企業会計準則第14号(収益)に伴う収益認識のポイント

2021-08-27

企業会計準則第 14 号(収益)に伴う収益認識のポイント

企業会計準則第 14 号(以下、新基準)が、2021 年度より、外資非上場企業にも適用されていますが、その概要と、会計処理適用に関する、中国特有の問題点について解説します。

1.収益認識の考え方

新基準では、収益認識に関して、以下のステップを踏むことを規定しています。

●  顧客との契約の識別(ステップ1)

これは、契約の存在を確認する事です。

●  契約における履行義務の識別(ステップ2)

これは、ステップ1で識別された契約が、どの様な義務を約定しているか(例:物品販売か、役務提供か、それらが複合したものか)、また、その履行義務が充足されるのはどの時点かを判断するステップです。

●  取引価格を算定(ステップ3)

契約に定める取引価格を算定するステップです。これは、単なる契約に記載された金額ではなく、「値引き、割引、罰則適用などがある場合」、「契約価格が金利要素を含む場合」、「委託販売の様な場合」など、一定の調整が必要となる場合が規定されています。

●  取引価格を履行義務に配分(ステップ4)

契約に複数の履行義務が含まれている場合(販売とアフターサービスなど)、どの履行義務に、どの価格を配分するかを決定します。

●  履行義務の充足に伴い収益を認識(ステップ5)

履行義務の内容によって、収益認識時点は異なるため、内容に基づき、収益認識時点を判断します。

2.契約の識別(ステップ1)

①  契約と収益認識時点

新基準・第五条には、以下の条件が同時に満たされた時点で、顧客が当該商品の支配権を取得したとみなして、収益を認識することが規定されています。

(1)契約当事者が契約を承認し、かつそれぞれの義務の履行を誓約した。

(2)当該契約に、譲渡された商品、提供された役務に関する、契約当事者の権利及び義務が明確に定められている。

(3)当該契約書に、譲渡される商品・役務に関連する支払い条件が、明確に定められている。

(4)契約に商業的実体がある。つまり、当該契約を履行することにより、企業における将来のキャッシュ・フローのリスク、時期、金額に変化が生じる。

(5)顧客への商品の譲渡・役務の提供により、企業が取得する権利ある対価が回収される可能性が高い。

以上の通り、契約が存在し、そこに義務と権利、支払い条件が明確に規定されており、且つ、対価の回収可能性が高い場合は、収益認識に関する会計基準(新基準)を適用する事となります。

一方、この 5 条件の全てを満たさない場合は、満たした時点で、会計基準を適用する事になります。また、最後まで満たさない場合でも、対価の受領時に、以下の要件を満たせば、収益が認識できます。

●  残りの義務が無く、対価の殆どを受領済であり、返金不要である。

●  契約が解約されており、対価の返金は不要である。

これは、新基準・第六条に、以下の通り規定されています。

契約開始日に、当該準則・第五条の要件を満たしていない契約については、企業が継続的に評価し、第五条の要件を満たした時点で、その規定に基づき会計処理を行う。

第五条の要件を満たさない契約については、企業は、商品を顧客に譲渡する残存義務がなくなり、かつ顧客から受け取った対価を返還する必要がない場合においてのみ、受け取った対価を収益として認識することができる。

