【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.157

2022-01-20

【中国ビジネス・トレンド】

■  華南ビジネス・トレンド

華南地域(広東省)の最近のビジネストピックスを、地方通知などを踏まえてご紹介します。

1. 広東省市場監督管理条例(公告第 93 号)

市場監督管理の基本方針、管理方法、奨励・罰則等の原則、省内各地域・行政レベルの管理部門の職責、上級・同レベルの部門同士の関係などを、総括的に示した条例です。 2016 年 10 月施行の 2016 年版の条例(16 年・公告第 64 号)からの主な補足/修正内容は以下となります。

1)行政各レベルでの監督管理機構の職能、職責の明確化、規範化、人員配置を含む専門職業化、並びに上級から下級組織への指導監督の強調(21 年版の第 7 条、12 条、13 条の追記文言など)。

2)各行政レベルの監管実施部署の管轄・職権の明確化、重複排除と管轄の 1 か所への権限集中の強調(行政処罰権、行政検査権、強制措置権)(第 10 条全文追加、第 11 条、30 条など)。

3)デジタル技術進歩に即したスマート情報管理、共有化プラットフォーム、監督管理の合理化・オンライン化、社会への情報公開の強化(第 16 条、22 条、23 条、24 条、30 条、34 条、48 条、57 条など)。

4)健康・安全分野(食品、薬品、医療器機など)の監督管理の強化、具体的説明(製品番号の遡及追跡、生産/流通全工程管理等)(第 27 条)。

5)新技術、新産業、新業種への柔軟対応と支持奨励(第 32 条)。

6)オンライン商取引に対する管理強化、具体的説明(第 33 条)。

7)市場の自由公平競争の強調、反独占/不正競争/競争抑制の排除など追記(第 35 条、36 条、37 条)。

8)信用管理に関する文言の厳格化(信用遵守企業への奨励策の説明が省略され“失信懲戒制度”処罰関連の説明増加)(第 51 条、52 条)。

9)監督管理に係る「仲介サービス機構」(技術審査、評価、認証、公正証書、信用評価、諮問など)の起用に関する規定の具体化、仲介機構の業務の条件、サービスプロセス、料金標準等の明確化と公表、監管部門が費用負担し企業に転嫁しない事の明記(第 18 条)。

10)その他、時代に即した文言修正あり、下記の通り。 (1)“行政許可”と“備案”(登録制)を併記(第 8 条)。 (2)“知的財産権”の強調(第 38 条)。 (3)16 年版「新聞媒体による市場違法行為の社会看視」を「新聞、放送、TV、インターネットのよる」に修正。また 16 年版「市場監管の法律の宣伝普及」の部分省略(第 65 条)。

原文

2. 広東省最低賃金標準の調整に関する通知(粤府函[2021]345 号)

広東省の最低賃金の改定に関する通知です。前回改定(2018 年 7 月)以来 3 年半ぶりに、月次給与、時間給ともに賃上げになりました。

地区別の前回(18 年 7 月)は下記の通りです。 1-1)一類地区(広州) <月次、時給> 18 年 07 月:2,100 元 (改定率:+ 10.8%)  20.3 元(改定率:+ 10.9%) 21 年 12 月:2,300 元 (改定率:+ 9.5%)  22.2 元(改定率:+ 9.4%)

1-2)一類地区(深セン) 18 年 07 月:2,200 元 (改定率:+ 3.3%)  20.3 元(改定率:+ 4.1%) 21 年 12 月:2,360 元 (改定率:+ 7.3%)  22.2 元(改定率:+ 9.4%)

2-1)二類地区(仏山、東莞、中山) 18 年 07 月:1,720 元 (改定率:+ 13.9%)  16.4 元(改定率:+ 13.9%) 21 年 12 月:1,900 元 (改定率:+ 9.5%)  18.1 元(改定率:+ 10.4%)

2-2)二類地区別枠(珠海) 18 年 07 月:1,720 元 (改定率:+ 4.2%)  16.4 元(改定率:+ 3.8%) 21 年 12 月:1,900 元 (改定率:+ 9.5%)  18.1 元(改定率:+ 10.4%)

3-1)三類地区(汕頭、恵州、江門、肇慶) 18 年 07 月:1,550 元 (改定率:+ 14.8%)  15.3 元(改定率:+ 15.0%) 21 年 12 月:1,720 元 (改定率:+ 11.0%)  17.0 元(改定率:+ 11.1%)

