増値税法施行(2026年1月1日)に伴い公布された税務規則【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.288

2026-05-06

【中国ビジネス・トレンド】

増値税法施行(2026年1月1日)に伴い公布された税務規則に付いての解説

2026年1月1日、中国において増値税法および同法実施条例が施行され、これに伴い従来の重要な関連規則の多くが廃止されるとともに、新たな規則も施行されています。
増値税は、中国ビジネスのあらゆる取引に関係し、企業の損益に大きな影響を与える重要な税目です。こうした制度の整理・再編の動きを正確に把握し、自社のビジネスに適切に反映していくことが不可欠となっています。

本ダイジェスト版でも、増値税法施行に伴い公布された税務規則について解説いたしますが、あわせて、** 5月13日(水)および20日(水)の2回にわたり、弊社代表・水野真澄による「増値税の最新制度と実務の徹底解説セミナー」を開催いたします。**
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【中国ビジネス・トレンド】

今回は、増値税法施行(2026年1月1日)に伴い公布された税務規則に付いて解説します。

1.増値税一般納税人の登録管理に関する公告(国家税務総局公告2026年第2号)

増値税法・第九条には、増値税課税対象となる年間販売額が500万元を超えない納税者は小規模納税者とするが、会計処理が適正で、正確な税務資料を提供できる場合は、一般納税人登録ができると規定されています。
その上で、500万元超の課税売上高となった場合、以下の例外を除き、一般納税人登記をすることが義務付けられます。
● 課税取引の発生が頻繁ではなく、主たる業務が課税取引の範囲に属さない非企業単位で、小規模納税人として納税することを選択した場合。
● 自然人

尚、年課税売上高とは、連続する12か月以内、若しくは、4つの四半期を超えない営業期間における累計課税売上高をいいます。
この規定内容は、従来通りで、特段の変更は有りません。

2.輸出業務に関する増値税・消費税還付(免税)管理弁法(国家税務総局2026年第5号公告、財政部・税務総局2026年第11号)

2026年1月1日より、増値税輸出還付の根拠規則が、「輸出貨物役務増値税および消費税管理弁法(国家税務総局2012年第24号)・失効」・「輸出貨物・労務の増値税および消費税に関する通知(財税[2012]39号)・失効」から、「輸出増値税と消費税の還付(免税)管理弁法(国家税務総局公告2026年第5号)」・「増値税と消費税の輸出業務政策に関する公告(財政部・税務総局公告2026年第11号)」に変更されています。

主要変更内容は以下の通りです。
1)保税区経由の輸出
保税区の販売会社(外貿公司)に対しても出境備案の使用が認められました。
「輸出貨物役務増値税および消費税管理弁法(国家税務総局公告2012年第24号)・失効」では、生産型企業に対しては出境備案の代用を認めるものの、販売会社には認めていませんでした。よって、保税区の販売会社が、保税区経由で輸出する場合、増値税の輸出還付が受けられない、若しくは、特殊な手続きが必要でしたが、この問題が解消しました。

2)輸出貨物代金の回収期限
輸出貨物代金の回収期限が明確化されました。
輸出還付を受けた納税者は、原則として増値税輸出還付の確定申告期限である翌年4月30日までに、輸出貨物代金の入金証憑を所管税務機関に提出する必要があります。
この期間内に代金が受領できない場合、輸出申告日から36か月以内(保税区経由の場合は、出境備案の日付より36か月以内)であれば、入金後、還付申請できます。

3)貿易会社の役務・自社開発無形資産輸出
貿易会社が役務、又は自社開発の無形資産を直接輸出する場合、生産企業の輸出還付方式(免税・控除・還付方式)の採用が認められました。

3.増値税仕入税額控除等に関する公告(財政部・税務総局公告2026年第13号)

