【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.159

2022-03-02

【中国ビジネス・トレンド】

以下の重要規定に関して解説します。

1. 「中華人民共和国民事訴訟法」改正に関する決定

現行の「中華人民共和国民事訴訟法」に対して 16 項目の修正が行われました。改正版は 2022 年 1 月 1 日から施行されま す。今回の修正の主な内容は以下となります。

<新規>

当事者の同意があれば、情報ネットワークプラットフォームを通じて、民事訴訟活動をオンラインで行うことができる。情報 ネットワークプラットフォームを通じてオンラインで行われる民事訴訟活動は、オフラインの訴訟活動と同じ法的効果を持つ (第 16 条)。

<その他>

  • 受送達者の同意のもと、人民法院は電子的手段で訴訟書類を送達することができ、判決書、裁定書、調解書も含まれる。ま た送達日は、送達情報が受信者の特定のシステムに到達した日とされた。
  • 少額訴訟の適用対象が調整され、訴額が各省、自治区、直轄市の前年度の平均賃金の 50%以下(調整前は 30%以下)の 金銭給付民事案件が対象とされた。なお訴額が同 50%を超えた場合も、当事者双方は少額訴訟の適用を約定することができ る。

原文

2. 「中華人民共和国工会法」改正に関する決定

現行の「中華人民共和国工会法」に対して 11 項目の修正が行われました。改正版は 2022 年 1 月 1 日から施行されます。 改正版工会法は企業の組織形態、労働組合員の構成、労働関係、就業形態等の発展による変化に適応し、労働組合への加入及 び組織の権利を保護すること、また県級以上の各級総工会は、所属労働組合及び従業員に対して、法的援助等を提供すること が明確にされました。

原文

3. 「企業登記抹消ガイドライン(2021 年改正版)」

2019 年 1 月に市場監督管理局・人力資源社会保障部・商務部・税関総署・税務局の 5 部門により公布された、「企業登記 抹消利便化業務の推進に関する通知(国市監注[2019]30 号)」の添付資料であった、「企業登記抹消ガイドライン」 が改正されました。 改正版「企業登記抹消ガイドライン」は主に以下 6 つの項目で構成されています。

  • 1)企業の市場撤退の基本プロセス
  • 2)解散:自主的な解散、強制的な解散
  • 3)清算:清算委員会の設立、清算委員会の情報及び債権者の公告、清算活動の展開、会社財産の配分、清算報告書の作成
  • 4)登記抹消
    • (1)一般的抹消プロセス:税務登記の抹消、企業登記の抹消、社会保険登録の抹消、税関・報関単位備案の抹消
    • (2)簡易抹消プロセス:適用範囲、手続プロセス、個人事業者の簡易抹消
  • 5)特別状況の手続き案内
  • 6)抹消に関する法的責任の提示

原文

4. 年 1 回賞与等の個人所得税優遇政策の延長に関する公告(財政部・税務総局公告 2021 第 42 号)

改正前の個人所得税法では、課税単位が月次であったため、超過累進課税の下では賞与支給月に過大な課税を受けることに なっていました。このため、居住者の年 1 回の賞与(年に複数回支払われる場合は、そのうちの 1 回)は、軽減税率での課税 が認められていましたが、この優遇措置が 2023 年 12 月 31 日まで延長されました。

原文

5. 輸出貨物保険増値税政策に関する公告(財務部・税務総局公告 2021 年第 37 号)

輸出貨物の保険に関する増値税政策が公布されました。 概要は以下の通りです。

  • 1)2022 年 1 月 1 日~ 2025 年 12 月 31 日の期間に、国内の事業者及び個人に発生した以下の越境課税行為は増値税 を免除する。
    • (1)輸出貨物を保険対象とする製品責任保険に加入
    • (2)輸出貨物を保険対象とする製品品質保証保険に加入
  • 2)国内の事業者及び個人に対する上記の越境課税行為の増値税徴収管理は、現行の越境課税行為の増値税免税管理弁法に 従って実施する。
  • 3)すでに発生した未処理事項については、本公告に従って処理し、納付済みの関連税金は還付しない。

原文

6. 2022 年加工貿易企業国内販売税額延滞利息の暫定免除に関する公告(財政部公告 2021 年第 38 号)

対外貿易の安定発展、企業の困難救済のため、2022 年 1 月 1 日から 2022 年 12 月 31 日まで、加工貿易企業の国内販 売税額の延滞利息の徴収が一時的に免除されます。

原文

7. 重大税収違法信用喪失主体情報公布管理弁法(国家税務総局令第 54 号)