3-2) 四類から三類へ変更された地区(湛江) 18 年 07 月:1,410 元 (改定率:+ 16.5%)  14.0 元(改定率:+ 16.7%) 21 年 12 月:1,720 元 (改定率:+ 22.0%)  17.0 元(改定率:+ 21.4%)

4) 四類地区(韶関、河源、梅州、汕尾、陽江、茂名、清遠、潮州、掲陽、雲浮) 18 年 07 月:1,410 元 (改定率:+ 16.5%)  14.0 元(改定率:+ 16.7%) 21 年 12 月:1,620 元 (改定率:+ 14.9%)  16.1 元(改定率:+ 15.0%)

湛江市は今回の改定時に四類地区から三類地区に変更になりました。そのため今回の賃金上昇率は 20%超えとなりました。

原文

3. 深セン市最低賃金標準の調整に関する通知(深人社規[2021]8 号)

深セン市の最低賃金を以下のように改定する通知です。 改定前(18 年 7 月から):月次給与 2,200 元 時間給 20.3 元 改定後(21 年 12 月から):月次給与 2,360 元 時間給 22.2 元

原文

4. 広東省市場監督管理局検験検測機構資質認定告知承諾と自己宣言実施方案(粤市監認監[2021]447 号)

市場の各種製品や検査対象に対し検査検測を行う機構の“資質認定”の簡素化についての通知です。 「事前審査/許認可制」から「告知承諾制」「自己宣言承認制」に変更します。 但し特殊な食品、医療器械分野の検査検測機構は対象外とされました。

移行後は、承認された後に「双随機・一公開」(承認後の随時抽出検査と不適格者への処置・省の行政サービスネットでの情報公開)で監督管理されます。 「告知承諾制」は、“初回の認可申請”、“検査検測項目の追加”“授権署名者の追加や授権署名範囲の拡大”に適用されます。 「自己宣言承認制」は、既に資質認定証書を持つ機構の“法定代表人、最高管理者、技術責任者等の変更”、“実質的な変化では無い検査標準の変更”、“資質認定証書の有効期間の延長”に適用されます。 当通知には、「告知承諾制」「自己宣言承認制」それぞれの手続きプロセス、提出必要資料、市場監督管理局の事務処理期限、また承認後の随時抽出検査とその検査結果で問題があった機構に対する処置(処罰を含む)について、詳述されています。 また、申請時の注意事項説明、申請書類フォーマットなど以下の付属文書 5 件が添付されています。 「検査検測機構資質認定告知承諾必須知識」、「告知承諾書」、「人員変更自己宣言」、「標準変更自己宣言」、「認定証書有効期間延長継続の自己宣言書」

原文

5. 越境電子商取引の高品質発展に関する若干の政策措置(粤弁函[2021]328 号)

越境電子商取引の高品質発展に関する政策措置を、広東省政府弁公庁が関係部門、直属機関、省内地方市以上の政府に通達した文書です。 2025 年を目標年とし、具体的な数値を示した達成目標 10 項目及びそれらの政策責任部署が示されています。

1)越境電子商取引のトップ企業育成 ・2025 年までに、50 億元以上 20 社、年商 100 億元以上 10 社、年商 200 億元以上 5 社の越境電子商取引(EC)企業を育成。

2)「越境電子商取引産業園」建設 ・2025 年までに、越境 EC 輸出額を倍増。 ・2025 年までに、一定規模の越境 EC 産業園 30 か所を建設、通関、清算処理、ソフト開発、ビッグデータ処理等のサービス業を含む 10 万社を誘致。

3)「支柱産業群+越境 EC」モデル区展開 ・新世代電子情報産業、スマート家電、現代型軽工・紡績業、超高解像度ディスプレイ産業、現代農業・食品の“戦略的支柱産業群”と越境 EC 企業の「融合モデル区」の展開、越境 EC の産業集積度と公共サービス能力の向上。 ・“越境 EC デジタル化プラットフォーム”による原料調達~末端販売・上下流サプライチェーン構築、伝統的製造業の海外進出支援。 ・2025 年までに、「支柱産業群+越境 EC」モデル区 20 か所建設、年商 1 億元以上の越境 EC 企業 100 社、年商 1 億元以上の越境 EC ブランド 100 種を育成。

4)貯蔵・物流効率アップ ・越境 EC のための貨物集配網、情報共有化プラットフォーム、航空/鉄道/港湾のスマート一貫輸送ステーション構築。 ・2025 年までに、メイン業務 500 億元以上 3 社、1,000 億元以上 2 社の達成。

