【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.83

2023-03-28

【中越ビジネスマニュアル 第 83 回】

中国・ベトナムにおける外国人の国内銀行口座と出入国時の現金携帯制限について

■ 1.中国

(1)銀行口座開設

外国人の中国内銀行口座開設は、「非居住者金融口座の税務状況調査管理弁法(国家税務総局・財政部・人民銀行・銀行業監督管理委員会・証券監督管理委員会・保険監督管理委員会公告 2017 年第 14 号)」により、2017 年7月1日から管理強化されました。

14 号は、非居住者個人の中国内銀行口座開設を直接的に禁止するものではなく、「居住地の納税番号提示(日本人の場合は、原則としてマイナンバー)」を義務付けるものです。

ただし、同公告施行後、外国人全般に対する銀行口座管理実務が強化されました。

現在は中国での居留許可を有する外国人しか、銀行口座は開設できません。

(2)入出国時の現金(外貨・人民元)携帯制限

中国出入国時に、特定の手続きが要求されない携帯金額は以下の通りです。

1)人民元

人民銀行公告[2004]第 18 号により、出入国時の人民元現金携帯額は、2万元以内に制限されています。

この金額を超過して携帯する場合の規定(手続きに関する規定)はなく、原則として、超過携帯は禁止されています。

2)外貨

経常項目外為業務ガイド・第 89 条により、入国時の外貨現金携帯額は 5,000 米ドル相当以内に制限されており、それを超過する場合は税関申告が必要です。ただし、同一日に複数回もしくは短期間に複数回入国を行う場合、2回目以降の入国時には、この金額枠(5,000 米ドル)はなく、金額の多寡を問わず、税関に申告が必要になります。

出国時は、入国時の税関申告がある場合は税関申告した金額(直近の入国時申告金額)が持ち出し可能金額となり、無い場合は 5,000 米ドルが携帯制限となります。

出国時の制限金額を超過する場合は、口座のある銀行に「携帯外貨出国許可証」の発行を申請する必要があります。携帯額が1万米ドルを超過する場合は、外貨管理局の許可が必要となります。

■ 2.ベトナム

(1)銀行口座開設

ベトナムでは、居住者、非居住者ともに口座開設は認められています。居住者が口座を開設する場合、パスポート、ビザ(もしくはレジデントカード)に加え、場合によっては労働契約書、労働許可書、給与明細の提示が必要となります。非居住者が口座を開設する場合は、パスポート、ビザ(もしくは入国スタンプ)の提示が必要となります(日本国籍者等にはベトナムの滞在期間が 15 日以内であればビザが免除されていますので、ビザの代わりに入国スタンプが確認されます)。

(2)入出国時の現金(外貨・ベトナムドン)携帯制限

ベトナム出入国時に、特定の手続きが要求されない携帯金額は以下の通りです。

1)ベトナムドン

中央銀行通達・第 15/2011/TT-NHNN 号により、出入国時のベトナムドン現金携帯額は、1,500 万ドン以内に制限されています。

この金額を超過して携帯する場合、税関での申告が必要となります。申告を行わずに超過携帯で出国を試みた場合、所持金は没収となります。

2)外貨

出入国時の外貨現金携帯額は、5,000 米ドル相当以内に制限されています。この金額を超過して携帯する場合、税関での申告が必要となります。ベトナム国内で銀行から引き出した外貨のうち、限度額 5,000 米ドル相当を超える額を国外に持ち出す場合は、当該銀行から許可証の発給を受け、それを携行する必要があります。申告を行わずに超過携帯で出国を試みた場合、所持金は没収となります。


中国・ベトナムにおける会計年度について

中国・ベトナムにおける会計年度の設定について解説します。

■ 1.中国

(1)会計年度の設定

会計年度に関わる関連規定は、「企業会計制度」および「企業所得税法」に以下の通り規定されています。

● 企業会計制度第7条

会計計算は会計期間を区分し、期間に応じて決算し、財務会計報告を作成しなければならない。会計期間は年度、半期、四半期および月度に区分するが、これは「暦年」により確定するものとする。

● 企業所得税法第 53 条

企業所得税は納税年度別に計算する。

納税年度は、西暦1月1日から 12 月 31 日までとする。

以上の通り、中国では、会計年度は暦年に限定され、これ以外の会計年度を設定することはできません。

(2)期中開業・清算の場合

開設・閉鎖・組織変更時の会計年度に関しては、企業所得税法第 53 条に次の通り規定されています。

● 企業が1納税年度の途中で開業するか、または経営活動を停止し、当該納税年度の実際の経営期間が 12 カ月に不足する場合、その実際の経営期間を1つの納税年度としなければならない。企業が清算する場合は、清算期間を1納税年度としなくてはならない。

つまり、会計年度の途中で開業する場合でも 12 カ月を超える会計年度は設定できず、12 月末で、いったん決算・申告納税を行う必要があります。

(3)会計監査

会社法第 164 条には、「会社は各会計年度終了時に財務会計報告書を作成し、また法に基づき会計事務所の監査を経るものとする」と規定されています。

ただ実務上は、非上場・非金融などの内資企業は、公認会計士監査を要求されていませんし、外資企業も 2014 年に開始された商事登記制度改革(法人の登記管理制度の合理化を認める全国的な試み)の一環で、会計監査が免除されるようになりました。

とはいえ、日本の親会社側の要求、配当時の必要性(匯発[2016]7号により、5万米ドルを超過する配当の対外支払いは、会計監査報告書の提示が必要)により、実務上も会計監査を受けるのが通常です。

■ 2.ベトナム

(1)会計年度の設定

会計年度に関わる関連規定は、「会計法」および「法人税法」に以下の通り規定されています。

● 会計法第 12 条

会計期間は、年度、四半期および月度に区分するが、これは「年度」により確定するものとする。年度の会計期間は暦年が原則であるが、12 月末日以外の各四半期末日(3月・6月・9月末日)を年度末とする会計期間を選択する場合、財務局および税務局への通知が必要である。

● 法人税法第5条

法人税は納税年度別に計算する。

納税年度は、暦年または会計年度とする。

以上の通り、ベトナムでは、会計年度は暦年が原則ですが、3月・6月・9月末日を年度末とする会計年度を設定することも可能です。

(2)期中開業・清算の場合

開設・閉鎖・組織変更時の会計年度に関しては、会計法第 12 条に次の通り規定されています。

● 企業が1納税年度の途中で開業するか、または経営活動を停止し、当該納税年度の実際の経営期間が 90 日に不足する場合、初年度の会計期間を翌年度の会計期間と合算すること、および最終年度の会計期間を前年度の会計期間と合算することが可能であり、会計年度は、最大 15 カ月未満とされています。

つまり、会計年度の途中で開業し、経営期間が 90 日以上の場合は、会計年度末でいったん決算・申告納税を行う必要があります。

(3)会計監査

独立監査法第9条には、「法定監査の対象企業は、年度財務諸表の監査を受けなければならない」と規定されており、同法第 37 条では、対象企業として外資企業が含まれています。内資企業の場合、金融事業者と公開会社等が対象となりますが、外資企業の場合、このような限定は無いため、全ての外資企業が会計監査の対象となります。

以上