特定業種に関する増値税の仕入控除、組織再編時の仕入控除の扱い、混合税率取引に関する税率の選定に関しての規定です。

1)特定業種の増値税仕入税額控除
特定業種の仕入控除について、以下の通り定めています。
● 自動車購入に関する仕入税額控除
一般納税人は自動車販売統一発票を根拠とし、発票記載の増値税税額を全額控除できます。
● 国内旅客輸送サービスに係る仕入税額控除
鉄道・航空輸送は、電子乗車券(旅程伝票)を根拠とし、券面記載の増値税税額を控除できます。
道路・水上輸送は、身分情報が記載された乗車券を根拠とし、下記計算式により控除可能税額を算出します。
控除可能税額 = 券面金額 ÷(1+3%)×3%
● 通行料サービスに係る仕入税額控除
道路通行料:増値税電子普通発票を根拠とし、券面記載税額を控除します。
橋梁・水門通行料:発票を根拠とし、下記計算式により算出します。
控除可能税額 = 券面金額 ÷(1+5%)×5%
● 一般納税人が、固定資産を除く貨物・役務を購入し、簡易課税方式適用事業、増値税免税事業及び控除不可非課税取引に使用することで、控除不可仕入税額を区分できない場合、次の計算式に基づき当期控除不可仕入税額を計算します。
控除不可税額 = 当期区分不能全仕入税額 ×(当期簡易課税・免税事業売上高
+非課税収入)÷(当期全売上高+非課税収入)

2)資産再編成に伴う仕入控除
納税者が合併、分割、売却、交換等の方式で資産再編成を実施し、かつ下記条件をすべて満たす場合、当該取引は増値税課税取引に該当せず、且つ、増値税法実施条例・第二十二条に規定する控除不可の非課税取引には該当しない。対象となる貨物、金融商品、無形資産、不動産(以下「資産」と総称)の譲渡については、増値税を課税せず、且つ、対応する仕入税額は控除可能とする。
● 資産再編成の対象が相対的に独立して運営可能な事業であること。
● 資産再編成実施時、全部又は一部の資産を、関連する債権・負債・従業員と一体の資産パッケージとして一括譲渡すること。資産パッケージには資産、債権、負債、従業員が同時に含まれること。
● 資産再編成に合理的な商業目的が存在し、増値税の減免・納付延期、還付前倒し・過大還付を主たる目的としないこと。
● 資産譲渡側が一般納税人である場合、譲受側も一般納税人であること。

尚、上記資産再編成により合併し、税務登録抹消を行う納税者については、登録抹消前の控除未了仕入税額は、合併後の納税者が継続して控除することが認められます。

3)一つの課税取引に二種類以上の税率が関係する場合
特定の課税行為に対しての税率判定基準が規定されています。
● ソフトウェア製品の販売と同時に提供する、ソフト設置・保守・研修等の役務に関しては、ソフトウェア製品の税率を適用します。
● プレハブハウス、機械設備、鉄骨構造物等の貨物販売と同時に提供する設置役務に対しては、当該貨物の税率を適用します。
● 充電・交換電池事業において、電力製品販売と同時に徴収する蓄電池交換・位置情報管理・保守等のサービス料に対しては、電力製品の税率を適用します。
● 交通工具賃貸役務の提供と同時に徴収する情報技術関連サービス料等に対しては、賃貸役務の税率を適用します。

4.長期資産に関する仕入増値税額控除の暫定弁法(財政部・税務総局公告2026年第15

長期資産の購入に関する仕入控除の原則です。
1)一般納税人の長期資産購入
納税者が長期資産を取得し、一般課税方式による課税事業の使用に専ら供する場合、対応する仕入増値税額を全額控除することができます。

2)簡易納税方式適用・免税事業など
納税者が長期資産を取得し、簡易課税方式による課税事業、増値税免除事業、控除不可の非課税取引、厚生福利・個人消費(以下、控除不適用五類と呼称)に使用する場合、対応する仕入税額は、売上税額から控除することができません。

3)異常損失・用途変更
納税者が長期資産を取得し、仕入増値税額を既に控除した後に、増値税法実施条例・第十九条に規定する異常損失が発生した場合。又は用途が変更され、控除不適用五類となった場合、異常損失発生、又は、用途変更の当月に、以下の計算式に基づき控除不可仕入増値税額を算出し、当期仕入増値税額から控除減額することが求められます。

● 控除不可仕入増値税額=長期資産対応仕入増値税額×純価値率
純価値率=当月期首長期資産純価値÷長期資産原価×100%

4)用途の再変更
納税者が長期資産を取得し、控除不適用五類に供した後に、再度用途が変更となり、一般課税方式による課税事業専用、若しくは、一般課税事業と控除不適用五類の両方に使用することとなった場合、用途変更の当月において下記の計算式に基づき控除可能仕入増値税額を算出することになります。