5)越境 EC の海外倉庫建設 ・“一帯一路”沿線国・地区、RECP(包括的経済連携協定)加盟国、欧米市場での海外倉庫建設、スマート貯蔵技術開発支援。 ・2025 年までに、海外倉庫 500 か所、倉庫総面積 4,000 平米超え、海外倉庫スマートネットワーク。

6)越境 EC 通関利便性向上 ・南沙“広州・香港・マカオグレーターベイエリア空港国際貨物センター”、深セン“前海離港空輸サービスセンター”、香港“国際空港物流園空海一貫輸送埠頭”の建設支援。 ・貨物集配施設整備、通関・検査検疫の簡便化、物流情報共有化、税還付簡便化。

7)越境 EC への優遇税制 ・輸出増値税、消費税免税政策、所得税徴税方法変更、越境 EC の“B2B 輸出”、海外倉庫業の増値税、所得税の優遇。

8)越境 EC への金融支持強化 ・金融機関の越境 EC 企業向け“革新的信用貸付商品”、売掛金担保融資、保税在庫担保融資、流通倉庫在庫担保融資などの革新的金融商品の開発奨励。

9)越境 EC 分野のハイレベル人材の招聘と育成 ・越境 EC プラットフォーム運営、情報技術製品開発、サプライチェーン運営管理、海外メディア利用等の越境 EC 人材への優遇政策の拡大、所得税優遇。

10)越境 EC 企業の海外リスク防御能力向上 ・輸出信用保険の越境 EC 企業向け新商品開発支持。越境 EC 企業の“知的財産権海外侵権リスク保険”購入奨励。海外税務、資金安全管理、知的財産権紛争対応などへの諮問、アドバイス。

原文

6. 電子発票の全面デジタル化の試行地区の業務に関する公告(国家税務総局広東省税務局広告 2021 年第 3 号)

電子発票の全面的デジタル化を先行実施するトライアル地区の業務に関する広東省税務局の公告です。 広州市、仏山市、“横琴広東マカオ深度合作区”で 12 月 1 日から先行実施し、これら地区の全面デジタル化の進展状況により、逐次広東省全域に広げて行く予定です。

電子発票の全面的デジタル化によって、税務機関は、全国統一電子発票サービスプラットフォームを使い、納税人に対し無料で 24 時間オンラインの電子発票が発行、交付でき、また調査などのサービスが得られ、発票に係る全領域、全工程の電子化が実現できるとしています。

本公告では、全面デジタル化電子発票(全電発票)の記載事項の詳細説明、発票番号(20 桁)の各桁の意味説明、納税人の発票発行・受領の方法や注意点、発票の月次総金額限度額の説明、従来の紙の発票との併用(試行期間は併用可能、総金額限度額は合計値)、暫時対象外品目(製品油、エンジン付き車両、紙巻きタバコ等)など、具体的に説明されています。

・添付の『解読』(要点説明書)では、以下の利点が強調されています。 1)発票の発行と受け取りの簡便化、迅速化、方法の多様化(スマホアプリも可など)、発票サービスプラットフォーム利用の一元化 2)会計処理業務の即時性、効率化、コスト軽減、安全性、特に遠隔地取引における利便性の大幅向上、帳票管理のデジタル化 3)企業経営基幹システムとの連結可能、業種による発票の記載内容の個性化

・本公告の付属資料として下記の実際画像が添付されています。 1)全面デジタル化電子発票の様式(書式、記載内容) 2)“紅字発票”(赤字伝票)の情報確認票

原文

7. 広州市不動産取引監督管理弁法(広州市人民政府令第 184 号)

不動産市場や社会の発展、情勢変化等に即し、また「住宅は住むもの、金儲けのものでは無い」の習主席指導方針を踏まえ、従来の『広州市不動産取引監督管理弁法』(2014 年 11 月、広州市人民政府令第 106 号)を修正した新版です。

主に不動産取引の監督管理、取引の安全、当事者の合法権益保護等に関し、厳格化を前提に修正・追加あり、その要点は下記の通りです。

1)「房源自動鎖定」(該当物件データ自動ロック)管理 「不動産取引情報化プラットフォーム」に入力した売買契約データを自動ロック、双方が解除に合意しない限り解除は困難(一方が法的有効手続きした場合を除く)。不正・虚偽取引、複数の購入者への重複販売防止等。