そうでない場合は、受け取った対価を負債として会計処理をしなければならない。商業的実体のない非貨幣性資産の交換は、収益として認識されないものとする。

②  契約の結合

以下の何れかの要件に該当する場合、個別の契約であっても、契約を結合して、単一の契約と見なして処理する事が、新基準・第七条に規定されています。

**企業が同一の顧客(またはその顧客の関係者)との間で、同時期に、または同一期間内に連続して締結した 2 つ、若しくは、それ以上の契約は、下記のいずれかの条件を満たす場合、会計上、1 つの契約に纏めて会計処理をしなければならない。 **

(一)二つ、若しくは、それ以上の契約が、同一の商業目的で締結され、一括取引を構成している場合。

(二)二つ、若しくは、それ以上の契約のうち、一つの契約の対価の額が、他の契約の価格、または実行状況に依存している場合。

(三)二つ、若しくは、それ以上の契約で約束された商品(或いは各契約で約束された商品の一部)が、当準則第九条に基づく単一履行義務を構成している場合。

③  契約の変更

契約の変更がある場合、「個別の財、サービスが追加されるか」、若しくは、「追加はされない場合で、譲渡済の商品と、未譲渡の商品が明確に区別できるか」を判定します。

全社の条件に合致する場合は、契約変更を新しい別契約と判定。後者の要件を満たす場合は、未履行部分を新しい別契約として判定します。

一方、この条件を満たさない場合は、元の契約の一部として会計処理をすることとなります。これは、新規則・第八条に、以下の通り規定されています。

企業は、契約変更を会計処理する際、下記の 3 種類の状況に区別しなければならない。

(1)契約を変更し、明確に区別できる商品と契約価格を追加し、かつ新しく追加した契約価格が、追加商品の単独の販売価格を反映している場合、この契約における変更の部分は別個単独の契約として会計処理される必要がある。

(2)契約の変更が本条(1)に定める状況に該当せず、契約変更日に譲渡した商品、または提供したサービス(以下「譲渡品」という)、および譲渡していない商品、または提供していないサービス(以下「不譲渡品」という)が明確に区別できる場合には、元の契約が終了したものとみなし、元の契約の未履行部分と変更された部分を合わせ、新たな契約として会計処理をするものとする。

(3)契約変更が本条(1)に定める状況に該当せず、契約変更日に譲渡した商品が、譲渡していない商品と明確に区別できない場合、契約変更の部分を元の契約の一部として会計処理し、その結果、認識された収益への影響を、契約変更日に現在の収益と比較して調整しなければならない。

本準則でいう契約の変更とは、契約当事者の承認を経て、元の契約の範囲や価格を変更することである。

3.契約における履行義務の識別(ステップ2)

①  履行義務の識別

契約に規定された履行義務が、複数に分かれている場合(商品販売とサービス提供の双方がある場合など)、契約開始日に、約定した履行義務が、次のいずれに該当するかを判断する必要があります。

●  独立した財・サービスである。

●  一連の独立した財・サービス(特性が実質的に同じであり、且つ、顧客への移転のパターンが同じである複数の財・サービス)である(例:システムやビルの年間メンテナンス業務)。

この判定の理由は、商品とサービスが独立したものか、一体化したものかで、収益認識時点が変わってくるためです。

⇒  新規則第九条には、「個々の履行義務が一定期間にわたって履行されるのか、一時点で履行されるのかを決定し、個々の履行義務が履行されたときに、個別に収益を認識しなければならない」と規定されています。

●  独立した財・サービスか否かの判定

契約に定める財・サービスが、独立したものか(個別に会計処理をするか)、独立していないか(一体として会計処理する)の判定ポイントは、以下の通りとなります。

1)顧客は個々の財・サービス単独で、便益を得ることができる(若しくは、容易に調達できる他のものと組み合わせれば便益を得られる)。

且つ、契約において、財・サービスが個別に識別できる。

⇒  別の財・サービスとして会計処理をする。

2)上記の条件を満たさない。

⇒  財・サービスを一体として会計処理する。

新規則第九条・第十条には、以下の通り規定されています。

●  第九条

企業は契約開始日に、その契約を評価し、その契約に含まれる個々の履行義務を識別し、個々の履行義務が一定期間にわたって履行されるのか、一時点で履行されるのかを決定し、個々の履行義務が履行されたときに、個別に収益を認識しなければならない。

履行義務とは、企業が明確に区別できる商品を顧客に譲渡するという、契約上の承諾(コミットメント)のことである。履行義務には、契約上の明確な承諾と、契約締結時に企業が公表した方針、特定の声明または過去の慣習などにより、顧客が企業の履行を合理的に期待する約束の両方が含まれる。企業が契約を履行するために行うべき最初の活動は、その活動が約束された商品を顧客に譲渡するものでない限り、通常、履行義務を構成するものではない。

企業による顧客への一連の実質的に同一、かつ同一の譲渡方法で、明確に商品を区別するという承諾も、単一の履行義務として処理する必要がある。

同一の譲渡方法とは、明確に区別できる各商品が、この準則十一条に定められた一定の期間内に義務を履行する条件を満たしており、かつ同一の方法でその履行の進捗状況を決定することを意味する。

