【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.92

2024-01-11

【中越ビジネスマニュアル 第 92 回】

中国・ベトナムにおけるリベートと商業賄賂に対する規制について

中国・ベトナムにおける合法的なリベートと商業賄賂の定義について解説します。

1.中国

(1)禁止される支払い

商業賄賂に対する規制は、「反不正当競争法」第7条に、事業者は財産・物品もしくはその他の手段を用いて、組織もしくは個人に賄賂を贈り、取引機会・競争優位を得ようとしてはならないと規定されています。

また、「商業賄賂行為禁止に関する暫定規定(国家工商行政国家局令1996年第60号)」には、リベートの支払い(第5条)、値引き(第6条)、仲介者に対するコミッションの支払い(第7条)は可能であるが、必ず口座を経由し、財務諸表に反映させる必要がある。財務諸表に反映させない支払い、現金での支払い、虚偽口座を使用しての支払いは、贈収賄と見なされ、処罰の対象となると規定されています。

ただし、同法第8条において、商習慣上の少額宣伝用品の提供などについては、「商業賄賂行為禁止に関する暫定規定」で認められています。

(2)合理性のポイント

値引き、リベートなどに関して、合法性を持たせるためには以下の点が重要になります。

1)銀行口座を通して支払い、現金・現物の受け渡しは行わないこと。

2)裏口座(例:経営者の個人口座の使用など)を使用した支払いは行わないこと。

3)財務諸表に反映させることと、増値税発票を適切に記帳すること。

(3)値引き・割り戻しと増値税

税務上(増値税)のポイントですが、販売時に値引きを行う場合は、同一増値税発票上に、販売額と値引き額を記載する必要があります(国税函[2010]56号)。この場合は、必ず発票の金額欄に値引き額を明記する必要があり、備考欄での記載は認められません。なお、一定数量の達成などを要件とした値引きは、事後でないと確定しないため、上記の方法(同一発票上に記載)は採用できず、赤字発票と呼ばれるキャンセル伝票を使用することになります。

2.ベトナム

(1)禁止される支払い

商業賄賂に対する規制は、「刑法」第364条に、職務・権限を有する者、その他の者・組織(収賄者)に対して、贈賄者がその利益につながる何らかの行為・不作為を求めて、200万ドン(約1万2,500円)以上の価値を有する賄賂を提供した、もしくは提供を試みた場合、罰金、非拘束矯正、懲役刑の対象となることが規定されています。旧法では、公務員への賄賂のみを対象としていましたが、2018年施行の現行法では、その対象は国有以外の企業・組織で職務を有する者を含んでおり、一般企業への賄賂も対象となっています。

リベートの支払い、値引き、仲介者に対するコミッションの支払いは可能ですが、2,000万ドン(約12万5,000円)以上の支払いの際は、必ず口座を経由させる必要があり、財務諸表に反映させない支払い、現金での支払い、虚偽口座を使用しての支払いは贈収賄と見なされる恐れがあります。

また、宣伝用品等の提供を伴う販売促進活動は、商工局・省への通知が求められていますが、総額1億ドン(約62万5,000円)未満の少額宣伝用品の提供などについては、通知が免除されます(政令・第81/2018/ND-CP号)。

(2)合理性のポイント

値引き、リベートなどに関して、合法性を持たせるためには以下の点が重要になります。

1)銀行口座を通して支払い、現金・現物の受け渡しは行わないこと。

2)裏口座(例:経営者の個人口座の使用など)を使用した支払いは行わないこと。

3)財務諸表に反映させることと、付加価値税(VAT)インボイスを適切に記帳すること。

(3)値引き・割り戻しと付加価値税

税務上(付加価値税)のポイントですが、販売時に値引きを行う場合は、VATインボイス上に、販売額と値引き額を記載する必要があります。この場合は、必ずインボイスの金額欄に値引き額を明記する必要があり、備考欄での記載は認められません。なお、一定数量の達成などを要件とした値引き(割り戻し)で、事後でないと確定しないものは、インボイスの修正が必要となります。修正方法は「最終販売時のインボイスで修正」、「次回販売時のインボイスで修正」もしくは「修正額のみのインボイスを発行」から選択しますが、修正額が最終販売額・次回販売額を上回る場合は、「修正額のみのインボイスを発行」します。また、販売後の品質不良に基づく値引きの場合、「修正額のみのインボイスを発行」します。


中国・ベトナムにおける借入の総量規制について

外債(対外借入)、国内での借入に関する総量規制について解説します。

1.中国

(1)外債

対外借入は、所管の外貨管理局(一部地域では銀行)で、外債登記をする必要があります。外債登記可能額は、「投注差方式」と「マクロプルーデンス方式」の2種類のうち、1つを企業が選択して、継続適用する必要があります。

●投注差方式

定款に記載された総投資金額から登録資本金額を控除した残額が外債登記可能額になります。外貨建て短期借入の場合は、残高管理ですので、返済すれば融資枠は復活しますが、それ以外(外貨建て中長期、人民元建ての全ての借入)は、累計管理であり、返済しても枠は戻りません。

●マクロプルーデンス方式

調整済借入金(借入通貨・期間に応じて一定の調整を行います)を、現時点では自己資本の3倍以内とする制度です。この方式は、全ての借入に関して残高方式が採用されるため、返済すれば、借入枠は復活します。

なお、借入枠は経済動向に応じて、随時調整されます。

(2)中国内借入

中国内の銀行からの借入に対しては、総量規制は適用されません。

(3)親会社保証と保証履行

中国内での借入に関しては、上記(2)の通り、総量規制は適用されません。ただし、親会社保証付きの借入であり、(中国内子会社が、返済不能になったことにより)親会社が保証履行をする場合、保証履行可能額は、総量規制(企業が選択している方法に基づき、投注差方式もしくはマクロプルーデンス方式での総量枠規制)の適用を受けます。なお、「クロスボーダー担保外貨管理規定(匯発[2014]29号)」により、投注差方式を採用している場合、保証履行額が中国法人の前年度会計監査報告書の自己資本の範囲であれば、枠を消費せず、これを超過した場合に適用対象となります。マクロプルーデンス方式の場合は、このような特例はなく、保証履行額全体が総量規制対象となります。

2.ベトナム

(1)外債

中長期借入(契約期間が1年を超える借入)は、中央銀行で登記をする必要があります。中長期借入可能額は、「投注差方式」が採られています。

●投注差方式

定款に記載された総投資金額から登録資本金額を控除した残額が中長期借入可能額になります。残高管理ですので、返済すれば融資枠は復活します。

(2)ベトナム内借入

中長期借入は、「投注差方式」に基づく総量規制が適用されますが、中央銀行での登記は不要です。

(3)親会社保証と保証履行

ベトナム内での借入に関しては、親会社の保証・履行の有無にかかわらず、上記(2)の通り、総量規制が適用されます。保証履行の結果として、親会社からの中長期借入が生じる場合は、外債として中央銀行での登記が必要となります。

以上