重要法令等の解説(簡易版)【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.262
2025-07-25【中国ビジネス・トレンド】重要法令等の解説(簡易版)
1.課税輸出行為と税務管理が強化されました
国内課税貨物の輸出に関する事項公告(国家税務総局・財政部・商務部・海関総署・国家市場監督管理総局2025年第8号)
名義借り、偽造した船積書類の使用、他企業の通関単の使用など、違法性が伴う輸出行為に関する管理が強化されました。
(1)施行された公告
2025年3月25日に、国家税務総局・財政部・商務部・税関総署・国家市場監督管理総局が「国内連環税の対象となる貨物の輸出管理の最適化と規制に関する公告(国家税務総局・財政部・商務部・税関総署・国家市場監督管理総局2025年第8号)」が公布され、即日施行されました。
(2)公告の意義
本公告の趣旨は、財税[2012]39号・第7条、第8条に基づいて、輸出であるにも拘らず、増値税輸出還付の適用が受けられず、国内販売と見なして増値税・消費税が課税される輸出貨物に関して、行政手続きを強化するものです。
この様な貨物は、第8号公告では「課税貨物」と呼称されていますが、対象となる貨物は、財税[2012]39号・第7条、第8条に、以下の通り規定されています。
1)輸出税還付が取り消されている品目の輸出
2)保税区域に対する生活消費財・交通輸送工具の搬入
3)不正還付等を行い税務機関より還付を禁止されている企業の輸出
4)虚偽の登記内容提出による輸出還付申請
5)不正な輸出還付証憑(偽造書類等)の提示
6)輸出委託者に対して白紙委任している場合
7)会社の名義借り、名義貸しの場合
8)提示する船荷証券・船積書類と実態の不一致
財税[2012]39号には、上記に該当する場合、輸出であるにも拘わらず、国内取引と見なして増値税を課税することが規定されています。
その内、1)と2)は違法性のあるものではなく、課税上の取り扱いに過ぎません。ただ、残りは違法性のある内容(脱税・租税回避の可能性があるもの)であるため、懲罰対応により、増値税が課税されるものです。
(3)公告に基づく手続き
今回の8号公告・第三条では、以下の内容が要求されています。
1)「課税貨物」の輸出者は、初回の納税義務発生時に、税務機関に関連する税務手続きを行うこと
2)課税貨物の輸出を委託する場合、委託者は貨物の輸出通関申告日から翌月の増値税・消費税の申告期間内に、管轄税務機関に「委託輸出貨物証明」の発給を申請し、これを委託先に渡すこと。
3)受託者は、上記2)の証明書を添えて、所管税務機関に「代理輸出貨物証明」の交付を申請すること。
<実務面>
実務上、上記1)に関しては、納税者が初回納税義務を発生した際に、以下の手続きを実施することが要求されます。
● 企業情報の登録・確認
輸出企業形態(生産型 or 貿易型)の確認
納税人区分(一般納税人 or 小規模納税人)の確認
経営範囲が、貨物輸出・輸入を含むかの確認
● 税種税目認定
● 輸出退(免)税備案
また、2)の委託輸出貨物証明の申請期限は、貨物の通関日から翌月の増値税・消費税申告期限まで。3)の「代理輸出貨物証明」は、納税者(受託者)が、電子税務局にログインすれば、自社で「代理輸出貨物証明」をダウンロードできます。
(4)罰則
8号公告は、増値税輸出還付権がない納税義務者が、他企業の名義を借りて輸出還付を行うこと、その他、他企業の輸出通関単を使用し、外貨決済の実施・輸出還付の適用を受けるなどの違法行為を規制するものです。
このため、輸出者の身分確認や、委託・受託関係がある場合は、その明確化を指示しています。財税[2012]39号では、この様な場合は、輸出還付を認めず、国内販売と見なして課税することを定めるのみでしたが、今回は、企業情報の登記や船積書類の確認等の義務付けを含めて、違法行為を規制しています。
尚、第六条には、以下の通りの罰則が規定されています。
● 課税対象貨物を輸出する納税人、通関会社、通関人員等の主体及び関連人員が、通関単を偽造、変造、売買してはならず、輸出業務、輸出商品の価値を虚偽記載、商品の価値を過少申告等してはならない。
通関単の偽造、変造、売買行為、輸出業務の虚偽記載、貨物価値の過少申告、税金の納付回避等の違法行為を行った場合、または、上記違法行為の実施に協力した場合、各関連部門は職責に基づいて、「税収徴収管理法」、「税関行政処罰実施条例」等の法律規定に基づき処理する。
犯罪を構成した場合、法により司法期間に移管し刑事責任を追及する。
2.カナダ産の一部輸入商品に対する追加関税の公告(税委会公告2025年第3号)
2025年3月20日より、カナダ産の一部輸入商品に対して関税が追加徴収されます。
1)菜種油、油かす、豌豆
2)水産物および豚肉
3)カナダ原産の別紙の輸入商品に対して、現行の適用関税率に追加関税を課税する。
4)追加関税税額=関税計算価格×追加徴収関税税率
関税=現行の適用関税率で計算される関税税額+追加徴収関税税額
3.域外取引に関する印紙税優遇措置の通知(財税〔2025〕10号)
中国(上海)自由貿易試験区及び臨港新片区、中国(江蘇)自由貿易試験区蘇州片区、中国(浙江)自由貿易試験区、中国(福建)自由貿易試験区廈門片区、中国(山東)自由貿易試験区青島片区、中国(広東)自由貿易試験区、および海南自由貿易港に登録された企業が行う域外取引業務に関して締結する売買契約については、印紙税が免除されます。
以下、略
4.「中国とイタリアの租税協定」の発効・実施に関する公告(国家税務総局公告2025年第6号)
「中国とイタリアの租税協定」が2025年2月19日から発効しました。
以下、略
5.「石油製品等税関対象商品検査管理暫定弁法」の公告(国家税務総局公告2025年第7号)
「石油製品等税関対象商品検査管理暫定弁法」が2025年3月24日から実施されました。
6.「国際輸送船舶に対する増値税還付管理弁法」の改正公告(国家税務総局公告2025年第10号)
国内船舶建造企業が運輸企業向けに販売する適格船舶に対し、増値税還付政策を適用します。船舶を購入した運輸企業が本弁法の規定に基づき当該還付を申請します。
以下、略
7.多国籍企業向け本外貨統合資金プール業務的実施範囲の拡大試行
天津、河北、内モンゴル、黒竜江、安徽、福建、山東、湖北、湖南、広西、重慶、四川、貴州、雲南、新疆、厦門などの省・市において、多国籍企業向け本外貨統合資金プール業務の試験的実施を拡大し、多国籍企業のクロスボーダー資金管理の利便性を向上させます。
以下、略