本弁法でいう「重大税収違法信用喪失主体」とは、下記状況の一つがある納税人、源泉徴収義務者、その他税務当事者を指し ます。

  • (1)会計帳簿または帳簿証憑を無断で偽造、変造、隠蔽または破棄し、あるいは会計帳簿に支出を過大に記載し、あるいは 収入を過少に記載し、あるいは税務当局から申告するよう通知された- が申告を拒否し、あるいは虚偽の申告をし、100 万元 以上の税額を納税しない、または過少納付し、且つ任意の 1 年度の未納または過少納付額がその年の各税種の納税総額の 10%以上を占める、あるいは前述の手段を用いて、控除または受領した税金を納付せず、または過少に納付し、その額が 100 万元以上である場合。
  • (2)納付すべき税金を滞納し、財産譲渡や隠匿といった手段によって、税務機関の追徴を妨害し、
  • その額が 100 万元以上である場合。
  • (3)輸出税還付の不正受給。
  • (4)暴力または脅迫を用いた納税拒否。
  • (5)増値税専用発票の不正発行、または輸出税還付の不正受給や不正仕入控除に用いるその他の発票の不正発行。
  • (6)100 枚以上、または 400 万元以上の普通増値税発票の不正発行。
  • (7)発票の私的印刷、偽造、変造、発票偽造防止専用品の不法製造、発票監理印の偽造。
  • (8)脱税、追納逃れ、輸出税の不正還付、納税拒否、発票不正発行などの行為を行い、検査の完了前に税務機関の監督から 離れ、逃亡(連絡不能)が税務機関により確認された場合。
  • (9)納税者または源泉徴収義務者に銀行口座、発票、証明書またはその他の便宜を違法に提供し、100 万元以上の税金の 不払いまたは過少納付、または輸出税還付を不正に取得した場合。
  • (10)税務代理人で、税法および行政法規に違反し、納税者に 100 万元以上の税金の不払いまたは過少納付を発生させた 場合。
  • (11)その他、性質が悪い、状況が深刻、社会的損害が比較的大きな税法違反。

その他、「重大税収違法信用喪失主体」確定までのプロセスや、確定後の関連情報公開方法などについて規定されています。

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8. 外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト 2021 年版)(発展改革委・商務部令 2021 年第 47 号)

外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト 2021 年版)が 2022 年 1 月 1 日から施行されています。同時に 2020 年版は廃止されました。 2017 年以来、5 年連続でネガティブリストは改定され、外商投資の参入特別管理措置は 93 条から 31 条に削減されまし た。 今回の主な改定内容は、自動車製造分野において、乗用車の製造における外資比率の制限、及び同一の外国企業が国内で同類 の自動車(乗用車、商用車)を製造するために設立できる合弁会社の数を 2 社以下とするという制限が取り消されました。

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9. 自由貿易試験区における外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト 2021 年版)(発展改革委・商務部令 2021 年第 48 号)

自由貿易試験区における外商投資の参入特別管理措置(ネガティブリスト 2021 年版)が 2022 年 1 月 1 日から施行され ています。同時に 2020 年版は廃止されました。 2017 年以来、5 年連続でネガティブリストは改定され、自由貿易試験区における外商投資の特別管理措置は 122 条から 27 条に削減されました。

今回の修正により、自由貿易試験区において、ネガティブリストにある製造業品目はゼロとなりました。また、市場調査分野 においては、ラジオ・テレビの視聴調査について中国側出資がメジャーの前提で外国投資者の参入制限が廃止されています。

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10. 2022 年輸出入許可証書発行機構リストの公布(商務部公告 2021 年第 42 号)

商務部が公開する最新の輸出入許可証発行機関リストです。また一部の製品に対しては、輸出入許可証の発行機関を指定して います。 例)以下の貨物を輸出する場合、指定機構が輸出許可証を発行する。

  • 牛(対香港・マカオ)、豚(対香港・マカオ)、鶏(対香港)を陸送で輸出する場合、商務部広州特使事務所と深セン特使 事務所に輸出許可証を申請する。
  • 人工栽培した麻黄草(医薬原材料)を輸出する場合、商務部天津特使事務所に輸出許可証を申請する等。

原文

11. 海外知的財産権紛争対応メカニズムの強化に関する指導意見(国知発保字[2021] 33 号)

国家知識産権局と中国国際貿易促進委員会が共同で、各省の知識産権局や各地方の関連センター、貿易促進機構などに向けて 出した、海外知的財産権紛争対応メカニズムの強化に関する指導意見となります。 2025 年までの目標として、中央と地方が協調して共有する海外知的財産権紛争対応メカニズムを基本的に構築すること、 海外知的財産権紛争対応指導サービスネットワークをより完全化すること、中国企業の海外知的財産権保護意識を著しく高 め、海外知的財産権紛争対応能力を大幅に向上させることなどが挙げられています。

原文

以上