【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.145

2021-05-18
**【INDEX】

【中国ビジネス・トレンド】
**■ 広州保税区廃止(非保税区化)とその対応に付いて

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**【中国ビジネス・トレンド】**

■ 広州保税区廃止(非保税区化)とその対応に付いて **

広州保税区・保税物流園区で、組織変更が実施されています。
その一環で、広州保税区は、2021年3月に、非保税区域化(保税区域からの退出)を、国務院に申請しており、数か月以内の認可が見込まれています。一方で、広州保税区に隣接する広州保税物流園区は、広州黄埔総合保税区への転換が実施されました。
広州保税区の非保税化により、区内企業の保税業務が大きく制限されることになり、区内企業は、営業範囲の変更(保税業務の放棄)、若しくは、移転などの措置を余儀なくされます。
同時に実施される、広州保税物流園区から黄埔総合保税区への転換は、制度的には機能の拡大を伴うものですが、第一期として認可された面積は、保税物流園区の区域のみの、極めて小さなスペースであり、大規模な企業呼び込みができる余地はなく、第二期拡張は計画はあるようですが、現時点では、詳細は不明です。
この様な組織変更を踏まえ、組織変更の概要、今後の注意点更には、広州保税区の企業が取るべき対応を、広州保税区管理部門(穗港智造合作区管理委員会企業服務処)へのヒアリング結果も踏まえて解説します。

1.広州保税区と広州保税物流園区
(1)広州保税区
** 広州保税区は、1992年に国務院の認可を受けて設置された、長い歴史を持つ保税区です。保税区は、数多くある保税開発区の中でも、長い歴史があり、ソフト・ハード両面でのインフラが整備されていること、更には、生産型企業、サービス企業(販売会社、物流会社、IT会社、その他)を幅広く受け入れるという特徴があります。
広州保税区が設置された時点では、中国では、外資販売会社の設立が認められていなかったため(外資販売会社の設立は、2004年の外商投資商業領域管理弁法施行により可能となった)、保税区内には、保税区貿易会社という、貿易権・国内流通権を持たない、特殊形態の販売会社が多数設立され、現在でも、多数の販売会社が保税区内に登記されています。
但し、2004年の外商投資商業領域管理弁法施行・対外貿易法改定により、保税区内の販売会社も、国内流通権・貿易権の取得が可能になったため、現時点では、保税区内の会社は、原則として、正規の国内流通権・貿易権を持っています。その上で、保税区の会社であれば、「保税貨物の取り扱い(保税倉庫・保税開発区内の貨物の売買)も認められる(保税区外の会社はこの様な取引は対応不可)」ので、非保税区域の販売会社よりも営業範囲が広く、これを理由として、保税区登記が好まれるケースが少なくありません。

(2)広州保税物流園区(現黄埔総合保税区)
** 広州保税物流園区は、2007年に認可されています。
保税物流園区は、全国10か所に設置されていますが、全て1平方キロメートル未満の面積しかなく、通関を切ることのみを目的とした開発区です。
保税物流園区は、元々、保税区(歴史的な経緯で、増値税輸出還付機能を持たない唯一の保税開発区)に、増値税輸出還付機能を付与する事を目的とし、保税区の内部に設置されました。この為、保税区経由で輸出する貨物は、まず、保税物流園区に搬入し、輸出還付請求権を確定させた後に、保税区に保税転送し、そこから輸出するオペレーションが取られています。このように、保税物流園区で輸出通関を行うことで、保税区の倉庫を使用した上で輸出する場合でも、輸出者は、増値税の輸出還付を受けることができます。
更に、保税物流園区游というオペレーションも、保税物流園区の重要な機能です。これは、主に、輸出が義務付けられる加工貿易貨物を、中国内で販売したい場合などに、保税物流園区に搬入・搬出することで(輸出入通関が行われ)、輸出義務を果たすことができ、所有権を園区内で外国企業に移した上で、再度国内に戻すことが可能になります。
この様に、区内搬入・搬出により、輸出入通関を行うことだけを目的とした保税開発区ですので、どの保税物流園区も非常に小さく、広州保税物流園区(現黄埔総合保税区)は、0.49平方キロメートルの面積しかありません。よって、区内に加工企業を設立することはできませんし、区内に設立登記された企業が、新規で倉庫などの設備を建設する事もできません。

