【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.69

2016-05-26

**【INDEX】 ** **【中国ビジネス・トレンド】 **[**外資企業の対外借入制度の規制緩和**](#1) [ ](#1) **【水野真澄セミナー情報】 **[**■ 第26回 中国ビジネス講習会**](#2) [**■ 企業研究会主催「中国外貨管理・クロスボーダー人民元の最新動向」** ](#3) **【書籍】 **[**中国担当者マニュアルステップワンシリーズ、中国・増値税の制度と実務**](#4)


**【中国ビジネス・トレンド】
**

外資企業の対外借入制度の規制緩和

1.規制緩和の経緯
外資企業が対外借入を行う場合、借入可能な金額は定款に定めた総投資額と登録資本金の差額(投注差)の範囲までと決められています。
この制約は一般的に投注差管理と呼ばれていますが、外貨借入については「外債管理弁法(国家発展計画・財政部・国家外貨管理局令 2003 年第 28 号)」、人民元借入については「外商直接投資人民元決済業務操作細則を明確にする事の通知(銀発[2012]165 号)」が根拠規定となり、この管理方法 が実施されてきました。

この状況下、「全範囲クロスボーダー融資マクロプルーデンス管理の拡大に関する試行通知(銀発[2016]18 号)」が 2016 年 1 月 22 日に公布、同月 25 日に施行され、上海、天津、広東、福建の自由貿易試験区企業に限定したうえで、投注差の範囲ではなく、純資産をベースに算出され る限度額までの対外借入(外貨、人民元)が認められました。

次に、2016 年 4 月 15 日、上記 18 号通知の操作手引きが外貨管理局により制定され、ここで従来の投注差による管理方法に対して、 これまで返済しても枠が復活しなかったクロスボーダー人民元借入、中長期外貨対外借入について、一律に残高管理(返済後に枠が復活する)に変更するという 規制緩和が実施されました。

そして 5 月 3 日、「全国範囲で全範囲クロスボーダー融資のマクロプルーデンス管理を実施する事に関する通知(2016 年 4 月 29 日公布)」が施行された事により、地域を限定して実施されていた純資産をベースにした新しい外債枠の管理方法が、全国で選択可能となりました。

**2.純資産をベースとした新管理方法
** ※この新管理方法は、金融機関と非金融機関では内容が異なりますが、ここでは企業(不動産・リース・投資性公司を除く)を前提とします。

純資産をベースとした新管理方法では、「調整済借入残高」が前年度の会計監査報告書の純資産以下となるように制限されます。
調整済借入残高とは、外貨とクロスボーダー人民元借入金額、トレードファイナンス金額(金融機関は偶発債務も含める)の合計額に、一定の調整を加えた金額となりますが、調整内容については以下の通りです。

● クロスボーダー人民元・外貨対外借入残高 × 期間リスク調整(注 1)× 類型リスク調整(注 2)+外貨対外借入残高 × 為替リスク調整(注 3)

注 1:返済期間 1 年以下の短期借入は 1.5 を乗じ、1 年超の中長期借入は 1 を乗じる。
注 2:オンバランス・オフバランスの類型を指すが、双方 1 に設定されている。
注 3:外貨対外借入残高に 0.5 を乗じた金額を加算する。

**【例】**借入内容(クロスボーダー人民元短期借入 50 万ドル相当、外貨対外借入を短期 40 万ドル、中長期 60 万ドル)の場合
調整済借入残高= 50 万 ×1.5 + 40 万 ×1.5 + 60 万 ×1 +(40 万+ 60 万)×0.5 = 245 万ドル
※実際の管理は人民元を単位とし、外貨借入金額は引き出し日の為替レート(仲値)に基づき換算します。

尚、外貨貿易融資金額については、20%を対外借入リスク加重残高計算に組み入れる事になりますが(期間リスクは 1)、延払輸入に関する買掛金や輸出代金前受け金はこの限りではなく、加算する必要はありません。

3.新管理方法の注意点
(1)換金と返済について
企業が調達した外貨資金は、必要に応じて人民元に換金する事が認められますが、用途は従来通り、企業の生産経営活動に関連するものに限られます。
また、借入通貨と返済通貨は一致が要求されます。

(2)備案(届出)手続
純資産ベースの新管理方法を選択する場合、中国人民銀行・国家外貨管理局の外債事前審査・許可は不要であり、企業が事前契約締結に際して備案を行う方法が採用されます。
対外借入を行う企業は、対外借入契約締結後、引出の 3 営業日前までに、国家外貨管理局の資本項目情報システムを使用し、借入契約の備案を行います。
尚、企業は対外借入や純資産状況(国外債権者・借入期限・金額・利率、および自社の純資産等)を人民銀行・外貨管理局のシステムに適時登録する必要があり、監査済みの純資産、借入契約の条件変更がある場合、遅滞無く備案変更を行なう事が求められます。