●  第十条

企業が顧客に約束した商品は、下記の条件を同時に満たす場合、明確に区別できるものとして取り扱う。

(1)顧客が商品そのもの、またはその他の容易に入手できる資源と組み合わせて商品を使用することで便益を得ることができること。

(2)商品を顧客に譲渡するという企業の約束は、契約の他の約束とは単独に区別されること。

下記のような状況は、通常、顧客に商品を譲渡するという承諾が、契約上の他の承諾と区別できないことを示している。

1)企業は当該商品を、契約で約定された他の商品と統合し、契約で合意された複合的な生産物を顧客に譲渡するために、重要なサービスを提供する必要があること。

2)契約で約定された他の商品に、大幅な変更やカスタマイズを加えること。

3)この商品は、契約で約定された他の商品との関連性が高いこと。

4.取引価格の算定(ステップ3)

ステップ3は、取引価格の算定です。

契約には、値引き、ペナルティー等の発生予測、顧客に対するキャッシュバックなどの取引の存在など、各種の変動要素が取り決められていることがあるため、計上すべき収益は、必ずしも契約金額とは一致しません。

取引価格の算定に影響を与える要素を、下記します。

①  変動対価

取引価格が変動する可能性がある取り決めで、値引き、リベート、返金、インセンティブ、業績に基づく割増金、ペナルティー等が挙げられます。

これらの取り決めがある場合、当該金額を負債として計上し、見合いの額を収入から控除する必要があります。

これらは将来発生し得る事項で、具体的な金額の予測は不可能ですので、過去の経験、市場動向などに基づき、負債として計上する価格を見積もります。

変動対価の見積り方法は、最頻値法と期待値法のいずれを選定し、当該契約に付いては、継続適用します。

●  最頻値法

最も発生する頻度が高い割合を使用する方法です。

●  期待値法

発生し得る確率(例:何割程度の値引きが発生する割合は何%かという分布に基づく)を加重平均して算出する方法です。

期待値法に付いては、財政部会計司発行の刊行物では、以下の様な例が紹介されています。

●   A 社はテレビを小売会社 B 社に販売委託した。

単価 3,000 元、契約台数 1,000 台であり、契約総額は 300 万元である。

A 社は B 社に対して、今後 6 か月以内に同一のテレビ販売価格が下落した場合、差額補填することを取り決めたが、A 社は過去の経験から、その値下げ率の部分布を、以下の通り推定している。

下落無し ⇒40%、200 元の下落 ⇒30%、500 元の下落 20%、

1,000 元の下落 ⇒10%

この状況を踏まえ、推定取引価格を 2,740 元とする(3,000 元x 40%、2,800 元x 30%、2,500 元x 20%、2,000 元x 10%)。

尚、新規則第十四条・十六条には、関連事項が、以下の通り規定されています。

●  第十四条

企業は、個々の履行義務に配分された取引価格に基づいて収益を測定しなければならない。取引価格とは、顧客への商品の譲渡により、企業が受け取ることができると予想される対価の金額である。企業が第三者のために受け取った金額と、企業が顧客に返金することが予想される金額は負債として会計処理すべきであり、取引価格には含まれない。

●  第十六条

契約に変動対価がある場合、企業は期待値、若しくは、最も発生する可能性の高い金額に応じて変動対価の最善の見積りを決定する。

ただし、変動対価を含む取引価格は、関連する不確実性が除去された時点で認識された収入を超過せず、重要な金額の変更がないものとする。

企業は、認識した累積収益に重要な戻入れが発生しえないことを評価する際、収益の戻入れの可能性とその比率の両方を考慮しなければならない。

企業は、各貸借対照表日において、取引価格に含めるべき変動対価の金額を再評価するものとする。変動対価の金額に変更がある場合、この準則第二十四条および第二十五条に従って会計処理を行うものとする。