2.広州保税区・保税物流園区の組織変更
** 2020年5月17日に、広州保税物流園区から広州黄埔総合保税区への転換が国務院で認可され、2021年2月1日に、広東省の8行政部門の連合検収に合格しました。
総合保税区は、制度的には、保税区の完成形(輸出還付機能を併せ持つ保税区)といえる開発区で、物流・加工・貿易・研究開発・検測修理・展覧展示・販売・サービスなど、幅広い業種を受け入れます。但し、広州黄埔総合保税区は、上述の通り、保税物流園区(面積0.49平方キロメートル)からの転換ですので、開始時点では、機能が制限されます。今後の拡張計画があるため、その過程で問題は解消されていくとは思われますが、第二期拡張には時間を要するものと思われ、立ち上がり(広州保税区の廃止に伴う)混乱を吸収することは難しいと推測されます。
穗港智造合作区管理委員会企業服務処(以下、管理委員会)へのヒアリングでは、広州保税区廃止は、2021年6月末頃の許可が予想されているということです。
勿論、広州保税区内に登記された会社に対しては、移転・会社形態変更等の為の、一定の移行期間が設定されるようで、その期間内に、「広州黄埔総合保税区への転換」、「保税業務の放棄」、その他の選択を強いられることになります。

3.広州保税区企業の対応
** 広州保税区廃止を踏まえ、区内企業の対応に付き、業種に基づき下記します。
尚、管理委員会にヒアリングした結果では、移行期間がどの程度設定されるかに付いては、明確な回答が得られませんでした。

(1)販売企業
** 広州保税区が非保税区域に転換した場合、区内の販売会社は、スウィッチ貿易(転口貿易)、保税区貨物の取り扱い(保税開発区や保税倉庫内に保管されている貨物の売買)はできなくなります。
保税貨物の取扱いが、現時点だけでなく、将来的にも予定されていない場合は、経営範囲を変更(保税区域業にしか認められない保税業務を削除)すればよいのですが、そうでない場合は、広州黄埔総合保税区への移転を、優先的に検討する必要があります。
広州保税区内の販売会社は、殆どが、保税区登記だけを行い、実際のオフィスは、区外にあります。よって、殆どの場合は、物理的なオフィス移転は不要で、本店登記を、広州保税区から黄埔総合保税区に移すだけで、この対応ができます。
ただ、管理委員会へのヒアリングでは、「広州保税区に登記している、全ての企業の登記を受け入れることはできない。保税業務を継続したい企業のみを受け入れる予定なので、早く移転手続きを取ったほうがよい」との回答でした。
黄埔総合保税区が受入れ可能な企業数に一定の制限があるのであれば、早期対応が望ましいと言えますが、この点、「移行期間がどう設定されるか」、「登記だけを簡単に移動できるか。若しくは、黄埔総合保税区内に、小さいスペースでも賃借する必要があるか(この場合、黄埔総合保税区には、殆どスペースが無いため、登記できる企業は、極端に制限される)」の方針明確化が待たれます。

(2)生産型企業
** 黄埔総合保税区には、生産型企業を移転するスペースはありません。対応策としては、保税区内の生産型企業は、保税業務を継続するためには、税関で加工貿易(進料加工)の手冊開設を申請し、区外の加工貿易企業として存続する事を選択する必要があります。

(3)物流企業
** 広州保税区内の物流会社が、一番影響を受ける可能性があります。
広州保税区内に倉庫・物流拠点を持ち、保税倉庫業務・簡単加工などを行っている場合、広州保税区廃止後は、その施設が、非保税設備となってしまいます。
広州黄埔総合保税区は、現時点では、スペースが極めて限られているため、区内に設備を新設することはできません。よって、保税物流業務を継続するためには、保税倉庫会社を設立するなど、希望するオペレーションに基づき、根本的な対応を検討する必要があります。

水野コンサルタンシーグループ代表 水野真澄


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