2)物件販売の価格、“前金”、販売方法等への指導強化 (1)不動産開発企業の合理的価格設定、“住宅・都市建設主管部門”の指導を明記。 (2)「前売り許可証」取得無しの前金受領の禁止(含む“誠意金”“予約金”等名称を変えた金銭要求)。「前売り許可証」無しの前売り(前金徴収)宣伝の禁止。 (3)開発企業が提示した「価格表」を超す金銭徴収禁止、“内装工事費”等名称を超えた実質値上げの禁止。 (4)不動産開発企業に各種サービス提供する業者が“ネット取引費”“団体購入手続費”“サービス料”等の名目で購買者から別途費用を徴収する行為の禁止。 (5)購買者に対する駐車スペースの強制販売の禁止。 (6)物件販売広告の記載禁止事項に「国家価格管理規定に対する違反」を追記。

3)「前売り許可証」取得前の「物件前売り専用口座」開設義務 ・「物件前売り専用口座」の使用の義務付け、当口座は対象物件と付属の公共スペース部分全ての竣工検査合格後まで取り消し不可。 ・前受け金の用途限定(必要な建築資材、設備、工賃、税に限定、他の用途へ転用禁止)。

4)在庫物件販売時の「物件情報コード」管理 ・仲介販売業者が受託販売契約を「不動産取引情報化プラットフォーム」に登録時、「物件情報コード」(物件番号+ QR コード)の取得と販売活動時の「物件情報コード」の明示。 ・住宅販売ウェブサイト運営者の物件情報の真実性の確認義務。

5)在庫物件販売時の“資金委託管理”方式の奨励 ・銀行など金融機関による第三者管理、物件引渡し・代金授受の時間差のリスク回避。 ・仲介販売業者の売買代金代理受け取り禁止(仲介業者の勝手な資金転用防止)。

この他、新版では、信用管理厳格化、違法行為への罰則強化が盛り込まれています。

原文

8. 広州市の“証照分離”改革の深化に関する業務方案(穂府弁函[2021]76 号)

許認可行政の簡素化のための“証照分離”改革の深化について、広州市政府から市内各区政府、市政府関係部門、直属機関宛てに公布した通達です。 国務院通達(国発[2021]7 号、21 年 6 月 3 日公布)、広東省政府の通達(粤府函[2021]136 号、21 年 7 月 6 日公布)に基づいて作成された広州市版です。

広州市管轄の許認可項目:合計 917 件に対し、広東省の通達と同様に、許認可レベル(国、省、市)毎の「許認可手続き撤廃項目」、「届け出制への変更項目」、「告知承諾制への変更項目」、「審査手続き効率化(事前審査は依然必要)項目」の 4 つに分類し、一覧リストが付表として示されています。 《付表》 広州市一般地区「中央政府レベルで決定すべき経営許可事項」523 項目 南沙貿易試験区「中央政府レベルで決定すべき経営許可事項」69 項目 広州市一般地区「広東省レベルで決定すべき経営許可事項」2 項目 「広州市レベルで決定すべき経営許可事項」323 項目

原文

9. 香港マカオの青年イノベーション創業基地の高品質発展の実施に関する意見(深人社規[2021]10 号)

深セン市政府の「香港マカオの青年イノベーション創業基地」発展に関する政策通知です。 2021 年 3 月に公布された広東省の『香港マカオの青年イノベーション創業基地の高品質発展の実施に関する意見』(粤人社函〔2021〕50 号)に基づき作成された深セン市版です。

「前海香港マカオ青年イノベーション創業基地」を模範にして、市内に 10 か所の市レベルの“特色ある”青年イノベーション創業基地を築き、2023 年までに“1+10+N”(前海基地を頂点に、市内 10 か所の青年創業基地を中核にして、さらに市内各地に広げる)構想の実現、という目標を掲げています。

資金援助拡充として、市レベルの基地に 50 万元の 1 回性の補助金、年度評価で優秀な基地には 10 万元支給など各種の資金援助策が示されています。 また、香港マカオの青年、創業集団の招聘のための施策として、「就業実習制度」(補助金付き)、高級人材に対する(香港マカオと深センの)所得税差額補填、「香港青年発展基金」「香港イノベーション・科技基金」獲得団体が深セン市の青年基地に常駐した時の 20 万元援助金などが提示されています。 本通知には以下 2 件の文書が添付されています。 「市クラスの香港マカオ青年イノベーション創業基地の管理規定」 「香港マカオの青年の初めてのイノベーション創業の際の資金等のセット援助の申請ガイド」

本通知は 12 月 1 日施行、有効期間 3 年間です。

原文

以上