● 控除可能仕入増値税額=長期資産対応仕入増値税額×純価値率

5.増値税課税取引における売上高の算定基準に関する公告(財政部・税務総局公告 2026年第12号)

差額課税方式が認められる8 種類の業務に関する売上高の基準が規定されています。
(1)金融商品の譲渡
売上高=売却価格-取得価格
(2)旅客ターミナルサービスの提供
売上高=税込全対価-運送事業者に支払う運賃
(3)航空運送企業の航空運送サービス提供
売上高=税込全対価-他航空会社の航空券販売代行による徴収・支払代行代金
(4)航空運送販売代理企業の国内航空券代理サービス提供
売上高=税込全対価-国内航空券純決済金額及び関連費用
(5)航空運送販売代理企業の海外区間航空券代理サービス提供
売上高=税込全対価-海外区間決済金額及び関連費用
(6)国外事業者の教育部教育試験院、及びその直属組織を通じての国内における試験事業の実施
売上高=税込全対価-国外事業者に支払う試験料
(7)ビザ代理サービス
売上高=税込全対価-外交部及び外国駐中国大使館・領事館に対し徴収代行・支払代行するビザ手数料、認証手数料
(8)規定により輸入増値税が免除される貨物の輸入代理業務
売上高=税込全対価-徴収代行・支払代行する貨物代金

尚、上記に規定する売上から控除される支払いについて、増値税控除証票を取得している場合は、当該仕入税額を売上税額から控除することは認められません。

6.増値税予徴税額管理弁法(財政部・税務総局公告 2026 年第 14 号)

増値税法実施条例・第四十五条には、以下の場合は、税金の予定納付を義務付けていますが、それに関する実施弁法です。
(一)地級行政区(直轄市が管轄する県・区)を超えて建設サービスを提供する場合。
(二)前受金方式により建設サービスを提供する場合。
(三)プレセール方式により不動産プロジェクトを販売する場合。
(四)納税者の機構所在地と同一の県(市、区、旗)内にない不動産を譲渡または賃貸する場合。
(五)油・ガス田企業が省、自治区、直轄市を超えて、油・天然ガスの生産に関連するサービスを販売する場合。

建築、不動産、天然資源の採掘などでは、プロジェクトの当事者となる会社の登記地と、事業場所の所管が異なる場合が少なからず発生しますが、その場合、事業地と会社所在地での申告納税方法(予納と確定申告)に付いて定めています。

7.増値税課税基準額に関する徴収管理事項の公告(国家税務総局公告 2026年第4号)

1)課税基準未満の小規模納税人の特例
小規模納税人が課税取引を行い、売上高が課税基準額(以下、8.の解説参照)に達していない場合、課税取引の全額、または一部について、免税措置を放棄して、増値税専用発票を発行することを選択できます。

2)自然人の特例
自然人が、以下のいずれかの状況に該当する場合、当月に発生した全ての課税取引の売上高を基準として、第10号公告(以下、8.の解説参照)・第一条に定める「1か月を1つの課税期間」とする課税基準額を適用します。
(一)自然人が 2025年8月8日(当日を含む)以降に新規発行された国債、地方政府債券、金融債券の利子を取得する場合
一括で利子を受け取る場合は、対象利子計算期間を月割りで按分した利子額をもって月間売上高を算定します。
(二)自然人が不動産を賃貸する場合
一括で賃料を受け取る場合は、対象賃貸期間を月割りで按分した賃料額をもって月間売上高を算定します。
(三)プラットフォーム事業収入
プラットフォーム企業が申告代行を行う役務収入。
(四)廃棄製品販売
逆方向発票発行(反向?票)による販売で、資源リサイクル企業が申告代行を行う場合。
(五)代理役務収入
保険代理店(証券ブローカー・クレジットカード代理店・旅行代理店はこれに準ずる)の収入で、企業が申告代行を行う場合。
(六)国家税務総局が定めるその他の情況