(3)上限超過の場合
対外借入枠算定にあたっての期間リスク・類型リスク・為替リスク等の調整指数は、今後、政策的に変更される可能性がありますが、この調整により、借入残 高が枠の上限を超過した場合、既存の借入契約については、期限まで保有する事ができますが、残高が枠内に収まるまでは、新規の対外借入は禁止されます。

**4.投注差管理の規制緩和
** 投注差管理においては、借入する通貨、期間により、残高もしくは累計による管理が行われてきました。具体的には、短期の外貨対外借入 は返済すれば投注差の枠(借入枠)が復活し、中長期の場合は復活しません。またクロスボーダー人民元借入の場合は、期間にかかわらず返済しても枠の復活は ありませんでした。

<投注差に基づく外資企業の対外借入枠>
● 外貨対外借入
短期外債残高+中長期外債累計額 ≦ 投注差(注 1)
● クロスボーダー人民元借入
対外借入累計額 ≦ 投注差(注 2)

注 1:外国企業の資本金払込が未了の場合は、投注差に払込割合を乗じた金額が枠となる。
注 2:資本金払込が完了した後で借入が可能となる。

この従来の借入枠に対する管理方法について規制緩和が行われ、一律に残高管理に変更されました。つまり、借入通貨、期間を問わず、返済すれば借入枠が復活するようになりました。
ただし、この規制緩和の根拠規定である外貨管理操作手引は、対象を自由貿易試験区に限定したものです。その後、4 月 29 日に公布された「全国範囲で全範 囲クロスボーダー融資のマクロプルーデンス管理を実施する事に関する通知」により全国展開されていますが、他の地域でも規制緩和後の対応がされているかは 確認が必要です。
尚、上海市については、同市外貨管理局・人民銀行へ問い合わせたところ、全ての対外借入に対して残高管理となるという回答でした。

**5.企業の対応について
** 外資企業は、投注差管理方式と新方式(純資産ベース管理制度)の選択適用が可能であり、その方法を中国人民銀行・国家外貨管理局で備案する必要があります。一旦、方法を選択した場合、原則として変更は認められません。
内資企業の場合は、投注差管理が適用されませんので、自動的に純資産ベース管理を選択する事になります。内資企業(中国国内の外資企業からの投資で設立 された企業を含む)は、従前、対外借入枠が有りませんでしたので、今回の制度変更により対外借入枠が付与される事になったのは、重要な変更といえます。

尚、新方式を選択する場合、外債登記等の手続は不要であり、企業がシステム上で登録すれば手続が完了しますので(手続の詳細は外貨管理局による細則の公布待ち)、手続面では投注差管理より簡便と思われます。
ただし、新方式は純粋な借入金額が基準になるわけではなく、借入金額に、期間、累計、通貨などによる調整指数を乗じた金額が使用されますが、この指数は政策的に変更される可能性がある事から、将来的な方向性が不透明な点に注意が必要です。

以上


**【水野真澄セミナー情報】
**
****■ 第 26 回 中国ビジネス講習会
**

** 今回の講習会では、「税務」・「外貨管理」・「税関」の各最新トピックスを、代表の水野真澄が分かりやすく解説いたします。
日本・広州・上海にて開催いたしますので、参加ご希望の方は下記よりお申し込みください。

プログラム:
1 営改増の概要と実務上の注意点
1. 2016 年 5 月の税制改定のポイント
2. 営改増のステップ
3. 流通税改革と実務上の注意点

2 対外借入制度の変更(投注差管理と純資産ベース管理)
1. 新制度の概要(投注差と純資産ベース管理の概要)
2. 投注差管理の残高制への移行(外貨・人民元双方)
3. 内資企業の対外借入

3 輸出入通関単の変更と関税評価額
1. 通関単記載方法の変更
2. 特殊管理者の定義と価格影響判定
3. ロイヤルティの関税評価額加算

4 その他のトピックス

講師:
Mizuno Consultancy Holdings Limited 取締役社長 水野 真澄

参加費用:
MCH 会員企業様※ 無料
非会員企業様 100 元(1,500 円)/人

講演後のご質問について、会員の方は月会費に含まれる回数無制限の Q&A、もしくは、毎月 1 時間の無料面談をご利用ください。
非会員様については、講演会にご参加いただいた方に限定して、後日、30 分無料面談 (弊社日本、上海、広州オフィスにて実施) のご案内をいたしますので、この機会にご相談ください。

開催日及び会場:

日本
日時:6 月 14 日(火)14:00 ~ 16:00 (受付開始 13:45)
会場:横浜情報文化センター 7 階大会議室
住所:横浜市中区日本大通 11 番地
JR・関内駅から徒歩 10 分、みなとみらい線・日本大通り駅から徒歩 0 分
http://www.idec.or.jp/shisetsu/jouhou/access.php
定員:40 名

