貨物代金決済の根拠規則【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.270
2025-09-29【中国ビジネス・トレンド】貨物代金決済の根拠規則
貨物代金決済の根拠規則は、長い間、匯発[2012]38号と国家外貨管理局公告2025年第1号でしたが、昨年・今年に、両方が廃止されています。
では、現在では何が根拠規則かという点が分かりにくい状況となっているので、その概要を解説します。
1.貨物代金決済に関する根拠規則
2012年8月1日に貨物代金決済改革(規制緩和を前提とした貨物代金決済制度改革)が実施されましたが、これは、「貨物貿易外貨管理制度改革の公告(国家外貨管理局公告2012年第1号)」と「貨物貿易外貨管理法規(匯発[2012]38号)」によるものでした。
但し、国家外貨管理局公告2012年第1号は、「国家外貨管理局・税関総署・国家税務総局の廃止関連文件の公告(国家外貨管理局公告2025年第1号)」により、2025年3月15日を以て。また、匯発[2012]38号は、「貿易外貨業務管理の一層の改善に関する通知(匯発[2024]11号)」により、2024年6月1日に廃止されています。
では、現在の根拠規則は何かというと、国家外貨管理局公告2025年第1号には、貨物貿易外貨業務は、「経常項目外為業務ガイド(匯発[2020]14号)」、及び、「貿易外貨業務管理の一層の改善に関する通知(匯発[2024]11号)」等の関連規定に基づき執行すると規定されています。
2.現在の根拠規則の特徴
現在の根拠規則は、上記の通り、「経常項目外為業務ガイド(匯発[2020]14号)」、「貿易外貨業務管理の一層の改善に関する通知(匯発[2024]11号)」等と規定されていますが、その特徴は以下の通りです。
(1)経常項目外為業務ガイド
経常項目外為ガイドは、第一章:貨物貿易、第二章:非貿易項目、第三章:個人経常項目、第四章:外貨現金、第五章:保険業務、第六章:決済機構、第七章:その他経常項目から構成されており、貨物代金決済専用の規則ではありません。
貨物代金決済は、匯発[2012]38号(失効)を全体的に踏襲しているものの、全体が46条と短く、この内容だけでは貨物代金決済管理をカバーできないことから、依然として、廃止された匯発[2012]38号が参考にされている面があります。
(2)匯発[2024]11号
この通知は、全部で6条の短いもので、匯発[2020]14号・匯発[2012]38号(失効)を基にした規制緩和措置を規定しています。
よって、貨物代金決済の根拠となるものではなく、匯発[2020]14号の修正という位置づけに過ぎません。この内容は以下の通りです。
1)貨物貿易登録
貨物貿易を行う企業は、所管の外貨管理局での登記が義務付けられていましたが、銀行で直接手続きができるようになりました。
2)特殊返金
貨物代金決済の返金で、180日超経過してからの返金、及び、元とは違う相手先との返金は、特殊返金として外貨管理局の許可が必要でした。
これが、A類企業であり、金額がUS$20万以下の場合は、銀行で直接返金申請ができるようになりました。
3)B・C類企業のユーザンス
匯発[2020]14号では、B類・C類企業は、90日超の輸出・輸入ユーザンスを行ってはならないと規定していますが、これを以下の通り緩和しています。
● B類、C類企業が90日超のユーザンス輸出入決済をする場合、分類有効期間中にB類・C類に分類される原因となった状況が改善・是正され、且つ、新たにB類・C類に分類される状況が発生していない場合、B類・C類に分類されてから6ヶ月後に、当該企業の所在地の外貨局に登記することができる。
3.保税区域関連
保税区域に関連して、かつては「保税監督管理区域外貨管理弁法」、「保税監督管理区域外貨管理弁法操作規定」、「税関特殊監督管理区域外貨管理弁法(匯発[2013]15 号)」等が施行されていましたが、全て廃止されています。
現在では、貨物代金決済に関しては、匯発[2020]14号・第一章の2条(第37条・第38条)のみ。第37条は、「税関特殊監督区域(保税区域)と国内区外間の貿易、及び、税関特殊区域内機構間の貨物貿易は、人民元、若しくは、外貨で決済できる(筆者意訳)」という内容。第37条は、「税関特殊監督区域内の組織が、貨物と資金の流れが一致しない取引方式を採用する場合、銀行は取引証憑の真実性と外貨収支の一致に関して、合理性を審査する(筆者意訳)」という内容程度です。
結果として、代金決済可否の指針にならないため、依然として、廃止された「保税監督管理区域外貨管理弁法操作規定」等が参考にされています。
水野コンサルタンシーグループ代表 水野真澄