中国における会社登記制度の合理化と外資企業設立実務 執筆日:2017年11月11日

2020-05-31

中国における会社登記制度の合理化と外資企業設立実務

2014 年に実施された商事登記制度改革、2015 ~ 2016 年に実施された、三証合一・五証合一、2016 年に実施された、非ネガティブリスト外資企業の設立・登記変更事項に関する許可制から備案制への変更などにより、外資企業設立手続は合理化されています。

但し、実務面で管理強化が実施されている事項も有り、法律上の手続簡略化が、所要時間の短縮に、そのまま反映されている訳ではありません。

では、現状、どの様な業務簡略化・管理強化が実施され、どの程度の設立所要期間となっているか、という点を、外資販売会社の設立を例に取って解説します。

1.手続合理化の概要

外資企業設立業務に関する手続合理化の概要は以下の通りです。

① 商事登記制度改革

検資報告書の作成が不要となり、地域によっては、設立申請時の不動産賃貸借契約書・産権証・不動産管理部門での賃貸借契約の登記証の提示が不要となっています。

② 五証合一

営業許可証・税務登記証・組織機構コード証、社会保険登記証・統計登記証が統合されました。これにより、各政府機関での登記証発行申請が不要となり、工商行政管理局で、代表して手続ができるようになりました。

③ 外資企業設立許可を備案制に変更

非ネガティブリスト外資企業の設立に付いては、工商行政管理局での法人登記手続前に、商務主管部門での許可審査が必要でしたが、これが非ネガティブリスト業種の場合は備案制に変更になりました。

これにより、申請書類の中で、作成に手間を要するフィージビリティスタディの提示が不要になり、また、審査時間が短縮されています(1 ヶ月程度が 1 週間程度に)。

尚、根拠法となる「外商投資企業設立・変更備案管理暫定弁法(商務部令 2016 年第 3 号)」には、商務主管部門での備案手続は、営業許可発給前、若しくは、発給後 30 日以内にオンラインで行うと規定されていますが、実際には、営業許可証発給前(従来のタイミングと同様)の手続が求められています。

2.合理化と実務

法制度上は以上の通りで、確かに、1 ~ 1.5 ヶ月程度の期間短縮効果は有りますが、実務上の管理強化が実施されている点も有ります。

外資販売会社の場合、各行政機関で以下(①・②)の様な実務手続が必要となり、その実務は依然として煩雑です。更に、法人登記に関して実名制が採用された事により、法定代表人が所管税務局の窓口に行かないと、設立手続が進められない地域が多くなっています。更に、銀行口座の開設に際しての審査、窓口の要求も厳しくなっており、基本口座開設に際しての法定代表人の窓口訪問や、中国内の電話番号の事前取得と、その番号に対する通話確認(銀行から登録した電話番号への本人確認)が実施されるケースが多くなっています。この様な背景より、依然として 3 ヶ月程度の時間が必要となり、法定代表人がスムーズに中国出張できない場合は、更に、時間が必要となっています。

① 税務関係

● 申告用 USB の購入(1 営業日)

● 税務局のシステムに会社情報を登録(1 営業日)

● 法定代表人の実名認証(1 営業日)

● 納税用口座の届出(2 営業日)

● 一般納税者資格申請(5 営業日)

● 税金自動引落のための三者協議書の税務局での届出(2 営業日)

● 発行する発票の種類の決定と発票購入者の届出(5 営業日)

● 財務会計制度、及び使用会計ソフトの備案(1 営業日)

● 輸出還付資格認定の申請(5 営業日)

● 発票使用簿の購入(1 営業日)

● 発票発行システムの購入(1 営業日)

● 発票購入(税務局窓口。1 営業日)

② 税務関係以外

● 人民元基本口座と納税用人民元一般口座の開設(7 ~ 10 営業日)

● 「対外貿易経営者備案登記表」の申請(商務主管部門・5 営業日)

● 「出入境検験検疫報検企業備案表」の申請(検験検疫局・5 営業日)

● 外貨登記、資本金口座と外貨一般口座の開設(5 ~ 7 営業日)

● 「海関報関単位注冊登記証書」(税関登記証)の申請(7 営業日)

● FDI 入金登記(資本金口座銀行・5 営業日)

● 電子口岸カードの申請(税関電子口岸センター・7 営業日)