する事は、各種の困難が伴います。

1.移転に際しての問題点

企業の移転が、同一市内、且つ、同一区内であれば、通常、特段の問題は生じませんが、区をまたぐ場合、税務登記変更が移転の障害となる傾向が有ります。

税務登記の変更は、登記をそのまま移動するのではなく、既存の登記を抹消し、その上で、移転先の所管税務機関で、新規の登記を行います。既存登記の抹消に際して、申請が、なかなか受理されず、手続が引き延ばされるケースが、実務上、少なく有りません。申請が受理されない理由は、当該税務機関の税収確保を意図したものですので、納税に貢献している企業ほど、手続が難しくなります。何れにしても、区をまたぐ移転には困難が伴い得る事、更に、市をまたぐ移転は、不可能に近いと言えるほど困難である事を、念頭に置いた方がよいでしょう。

勿論、市をまたぐ移転が全くない訳では有りませんが、極めてまれな事例であり、認められた場合でも、数年を要する作業となります。区をまたぐ移転は、市をまたぐ移転ほど困難ではありませんが、所管税関の受入姿勢次第であるため、所管税務機関での事前確認は極めて重要です。

2.実際的な手法

市・区をまたぐ移転が、上記の通り困難であることから、移転先に法人を新設し、営業譲渡(資産・人員の移管)を行った上で、既存の会社を清算する方法が、代替案となります。

この場合の注意点は、通常の、新設・清算とほぼ同様になりますが、生産型企業の場合、設備の移管が重要なポイントとなります。

設備の移管に付いては、移転対象の設備の状態によって、手続が異なります。

① 非保税免税設備

移管対象となる設備が、国内購入設備・一般輸入設備である場合、税関手続・検疫手続きは不要ですので、注意すべきは税務上の問題となります。具体的には、設備の譲渡価格と増値税の納税ですが、設備の譲渡は、適正時価に基づく必要が有り、その譲渡価格に対して、増値税が課税されます。

自己使用中古設備の譲渡に際しては、通常税率(16%)ではなく、「増値税管理徴税率に関する問題の公告(国家税務総局公告 2014 年第 36 号)」により、3%の軽減税率適用が認められています。

② 保税・免税設備

1)税関監督未解除の場合

保税・免税設備である場合、税関所管区が異なる移転に付いては、設備転廠手続(保税・免税状態のままの移管)は認められませんので、税関で監督解除手続を行った上で、国内販売する事になります。

監督解除に際しては、輸入後 5 年未経過の場合、未経過期間に対して輸入段階の関税・増値税が課税されます。また、保税・免税設備については、輸入時に機電輸入許可と検疫手続が免除されていますので、監督解除時に「機電産品輸入許可証」と「検験検疫証」の取得が必要となります。尚、販売段階の増値税に付いては、上記 ① と同様になります。

2)監督解除済の場合

税関監督解除済の場合、輸入段階の関税・増値税を追納する必要がありませんが、通常、譲渡前に、「機電産品輸入許可証」・「検験検疫証」の取得手続が必要となります。

これらの手続は、本来は、税関監督解除時に必要となるものですが、設備を自社工場内で継続使用する場合、「機電産品輸入管理弁法(商務部・税関総署・質量監督検験検疫総局 2008 年第 7 号)」により、この手続が免除されているため、譲渡時に、手続が必要となるものです。尚、販売段階の増値税に付いては、やはり、上記 ① と同様になります。