総合所得に対する個人所得税課税 執筆日:2019年5月2日

2020-05-31

総合所得に対する個人所得税課税

中国の個人所得税法は、2019 年 1 月 1 日に大規模な改定が実施され、その一環で、給与所得・役務報酬所得・原稿料所得・ロイヤルティ所得の 4 種類が、「総合所得」として統合されるという、所得区分の変更も実施されました。

但し、源泉徴収時と確定申告時では、異なる対応が必要となりますので、その納税方法を解説します。

1.居住者の場合

中国居住者の場合は、今回の個人所得税法改定の影響で、年度(1 ~ 12 月)で所得額を確定する様になっています。但し、従来通り、毎月の源泉徴収が必要であり、これによる納付額の過不足を、翌年 3 月 1 日~ 6 月 30 日確定申告で調整します。

① 源泉徴収時

源泉徴収義務者は居住者個人に対し給与、役務報酬、原稿料、ロイヤリティを支払う際、下記に示す方法で、源泉徴収を行います。源泉徴収の根拠となるのは、「個人所得税源泉徴収申告管理弁法(国家税務総局公告 2018 年第 61 号)」です。

1)課税所得の算定

● 給与所得

給与所得は、月次報酬の全額を収入とした上で、基礎控除(毎月 5,000 元)、及び、特別付加控除などを適用した上で、課税所得を算定します。

● 労務報酬・原稿料・ロイヤルティ所得

労務報酬とロイヤルティは、受領額の 80%を課税所得とします(但し、毎回の受領額が、4,000 元以下の場合は、800 元を控除費用とします)。

原稿料は、受領額の 70%を収入額とした上で、上記の計算を適用しますので、受領額x 70%x 80%= 56%が課税所得となります。

2)源泉徴収税額の算定

● 給与所得

給与所得に付いては、月次給与に対して、上記1)方法(受領額から、基礎控除・特別付加控除などを控除した金額)で課税所得を算定した上で、3 ~ 45%の超過累進税率を適用して、源泉徴収額を計算します。

● 労務報酬・原稿料・ロイヤルティ所得

役務報酬、原稿料、ロイヤリティ所得は、毎回の収入に対して、上記1)の方法で課税所得を算定した上で、源泉徴収税額を計算します。

役務報酬所得は、20 ~ 40%の税率を適用し、原稿料所得、ロイヤリティフィー所得は、20%の固定税率を使用します。

② 確定申告時

確定申告時に、4 種類の総合所得は、合算の上、税額を再計算する事になります。

役務報酬・ロイヤルティは 20%の費用控除、原稿料は、70%を収入とした上で、20%の費用控除が認められますので、計算式は、以下の通りとなります。

課税所得=

(給与 100%+役務報酬所得 80%+原稿料所得 56%+ロイヤルティ所得 80%)-基礎控除 6 万元―特別付加控除―その他

その上で、3 ~ 45%の超過累進税率(給与に対して適用される税率)を乗じ、速算控除を適用して税額を算定します。

2.非居住者の場合

非居住者の場合は、税制改定後も、月次で税額を確定します。また、4 種類の総合所得の全てに対して 3 ~ 45%の超過累進課税を適用しますが、課税所得の算定方法は、以下の通りです。

① 給与

月次申告納税が必要となります。毎月の給与額から 5,000 元の基礎控除を適用し、課税所得とします。特別付加控除の適用は認められません。

② 役務報酬・ロイヤリティ所得

毎回の収入額を単位とし、これを 80%にして(20%を費用として控除)課税額を算定します。

③ 原稿料所得

毎回の収入額を単位とします。この 70%を収入とし、更に、20%の費用控除が認められますので、結果として、受領額の 56%が課税所得となります。

尚、非居住者は、上記の通り、依然として月次で税額を確定させるため、賞与に関する考慮が必要となります(賞与支給月の税額が高いまま固定してしまうため)。

このため、年に 1 回の賞与に対して課税軽減措置(賞与を 6 分割して、6 ヶ月にわたって納税する方法)が、財政部・税務総局 2019 年第 35 号に認められています。