自然人が課税取引を行う際、上記 6種類を除く課税取引は都度課税方式を適用し、売上高が課税基準額に達した場合、以下の規定に基づき申告・納税を行います。
(一)主管税務機関に発票の代行発行を申請する場合、主管税務機関が発票代行発行時に増値税を徴収します。
(二)納税義務者を源泉徴収する義務者が存在する場合、源泉徴収義務者が規定に基づき、源泉徴収した増値税を主管税務機関に申告・納付します。
(三)既に増値税が徴収済みまたは源泉徴収済みの課税取引を除き、自然人が当年に発生したその他未納付の課税取引については、納税義務発生日から翌年 6 月 30 日までに申告・納税する必要があります。

本公告は 2026年1月1日施行となります。

8.増値税法施行後の増値税優遇政策の連携事項に関する公告(財政部・税務総局公告 2026年第10号)

増値税法施行後の優遇措置(過去の優遇措置との関係を含む)が規定されています。

1)課税対象となる基準
2026年1月1日~2027年12月31日の期間においては、小規模納税人に対する課税を要する売上基準は、以下の通りとなり、これに満たない場合は課税が免除されます。
(一)1か月を課税期間とする場合、課税基準額は月間売上高10万元。
四半期を課税期間とする場合、課税基準額は四半期売上高30万元。
(二)都度納税の場合、課税基準額は1回(1日)の売上高 1,000 元。
1 日に複数回の課税取引が発生した場合、日単位で課税基準額を適用。
⇒ 旧基準額では1 回(1 日)の売上高は500元でした。

2)増値税免税対象項目
2026年1月1日より、農業生産者が販売する自家生産農産物など計21項目については、増値税が免除されます。
2026年1月1日~2027年12月31日の期間、農業生産資材など計26項目について、増値税が免除されます。

3)簡易課税方式適用対象項目
2026年1月1日~2027年12月31日の期間、一般納税人が公共交通サービスの提供など15件の課税取引を行う場合、簡易課税方式の適用を選択し、3%の徴収率に基づき増値税を計算・納付することが認められます。
2026年1月1日~2027年12月31日の期間、一般納税人が 2016年4月30日以前に取得した不動産の賃貸など 6 件の課税取引を行う場合、簡易課税方式の適用を選択し、5% の法定徴収率に基づき増値税を計算・納付することが認められます。
その他、簡易課税方式を選択適用できるケースは、以下の通りです。

(1)2026年1月1日以降、一般納税人の自己使用固定資産で、増値税法第二十二条の規定により仕入税額控除不可、且つ、未控除のものを販売する場合、簡易課税方式により、3%徴収率を2%に減免して増値税を計算・納付することが認められます。

(2)2026年1月1日以降、小規模納税人(自然人を除く)が自己使用固定資産を販売する場合、簡易課税方式により、3% 徴収率を 2% に減免して増値税を計算・納付することが認められます。

(3)2026年1月1日以降、中古品を販売する場合、簡易課税方式により3%徴収率を2%に減免して増値税を計算・納付することが認められます。

(4)2026年1月1日以降、個人(一般納税人の個人事業主を除く)が住宅を賃貸する場合、簡易課税方式により3%徴収率を1.5%に減免して増値税を計算・納付することが認められます。

(5)2026年1月1日以降も、財政部・税務総局・住宅都市建設部公告 2021年第24 号に定める現行有効な増値税優遇政策(不動産賃貸に関する優遇措置)の適用が認められます。

(6)2026年1月1日~2027年12月31日の期間、小規模納税人が不動産の販売・賃貸・土地使用権譲渡以外の増値税課税取引を行う場合、3%徴収率を1%に減免して増値税が課税されます。

(7)2026年1月1日~2027年12月31日の期間、財政部・税務総局公告 2023 年第 63 号に定める現行有効な増値税優遇政策(中古車販売に関する優遇措置)が継続されます。

本公告、増値税法、増値税法実施条例、財政部・税務総局による個人住宅販売に関する増値税政策に関する公告(財政部・税務総局公告 2025年第17号)に規定する内容を除き、2025年12月31日までに公布された国内販売に関する増値税優遇政策は、2026年1月1日以降、全て施行が停止されます。

9.増値税納税申告関連事項の調整に関する公告(国家税務総局公告2026年第6号)

増値税申告書の記載内容の一部修正で、2026年2月1日より施行されます。

10.増値税の課税対象範囲の具体的事項に関する公告(財政部・税務総局公告 2026年第9号)

9%の増値税率が適用される業種の詳細、及び、役務・無形資産・不動産販売に関する定義の詳細が列記されており、2026年1月1日に施行されます。