加工貿易関連手続合理化 執筆日:2020年3月5日

2020-03-05

執筆日:2020 年 3 月 5 日

加工貿易関連手続合理化

「作業手続の簡素化・規範化による加工貿易の利便化促進に関する公告(税関総署公告 2019 年第 218 号)、以下、218 号」により、2020 年 1 月 1 日から、加工貿易の手続簡便化が実施されています。

これは、2018 年の金関二期(次世代通関管理システム)稼働による、通関・保税品管理等に関する情報処理の高度化を踏まえ、加工貿易の各種手続を規制緩和するものです。

1.手冊管理

金関二期システムを使用する場合、加工貿易手冊の開設に際して、税関での備案を不要とし、システムで、手冊データを、税関に直接送付することになります。

また、加工貿易帳冊開設時の、「商品相関体系(中国語:商品归并关系)」申告は不要となり、企業の実際管理状況に基づいて、税関に関連商品情報を提出することになっています。商品相関体系と電子台帳間で、一対一の対応をしていない場合、社内商品管理体系を自社保管し、将来有り得る、税関の調査に備えるものとしています。

尚、商品相関体系とは、税関分類番号(HS コード)と社内での保税商品分類番号の相関体系であり(手冊・帳冊には HS コードに基づき登録するものの、社内の商品管理は、必ずしもそれに基づいていないため、各々の相関体系を、各社が整備する必要がある)税関総署公告[2010]55 号に設定条件が規定されています。

2.外注加工

外注加工(中国語:外発加工)を行う場合、金関二期システムで、規定期間内に、税関に「外注加工申告表」を送付します。但し、「加工貿易貨物監督管理条例」で要求されている、外注加工出荷・荷受記録は送付不要となり、企業が自社保存することとなりました。

尚、「外注加工申告表」の記載に際して、全工程の外注(丸投げ外注)の場合は、その部分にマークを付け、担保を提供した後に、外注加工が可能となると規定されています。

ちなみに外注加工とは、加工貿易企業が、中国内の他企業(非加工貿易企業)に対して、一部、若しくは、全部の加工を委託する取引です。

外注加工は、委託する加工貿易企業の手冊・帳冊で、外注先での加工工程にある保税品も管理されるため、委託者側で、税関手続を行う必要があります。かつては、外注加工は、税関に対する事前許可申請が必要でしたが、2014 年の「加工貿易貨物監督管理弁法」の改定(税関総署令 2014 年第 219 号)で、事前許可は不要となり、最初の外注から、3 営業日以内に、税関に備案申請するという、規制緩和が実施されました(事前許可から事後備案への緩和)。

また、かつては、「全行程の外注、税関所管区域を跨ぐ外注、外注先から直接輸出される場合」は、全て、保証金の積立が義務付けられていましたが、やはり、2014 年の加工貿易貨物監督管理弁法の改定において、保証金の積み立てを要するのは、全行程の外注の場合のみとなっています。

3.転廠(深加工結転)

転廠とは、加工貿易企業間の保税貨物の移送であり、転出企業は輸出通関、転入企業は輸入通関するものの、貨物は直接中国内で移送することが認められます。

218 号では、転廠に際して、「加工貿易貨物監督管理弁法」に定められている、事前申告と、出荷・荷受記録の税関に対する送付が免除されています。218 号に基づけば、転廠を行う企業は、既定の時間内に、税関に対して、「保税核注清単(保税品消込照合リスト)と通関単」を提出して、申告手続を行う(税関は、事前審査を実施しない)と規定されています。

尚、集中申告を行う場合、翌月 15 日までに、転廠に関する保税核銷清単・通関単に基づき、手続を行うことになります。

但し、手冊・帳冊期限の有効期限を超過する事、及び、核銷期限を超過する事、更には、年度をまたいだ申告は、認められませんので、該当する場合は、早めの手続が必要です。

4.余剰原材料結転

218 号では、余剰原材料結転に際して、リスク保証金の徴収を停止する事と、税関による、事前審査の取り止めを規定しています。

金関二期システムを使用して余剰原材料結転をする場合、「余剰材料結転申告表」の提出は不要であり、規定の時間以内に、税関に保税核注清単(保税消込照合リスト)を提出し、余剰材料結転業務の申告手続を実施することになります。

尚、リスク保証金積立免除に関しては、「加工貿易の端材・余剰材料部品・不良品・副産物、及び被災保税貨物管理弁法(税関総署令 2017 年第 235 号)」に、以下の条件に合致する場合、保証金を積立てることを義務付けていますが、218 号により、それが免除されています。

1)経営企業が、余剰材料を他の加工貿易契約に繰越す際場合。

2)余剰材料の転出金額が、当該手冊に登録している原材料総額の 50%以上である場合。

3)余剰材料を登録している手冊が、既に 2 回以上延長された場合。

5.監督解除後の国内販売

加工貿易貨物は、原則として、輸出が義務付けられますが、税関手続し、輸入段階で課税留保された関税・増値税(品目によっては、消費税も)を、延滞利息付きで納付することを前提に、国内販売が認められます。

加工貿易貨物の国内販売の実質的な開始は、「加工貿易貨物内販の手続簡便化を促進する問題に関しての通知(署加発[2009]196 号)」によるものです(法律上は、それ以前から認められていましたが、実際の許可取得は困難でした)。当初は、商務主管部門・税関の事前許可を要しましたが、その手続きは、徐々に規制緩和されてきています(商務主管部門での手続は、既に不要です)。218 号では、金関二期システムを使用して国内販売を行う場合、保税消込照合リストに基づき、国内販売徴税通関申告書を作成し、納税手続を行う(国内販売徴税連絡票の提出は不要である)と規定しています。

尚、区外加工貿易企業の国内販売に関して、集中通関を行う場合は、翌月 15 日までに、保税消込リスト・通関申告書に基づき、纏め申告を行います。これも(転廠で記載したのと同様)、手冊・帳冊の有効期限、核銷期限、年度を超えた申告は認められません。

6.無償提供設備の監督解除

無償提供設備とは、加工貿易に際して、外国の委託者が、加工貿易企業に対して、無償貸与する設備で、中国側で保税輸入(関税のみ。増値税は課税)が認められます。無償提供設備には、5 年間の税関監督期間が設定されていますので、その間は自由な処分が禁止されます。

218 号では、無償提供設備の監督解除に際して、監督期限が満期した場合は、税関に対する書面申請は不要であり、申告監督管理方式「BBBB」の、設備監督解除専用保税消込リストを使用し、監督解除の手続きを行うことが規定されています。

税関審査終了後、企業は必要に応じて、監督管理解除証明書を印刷することができます。


水野真澄(水野コンサルタンシーグループ代表)