3.保税区企業の加工貿易関与

2009-02-10

3.保税区企業の加工貿易関与

(1)来料加工

保税区企業が、区外企業に来料加工を委託する事は、「保税区税関監督管理規定」に基づき禁止されている。
⇒ 規定上、保税区企業が区外企業に加工委託を行う場合は、以下の条件に合致する事が要求されているため。

  • 区内に於いて生産場所を有しており、既に生産加工業務を開始している事。

  • 区外企業に加工委託を行う取引は、加工の主要工程は区内で行われる事。

結果として、保税区企業が区外企業に委託できるのは、外注加工(一部の補助的工程のみを他企業に委託する形式)のみであり、来料加工の委託者にはなれない。

(2)進料加工

進料加工は、売買契約形態の取引(区外企業が行う部材輸入・製品輸出が一対となった契約に関して保税措置の適用を受ける形式)のため、理論上は、(加工委託ではなく売買取引なので)対応可能と判断する保税区が有る(保税区により対応が違う)。
但し、増値税の二重課税が生じる為、取引実例は極めて少ない。

(3)加工貿易品の保税区搬入

国内販売のための経由地(香港の代替)として、保税区は活用できるか。

結論:進料加工品は二重課税に繋がる為避けるべき。
来料加工品も実例はあるが、不透明なケースが多い。
加工貿易貨物を保税区に搬入するのは避けた方が無難(一番問題がないのは香港活用。次は物流園区)。
因みに、輸出監管倉庫・保税物流中心は、搬入後、実際の輸出が求められる為、やはり使えない。

  • 来料加工品の搬入

来料加工取引は、増値税の免税取引であるため、保税区を経由した国内販売(再輸入)を行っても、理論上は、増値税課税上の問題は生じない。

⇒  来料加工に関してこの様なオペレーションを行った場合、加工貿易貨物が保税区に搬入されるまでは、(来料加工が免税取引である為)増値税の課税は行われない。

その上で、貨物が再度、(国内販売の為に)中国の区外地域に搬出される段階で、輸入通関を行う国内バイヤーが、完成品に対して輸入関税・増値税等を納税する事となる。

尚、上述の通り、保税区企業は来料加工の加工委託者にはなれないので、来料加工品が保税区に搬入される場合、保税区で貨物を引き取るのは、来料加工の委託者である外国企業となる(保税区企業は来料加工の委託者とはなれない)。

  • 進料加工品の搬入

進料加工の場合は、「免税・控除・還付」方式に基づいて増値税を納税する事が義務付けられる。

「免税・控除・還付」方式とは、輸入段階の課税と輸出還付を、輸出時に纏めて行う方式だが、保税区に貨物を搬入する場合は、輸出還付の適用がないので、この課税・還付方式は採用できない(国内販売に準じた課税が行われる)。

⇒  区内に貨物を搬入しても増値税輸出還付が実施されない点が、物流園区・輸出加工区との違い。

この点、保税区は不利。

一方、(保税区で貨物を引き取る)保税区企業・外国企業は、増値税を加工貿易企業に支払った上で貨物を引き取る事になるが、貨物を国外に輸出しない為、輸出還付請求ができない(保税区から実際に貨物を輸出したときに輸出還付申請できる事となっている)。
更に、(中国内)区外のバイヤー企業は、保税区から貨物を引き取る段階(輸入段階)で、関税・増値税等を支払う必要があるので、結果として、完全な二重課税が生じる。