②  契約における重要な金融要素

財やサービスの提供時点と、対価の受取時点が異なる場合は、その部分を金利要素として処理する必要があります(即金と 2 年後の支払いで価格が違う様な場合)。

新規則第十七条には、以下の通り規定されています。

契約に重要な金融要素が存在する場合、企業は、顧客が商品の支配権を取得した時点で、現金で支払うべき金額に基づいて取引価格を決定しなければならない。

この取引価格と契約上の対価との差額は、実効金利法を用いて契約期間中に償却されるものとする。

企業は、契約開始日に、顧客が商品の支配権を取得してから顧客が代金を支払うまでの期間が 1 年を超えないと予想される場合、契約における重要な金融要素は考慮しないものとする。

③  現金以外の対価

顧客からの対価が現金以外で支払われる場合は、当該対価を時価で評価します(新規則第十八条)。

顧客が現金以外の対価を支払う場合、企業は現金以外の対価の公正価値に応じて取引価格を決定しなければならない。現金以外の対価の公正価値を合理的に見積もることができない場合、企業は、顧客に譲渡することを約束した商品の独立販売価格を参照し、間接的に取引価格を決定するものとする。現金以外の対価の公正価値が対価の形態以外の理由で変動する場合は、変動対価として取り扱い、この準則の第十六条の規定に従って会計処理を行うものとする。

独立販売価格とは、企業が顧客に個別に商品を販売する際の価格のことである。

④  顧客に支払われる対価に関する影響

企業が顧客に対して支払う対価がある場合、これを取引額から控除する必要があります。これが、キャッシュバックやクーポンの配布などが例として挙げられます(新規則第十九条)。

企業が顧客(または、顧客から自社商品を購入する第三者、下記も同様)に支払うべき対価がある場合、支払うべき対価を取引価格から減額し、当該収益の認識と顧客への対価支払い(または、支払いの約束)の、何れか遅い時点で、その収益を減額する。

ただし、顧客に支払う対価が、顧客から他の明確に区別できるものを得ることを目的としている場合は除外される。

企業が顧客に支払うべき対価が、顧客から他の明確に区別できる商品を取得するためのものである場合、購入した商品は、企業による他の購入と一致する方法で認識しなければならない。企業が顧客に支払うべき対価が、顧客から入手した、明確に区別できる商品の公正価値を超える場合、その超過額を取引価格で減額するものとする。顧客から入手した明確に区別できる商品の公正価値を合理的に見積もることができない場合、企業は顧客に支払うべき対価を取引価格の全額で減額するものとする。

⑤  当事者か代理人かの区別

会計上、費用・収益は総量で表示しなければならないという原則(総額主義の原則)は有りますが、企業が代理人の立場で商品を取り扱う場合などは、この例外として、(仕入・売上価格ではなく)手数料相当を収益として認識することが規定されています。

当事者か代理人かの判断ポイントは、「財・サービスが、企業自らが提供する履行義務か。若しくは、他の当事者によって提供されるように、企業が手配する履行義務か」になります。

これが、顧客に提供される前に、財・サービスを、当該企業が支配しているかどうかが重要な根拠となります。

⇒  企業が、「約束の履行に対する主たる責任(品質責任、交換責任など)」、「在庫リスク」、「価格決定権」などを負っているかがポイントです。

新規則第三十四条には、以下の通り規定されています。

企業は、顧客に商品を譲渡する前に商品を支配しているかどうかに基づき、取引を行う際に、主たる責任者か代理人かを判断するものとする。

企業が顧客に商品を譲渡する前に商品を支配することができる場合、企業は主たる責任者であり、受領した、若しくは、受領可能な対価の総額に応じて収益を認識しなければならない。そうでない場合、企業は代理人であり、予想される手数料または手数料の金額に従って収益を認識し、その金額は、受領したまたは受領すべき対価の総額から他の関連当事者に支払う価格を差し引いた後の正味価格、または確立された手数料の金額または比率などによって決定されるものとする。

