加工貿易Q&A(税関総局広東分局とのQ&A)

2009-02-10

加工貿易Q&A(税関総局広東分局とのQ&A)

2007 年 10 月 25 日に行われた、税関総署広東分局加工貿易処との加工貿易関係Q&A(回答は税関・解説は水野真澄)の主要内容をご紹介します。

1.香港・マカオ一日遊の廃止に付いて

回答

国外に一旦輸出した加工貿易貨物の免税再輸入を禁止する事が検討されています。
現時点では、規定が公布されておらず、具体的な発言は出来ませんが、これが実施されると、加工貿易貨物を香港・マカオに輸出して、再度免税で輸入する取引はできなくなります。
この様な可能性を踏まえて、広東省では、保税物流中心B型の設置を推奨しています。

解説

加工貿易貨物を、一旦香港等に輸出して、再度、免税輸入する取引は、現時点で広く行われています。この様な取引が行われる理由は、「転廠だと価格差がつけられない(転出価格と転入価格の一致が求められるため)」、「転出側と転入側の税関で HS コードの認識が違い、転廠が認められない」等の理由が考えられます。
この様な制度上・実務上の問題を解消する実務的な方法が、香港等の一日遊であるという訳です。
但し、この様な取引は、不透明さを伴うため規制すべきという発言が、税関関係者から頻繁に聞かれるようになっていますが、現時点では実施には至っていません。
但し、この様な規制の動きの火種はまだ消えていない事が、今回の発言から伺えます。

2.輸出加工区、物流園区、保税物流中心等の保税開発区の今後の増設に付いて

回答

輸出加工区に付いては、2000 年に全国 15 箇所の輸出加工区が認可された際に、広東省で 2 箇所(深セン・広州)の輸出加工区が認可されましたが、進出企業が不十分で、満足する誘致状況にならなかったため、増設が見送られていました。
但し、昨今の加工貿易規制の動きにより、輸出加工区に対する注目が集まってきたため、税関は、地方政府と協議の上、輸出加工区を始めとする税関監督区域の建設を促進しています。
今後、保税区・輸出加工区を始めとする税関監督区域に対して、加工貿易企業の誘致を進めたいと考えています。
また、香港一日遊禁止の対応策として、保税物流中心B型の建設を推奨しています。

解説

ここ数年間で、保税開発区の種類・数の増加は大きく増加しています。
1990 年代には、保税区(全国 15 箇所)しか保税開発区はなかったのですが、2000 年に全国 15 箇所の輸出加工区が認可されて以来、輸出加工区の数は 60 箇所以上に増加し、その後、物流園区、保税物流中心、マカオ珠海クロスボーダー工業園区、蘇州総合保税区、保税港区、保税物流中心等、多種多様の保税開発区が設置されています。
これから見ても、中国は保税取引自体の制限を志向していない事が分かります。
但し、今までの様に、一般区での保税取引(加工貿易)を自由に認めるのではなく、税関が封鎖管理を行う特別地域に、保税取引を誘導・集約する方針は見て取れます。
また、輸出加工区に付いては、特に、広東省では誘致がなかなか進まなかったのは事実ですが、それは、区外の加工貿易制度の使い勝手が良かったからであるといえます。
つまり、輸出加工区に会社を作った場合、将来的にも輸出主体である事が義務付けられ、販売政策の変更(国内販売の増加)に対応できません。
その点、区外に外資企業を作れば、進料加工を行う事もできるし、また、進料加工契約を結ばなければ、通常の国内販売にも対応でき、取引の柔軟性がある為です。
但し、昨今の加工貿易規制強化の中で、輸出加工区が注目を集め、進出を希望する企業が増えています。この状況を踏まえて、今後、輸出加工区の増設が進むものと推測されます。

3.来料から独資への組織変更にあたり、生産を止めずに(同じ場所で、設備を移動せずに)組織形態を転換することの可否。

回答

同一の場所で組織変更を行う場合、生産を止めずに転換することが認められており、深センでは既に実例があります。これは、来料加工廠の中止(終了)後の3ヶ月間、税関の企業コードを保留し、この期間を利用して、新しい手冊の申請や材料の移管手続等を行う方法です。

解説

来料から独資(進料)に転換する場合には、「同一地域での会社設立・登記」、「設備の移管」、「生産能力証明の取得と加工貿易認可取得」、その後に「来料加工契約の解除」という手続が必要となりますが、このステップを踏むと、設備の移管後に生産能力証明の取得・進料加工契約の認可が必要になりますので、どうしても一定期間の生産停止を余儀なくされます。
但し、昨今の状況(来料から独資への転換が推奨されており、実例としても多い)を踏まえ、深センでは内部通達によって、「設備・人員移管前の進料加工契約の認可」、「一定期間来料・進料企業の並存を認めた上での保税物品の移管」を認めており、これにより、生産を止めずに組織変更を行う事が可能となっているという回答です。
但し、現時点では、実例はそれほど多くはないようです。

4.加工貿易工場を移転する場合の無償提供設備の移管(移送)方法。

回答

設備転廠(結転)手続を行う、或いは、税関の監督管理を解除する手続により国内貨物にする方法によります。
因みに、監督管理期間である5年に満たない場合は、税関の規定する公式で減価償却し、関税・増値税を納税する必要があります。

解説

無償提供設備を移転する場合、新旧工場の無償提供設備の所有者(外国企業)が同じであれば、設備転廠という方式を取る事ができます。
これは、税関の許可を取って、無償提供設備を転廠する方法です。
また、輸入通関後、税関監督期間である 5 年が既に経過している場合には、税関に監督解除を申請する事ができ、このステップで内貨にした設備に付いては、国内で処分する事が可能となります。因みに、税関監督期間が満了していない無償提供設備に関して、監督解除を行う場合は、「減価償却後の設備残高に対して、輸入段階の関税・増値税を納税」する必要があります。

尚、内貨にした無償提供設備を国内販売で販売する場合には、販売段階の増値税の納税義務も発生します。自己使用の中古固定資産を売却する場合は、所管税務局の許可を取得できれば、販売段階の増値税が免除される優遇がありますが、免税措置が受けられない場合は、4%の税率を元に半減措置の適用をうけて(つまり 2%の税率で)、国内販売時の増値税を計算します。