外資パートナーシップ企業 執筆日:2017年1月7日

2020-05-31

外資パートナーシップ企業

中国の外資企業は、三資企業(独資・中外合資・中外合作)形式を選択するのが通常ですが(注)、事例としては少ないのですが、パートナーシップ企業・株式会社形式が採用される場合もあります。今回は、外資パートナーシップに付いて解説します。

1.外資パートナーシップ企業とは

外資パートナーシップ企業(中国語:外商投資合伙企業)は、「外国企業・個人が中国内で設立するパートナーシップ企業管理弁法(国務院令 2009 年第 567 号)」・「外商投資パートナーシップ企業登記管理規定(国家工商行政管理局令 2010 年第 47 号)」を根拠としています。

外資パートナーシップ企業とは、外国企業・外国人を含む 2 者以上の出資者で構成されたパートナーシップを指し、ジェネラルパートナーシップ(外商投資普通合伙企業)とリミテッドパートナーシップ(外商投資有限合伙企業)に分類されます。

ジェネラルパートナーシップとは、出資者全てがパートナーシップの債務に無限責任を負う形態を指し、リミテッドパートナーシップとは、無限責任出資者と有限責任出資者で構成される(最低1者は会社の債務に対して無限責任を負う)パートナーシップを指します。

利益分配・責任負担形式は、外資パートナーシップ設立時に工商行政管理局に届出る必要が有り、それに従う事になります。

つまり、出資者間の合意に基づき利益分配方法は設定できます。責任負担方式も同様ですが、ジェネラルパートナーは、会社の負債に対して無制限で責任を負う必要が有ります。

② 外資パートナーシップ企業の設立

外資パートナーシップは、外資企業(三資企業)とは異なり商務主管部門での設立許可・備案は不要ですので、直接、工商行政管理局で設立登記を行います。

尚、外商投資産業指導目録の禁止類に該当する業種、及び、出資形態や出資比率に制限がある業種(合資・合作形態に限定されるなどの規制が有る業種等)に付いては、外資パートナーシップの設立は認められません。

③ 外資パートナーシップ企業の特徴

外資パートナーシップ企業の特徴は以下の通りです。

● 責任負担・利益配分を当事者間で決定する事ができる。

● 外国企業が役務により出資できる。

● 企業所得税法上は課税対象ではなく、出資者に直接課税される。

● 「外商投資管理作業に関する問題の通知(商資函[2011]72 号)」により、外資パートナーシップ企業が行う中国内持分出資は外国出資と見なされる(三資企業の国内出資は、投資性公司等の特殊な例を除き、内国出資と扱われる)。

● 中国人個人が出資者となれる(三資企業は中国人個人の出資は原則認められない)。

④ 中外合作企業との違い

外資パートナーシップ企業と中外合作企業は、責任負担・利益分配方法を、契約書で定める事ができる類似点が有ります。

その上で、外資パートナーシップ企業は、上記の通りのメリットもありますので、出資方法の柔軟性が持てる(中国人個人が出資者となれる。外国企業は役務により出資できる)、課税単位とはならないので、日本企業に対する配当支払い時の二重課税(企業に対して課税され、更に、配当に対しても 10%源泉徴収課税が行われる)が回避できるというメリットがあります。

一方、デメリットとしては、事例が少なく明確な実務上の判断ができない事、更には、最低 1 者は、企業の債務に対して無限責任を負わなければいけない点です。

中外合作企業は有限責任制ですので、原則として、出資者は出資の範囲で会社の債務に責任を負えば良いのですが、外資パートナーシップの場合は、ジェネラルパートナーシップの場合は全員が分担して、リミテッドパートナーシップの場合は、最低 1 社が無限責任を負う必要が生じます。この様なリスクの高さが、外資パートナーシップ企業の普及に時間を要している点かと思われます。

注:

2020 年 1 月 1 日に、「外商投資法」が施行され、三資企業法は失効となりました。

それ以降は、中外合作企業の設立は不可(設立済の会社は、経営期間満了までは定款通りの運営が可能)となっています。

現在、外資企業についても、「会社法」に基づき有限責任会社として設立する事になります。若しくは、出資比率に基づかないリスク負担や利益配分を行いたい場合は、外資パートナーシップ形態を採用します。