外商投資法施行前後の利益処分

2022-07-21

2020 年 1 月 1 日の外商投資法施行後、外資企業の利益処分の原則・手続が、どの様に変わったかに付いて解説します。

1.原則的な考え方

外商投資法施行に伴い、外資三法(独資企業法・中外合資企業法・中外合作企業法)が廃止されました。旧外資三法には、実務的な内容が比較的詳細に規定されており、それが会社法の規定と異なる場合があり、その場合は、旧外資三法が優先する事となっていました。 外商投資法は、概念的な内容が殆どで、実務的な内容は規定されていませんので、利益処分は、原則として会社法に基づく事となります。

2.会計監査

「独資企業法実施細則」・「中外合資企業法実施条例」では、公認会計監査を義務付けていましたが、これらが廃止されました。 一応、会社法第 164 条には、「各会計年度終了時に財務会計報告書を作成し、法に基づき会計事務所の監査を受けるものとする」と規定されていますが、実務的には、2014 年の商事登記制度改革以降、非上場企業に関しては、内資同様、外資企業に対しても会計監査は強制されなくなり、確定申告時の提出も不要、配当送金時の提出書類からも削除されています(匯発[2014]2 号)。 ただ、「貿易投資便利と真実性審査の改善の一層の促進に関する通知(匯発[2016]7 号)」には、US$ 5 万を超過する配当金の対外支払いには、会計監査報告書の提示が要請されており、実際には、多くの外資企業では、会計監査を実施しています(配当目的以前に、日本の親会社の連結決算上の要請で義務付けられるケースが多い)。 その意味で、会計監査の実施は、外商投資法施行前後で、殆ど変更はないものと思われます。

3.最高意思決定機関

旧外資三法施行時は、独資企業の最高意思決定機関は股東会(出資者が複数の場合)・出資者(出資者が 1 名の場合)。中外合資企業・中外合作企業は、董事会とされていましたが、現在では、会社法・第 36 条に基づき出資者総会が最高意思決定機関となっています。よって、利益処分決議は、股東会・出資者が行うこととなり、配当送金時に、税務機関・銀行に提示する決議書も、これとなります。 但し、5 年間の経過期間中で、股東会を設置していない中外合弁企業は董事会決議書となります。

4.法定準備金

旧外資三法施行時は、中外合資企業法実施条例には、準備基金・企業発展基金・福利基金(総称、三項基金)の積み立てが、独資企業法実施細則には、準備基金・福利基金の積み立てが規定されていました(中外合作企業に付いては、積立義務の規定なし)。 外商投資法施行(三資企業法廃止)後は、積立が義務付けられるのは、準備基金のみとなります。 但し、企業が望めば、企業発展基金・福利基金などを任意で積み立てる事は可能です。

5.準備基金の積立時期

外商投資法施行後は、積立が強制されるのが準備基金だけであることは、上記4の通りです。尚、会社法と独資企業法・中外合資企業法では、準備基金の積み立てに関して、以下の様な違いがあるため、積立時期に変化が生じる可能性があります。

①  会社法(外商投資法施行後)

会社は、当年の純利益を配当する時に、利益の 10%を会社の法定公共積立金に積み立てるものとする。会社の法定公共積立金の累積金額が登録資本金の 50%以上となる場合、これ以上積み立てなくてもよい(筆者注:配当時の積み立てと規定されています)。

②  旧独資企業法

独資企業の中国の税法規定に基づき納税した後の利益に対しては、準備基金、従業員奨励福利基金を積立てなくてはならない(筆者注:配当するか否かに拘らず、年度の利益処分時に積立が必要でした)。 準備基金は純利益の 10%以上であり、積立額が登録資本金の 50%に達した時点で、再度積立てなくてもよい。従業員奨励福利基金の比率は、独資企業が独自に決定できる(筆者注:準備基金の積立金額は、会社法と同様です)。

③  旧中外合資企業法

合弁企業が稼得した純利益は、税法の規定に従い企業所得税を納付した後、合弁企業の定款に規定する準備基金、従業員奨励福利厚生基金、企業発展基金を積立てた上で、合弁出資者の登録資本の比率に基づき分配する(旧中外合作企業法)。 準備基金、従業員奨励福利厚生基金、企業発展基金の積み立て率は、董事会が決定する(旧中外合作企業法実施細則)。 以上の通り、配当するか否かに拘らず、年度の利益処分時に積立が必要でした。