上海
日時:6 月 22 日(水)14:30 ~ 16:30 (受付開始 14:00)
会場:TKP 上海人民広場カンファレンスセンター
住所:上海市黄浦区黄河路 333 号 2 楼
http://tkpshanghai.net/jinminhiroba/access.shtml
定員:60 名

広州
日時:6 月 29 日(水)14:30 ~ 16:30 (受付開始 14:00)
会場:広州市長大厦 14 階会議室
住所:広州市天河区天河北路 189 号
地下鉄 3 号線 林和西駅 A/D 出口 徒歩 3 分
http://www.chinamayorsplaza.com/index.html
定員:30 名

各会場、定員に達した段階で締め切らせていただきます。

お申込み:
Email にて下記事項を、 study@mizuno-ch.com まで、お申し込みください。
ご参加いただく方のお名前、E-MAIL はご参加者全員分をご記入ください。

【希望会場・日時】
【会社名】
【ご契約会社名】弊社会員企業様のグループ会社(親子、兄弟会社)様の場合は、弊社とご契約されている企業様名のご記入をお願いいたします。
【氏 名】
【電 話】
【E-mail】

※会員企業様とは、Mizuno Consultancy Holdings Ltd、水野商務諮詢(上海)有限公司 、水野商務諮詢(広州)有限公司と直接コンサルティング契約をいただいている企業様、また、水野財務諮詢(上海)有限公司、水野企業管理(深セン)有限公 司へ記帳代行・申告代理を委託いただいている企業様といたします。
また、上記会員企業様のグループ会社(親子、兄弟会社)様は会員扱いとさせていただきます。
上記以外の企業様(チェイス・チャイナの有料購読者様など)は、非会員扱いとなりますので、何卒、ご理解いただけますようお願いいたします。

皆様のお申し込みをお待ちしております。

セミナーに関するお問い合わせは以下までお願いします。

担当:横幕(日本)、周(上海)、陳・田口(広州)
E-Mail: study@mizuno-ch.com
Website: https://www.mizuno-ch.com/

****■ 企業研究会主催「中国外貨管理・クロスボーダー人民元の最新動向」
**

** 今回の講演では、国外借入枠の変更(投注差管理から、投注差・純資産ベースの選択に変更)、オフショア取引の管理強化、ネッティング・双方向プーリング(国際間の相殺決済・資金移動)など、最新の外貨管理トピックスと、実務上の注意点も解説します。

日 時 2016年 7月 21日(木)1 3:00 ~ 1 7:00
会 場 東京・麹町 企業研究会セミナールーム TEL: 03-5215-3513
講 師 水野 真澄 Mizuno Consultancy Holdings Ltd 代表取締役社長
受講料 1名 <資料代込>
企業研究会正会員  32,400 円(本体価格 30,000 円)
一 般  35,640 円(本体価格 33,000 円)

予定プログラム:

  1. 輸出入・国内取引上の外貨決済と注意点
    1.貨物代金決済の原則
    2.非居住者(日本企業)の中国内販売関与
    3.債権債務の相殺
    4.三国間取引(オフショア取引の対応可否)
    5.保税区域外貨管理

  2. ユーザンス、前受・前払取引制限
    1.輸出ユーザンス
    2.輸入ユーザンス
    3.輸出代金前受け金
    4.輸入代金前払金

  3. 配当・フィー・ロイヤルティの対外送金
    1. 非貿易項目対外送金の原則
    2.配当金の対外送金(外資企業・内資企業)
    3.コンサルティングフィー、技術指導料の対外送金
    4.ロイヤルティ等(無形資産の譲渡・使用対価)の対外送金
    5.コミッションの対外送金 6.国際間の立替金決済
    7.人件費の送金と PE 認定

  4. 外資企業の資金調達方法(投融資)
    1.資本金払込みと使用の制限
    2.クロスボーダー借入制限
    3.中国内の銀行借入と委託貸付
    4.現地法人設立前の口座開設と資金の使用
    5.中国法人の国外口座開設

5. 組織再編と持分譲渡(買収、エグジット)に関連する外貨管理
1.直接投資に関する外貨管理局許可の要否
2.持分譲渡の対外決済方法
3.外資企業の国内再投資に関する外貨管理

6. 人民元対外決済試行措置の現状
1.人民元対外決済の状況
2.人民元建てユーザンス取引と総量規制の関係
3.人民元による対中投資
4.クロスボーダー人民元融資
5.上海自由貿易区のクロスボーダー人民元優遇措置

7. 多国籍企業の資金集中管理(双方向プーリング、ネッティング)
1.外貨によるプーリング・集中決済
2.人民元プーリング・集中決済

お問い合わせ
一般社団法人企業研究会 事業開発部
担当:福山   E-mail :fukuyama@bri.or.jp
〒 102-0083 千代田区麹町 5-7-2 麹町 31MT ビル 2F
TEL 03-5215-3513  FAX 03-5215-0951


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**【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版発行者
**MizunoConsultancyHoldingsLtd.
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