顧客に商品を譲渡する前に、企業が商品を支配できる状況は、下記の通りである。

(1)企業が第三者から商品またはその他の資産の支配権を取得し、それらを顧客へ譲渡する場合。

**(2)****企業が、企業に代わって顧客にサービスを提供する第三者を、支配することができる場合。**

(3)第三者から商品の支配権を取得した後、企業が重要なサービスを提供することにより、その商品と他の商品をセットに組み合わせて顧客に譲渡する場合。

顧客に商品を譲渡する前に商品を支配していたかどうかを具体的に判断する際、企業は契約の法的形式に限定されるべきではなく、以下のような関連する全ての事実と状況を合わせて考慮する必要がある。

(1)企業は、顧客への商品の譲渡について主たる責任を負う。

(2)企業が商品の譲渡前または譲渡後に商品の在庫リスクを引き受ける。

(3)企業は、取引された商品の価格を独自に決定する権利を有する。

(4)その他の関連する事実および状況

5.履行義務への取引価格の配分(ステップ4)

ステップ4では、取引価格を履行義務に配分します。

履行義務が収益の認識単位となりますので、ステップ 3 で決定した取引価格を、ステップ 2 で識別した履行義務に配分するのが、このステップです。

例えば、携帯電話と通話料のパッケージ契約の場合、携帯電話の販売・引渡しという履行義務と、通話回線の提供という履行義務から構成され、双方の履行義務の完了(収益認識時点)が異なります。

更に、この様なパッケージ販売に際しては、一定期間の通話料拘束を前提に、機体を極端に安価販売する場合があります。この様な場合、各々の契約価格をそのまま使用するのではなく、機体の独立販売価格を算定して、それを契約総額に基づき、機体と通話料に振り分けることになります。

独立販売価格とは、個別に販売した場合の妥当価格ですが、これが具体的に把握できない(同一・類似販売価格が取得できない場合)は、以下のような方法を採用して算定します。

●  市場価格評価法

販売市場の評価により、顧客が支払うと見込まれる価格を見積もる。

●  コストプラス法(予想コスト+粗利益)

発生コストの見積もりに、適切な利益を加算する。

●  残余価格法

契約における取引価格総額から、把握し得る他の財・サービスの独立価格を控除して見積もる方法。

新規則第二十条・二十一条には、以下の通り規定されています。

●  第二十条

契約に二つ、または、それ以上の履行義務が含まれている場合、企業は、契約開始日に、約定された商品の個々の販売価格の相対的な割合で、取引価格を個々の履行義務に配分しなければならない。

企業は、契約開始日以降の個々の販売価格の変動に伴う取引価格の再配分を行わないものとする。

●  第二十一条

企業が類似した環境で、類似した顧客に商品を個別に販売する際の価格は、当該商品の独立販売価格を決定するための最良の証拠となる。

個々の販売価格が直接観察できない場合、企業は合理的に入手できるすべての関連情報を考慮し、市場価格評価法、コストプラス法、または残価価格法を用いて個々の販売価格を合理的に見積もらなければならない。個別の販売価格を見積もる際、企業は可能な限り観察可能なインプット値を使用し、同様の状況には一貫した見積方法を適用する。

市場価格評価法とは、ある商品または類似商品の市場販売価格をもとに、企業のコストや粗利益などを考慮し、適切な調整を行った上で、企業が個別の販売価格を決定する方法である。

コストプラス法とは、企業が商品の個別販売価格を、見積原価に合理的な粗利益を加えて決定する方法である。

残価価格法とは、契約の取引価格から、契約に含まれる他の商品の観察できる個別の販売価格を差し引いた後の残存価格で、ある個別の販売価格を決定する方法である。

6.履行義務の充足による収益の認識(ステップ5)

これは、収益の認識時点を決定するステップです。

企業は、約束した財・サービスを顧客に移転し、履行義務を充足した時に(若しくは、経過的に)収益を認識します。

これに際しては、ある時点で収益を認識するか、経過的に認識するかを判断する必要がありますが、そのポイントは、以下の通りです。

①  一時点に認識するか経過的に認識するか

ある時点で収益を認識するか、経過的に認識するかの判断には、「以下の 3 条件の、何れかを満たすか否か」がポイントとなります。

1)企業が義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受するか。

2)企業が義務を履行するにつれて、新たな資産、若しくは、資産の増加が生じ、それを顧客が支配するか。

3)企業が義務を履行するにつれて、別に転用できない資産が生じ、完了した部分に付いては、対価を受領する権利を有しているか。

●  上記の条件を満たす場合

一定期間に渡り履行義務を充足し、収益を認識します。

●  上記の条件を満たさない場合

資産の支配権を顧客に移転し、義務が充足された時に収益を認識します。

新規則第十一条には、以下の通り規定されています。

下記の条件のいずれかを満たす場合は、一定期間内の履行義務となり、そうでない場合は、その時点での履行義務となる。

(一)顧客は、企業が契約を履行すると同時に、企業が契約を履行することによってもたらされる経済的利益を獲得し、消費すること。

(二)顧客は、企業が契約を履行する過程で、履行中の商品を支配できること。

(三)企業が契約を履行する過程で、産出された商品が代替できず、かつその企業は、 契約期間中に、これまでに完了してきた履行の累積部分に対して支払いを受け取る権利を有していること。

代替できないとは、契約上の制限や現実的な実行可能性の制限により、企業が商品を他の目的のために容易に使用できないことを意味する。

これまでに完了してきた履行の累積部分に対して支払いを受け取る権利とは、顧客やその他の当事者の原因で契約が終了した場合、企業はこれまでに完了してきた履行の累積部分に対して発生した費用と妥当な利益を補うことができる金額を受け取る権利があり、かつこの権利には法的拘束力があることを意味する。

②  経過的に認識する場合

経過的に収益を認識する場合は、一定の進捗度を基に見積もりを行いますが、進捗度の見積もり方法には、アウトプット法とインプット法があります。

●  アウトプット法

生産単位数、引渡し単位数、完成割合などの様に、成果物の達成割合で進捗を見積もる方法です。

●  インプット法

労働コスト、経過期間などの様に、コスト・消費量などを前提に、進捗度を見積もる方法です。

新規則第十二条には、以下の通り規定されています。

企業は、一定期間内に履行される義務について、履行の進捗状況が合理的に決定できない場合を除き、当該期間内の履行の進捗状況に応じて収益を認識しなければならない。

企業は、商品の性質を考慮し、アウトプットまたはインプットの方法を用いて、適切な履行の進捗状況を決定しなければならない。

その中のアウトプット法では、顧客に移転した商品の顧客に対する価値に基づいて履行の進捗状況を決定するのに対し、インプット方法では、履行義務を履行するための企業のインプットに基づいて履行の進捗状況を決定している。

類似の状況における類似の履行義務について、企業は同様な方法をもって履行の進捗状況を決定しなければならない。

履行の進捗状況が合理的に決定できず、企業が既に負担した費用のうち、補償が見込まれる場合、履行の進捗状況が合理的に決定できるようになるまで、既に負担した費用の金額で認識されるものとする。

③  ある時点で認識する場合

ある時点で収益を認識した場合、根拠は顧客への支配の移転ですが、これを示す指標は、以下の通りです。

1)企業が顧客に提供した資産の対価を受領する権利を、現在有している。

2)顧客が資産の法的所有権を有している。

3)企業が顧客に物理的占有を移転している。

4)顧客が資産の所有に伴う重大なリスクと経済価値を享受している。

5)顧客が資産を検収している。

新規則第十三条には、以下の通り規定されています。

ある時点で履行される履行義務について、企業は、顧客が関連商品の支配権を取得した時点で収益を認識しなければならない。顧客が商品の支配権を取得したかどうかを決定するにあたり、企業は以下の事象を考慮しなければならない。

(1)企業が商品に関して即時に支払いを受け取る権利を有していること、すなわち、顧客には商品の支払い義務があること。

(2)企業が商品の法的所有権を顧客に移転したこと。すなわち、顧客が商品の法的所有権を有すること。

(3)企業が商品を顧客に物理的に移転したこと、すなわち、顧客が商品を物理的に占有したこと。

(4)企業が、当該商品の所有に伴う主要なリスクと報酬(ベネフィット)を顧客に移転したこと、すなわち、顧客が当該商品の所有に伴う主要なリスクと報酬(ベネフィット)を取得したこと。

(5)顧客が既に、商品を受け入れたこと。

(六)顧客が商品の支配権を取得したことを示すその他の事象。