【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.76

2022-10-11

【中越ビジネスマニュアル 第 76 回】

中国・ベトナムにおける銀行口座について

中国・ベトナムの銀行口座管理を解説します。

■ 1.中国

(1)銀行口座の概要

中国では、銀行口座の種類が細分化されています。

これは外貨管理上、経常項目は原則自由、資本項目は原則制限という位置付けがあるため、金に色をつけるために、来源・用途に応じて口座の種類を分けているものです。

外貨口座の種類は、外貨経常口座(経常項目口座)、資本金口座(資本項目口座)、外債口座(資本項目口座)、借入金口座(資本項目口座)などがあります。人民元口座については、人民元基本口座、人民元一般口座があり、また、借入金口座・外債口座・資本金口座などの資本項目口座も、人民元口座があります。

口座内資金使用の重要なポイントとして、経常項目口座内資金は、合法的な用途であれば自由に使用できますが、資本項目口座の内容は、当該企業の営業許可の範囲に合致する必要があります。よって、給与、自社オフィス購入資金、仕入れ代金などの支払いは問題ありませんが、財テク商品の購入や投資不動産の購入は認められません。

(2)代表的な口座

代表的な口座は、以下の通りです。

1)外貨経常口座(外匯帳戸)

外貨の経常項目収入の受領、経常項目支払いに使用される口座です。口座内資金の換金は、自由に認められます。

2)資本金口座(資本金帳戸)

出資者からの資本金の払い込みを受けるための専用口座です。入金項目は資本金の受領に限定されており、口座残高が無くなった段階で閉鎖する必要があります。

3)借入金口座(貸款帳戸)

借入金口座は外貨借入用の専用口座で、借入金額を上限とします。

4)人民元基本口座・人民元一般口座

基本口座は現金の引き出しが認められる口座であり、1社1口座に限定されます。一般口座は複数口座の開設が可能です。

■ 2.ベトナム

(1)銀行口座の概要

ベトナムでも、銀行口座の種類は分かれていますが、中国ほど細分化されていません。外貨管理上、経常項目は原則自由、資本項目は原則制限という位置付けは同様です。

外貨口座の種類は、外貨経常口座(経常項目口座)、資本金口座(資本項目口座)となります。中国のように、資本項目口座は細分化されていませんので、配当支払いや国外からの借入金の入金・返済・利払いなどは、資本金口座を通して行います。

また、ベトナムドン口座についても、外貨口座と同様に経常口座(経常項目口座)、資本金口座(資本項目口座)がありますが、資本金口座は1社につき1口座の開設しか認められていませんので、外貨もしくはベトナムドン口座にて1口座を選択します。外資企業の場合、外貨での資本金拠出、ベトナム国外からの外貨での借り入れが一般的ですので、通常は外貨の資本金口座を開設します。外貨およびベトナムドンの経常口座は複数の開設が可能です。

(2)代表的な口座

代表的な口座は、以下の通りです。

1)外貨経常口座

外貨の経常項目収入の受領、経常項目支払いに使用される口座です。口座内資金の換金は自由に認められます。ただし、ベトナム国内での外貨振込は原則認められていませんので、外貨口座からの支払いもベトナムドンにて振込となります。例外として、EPE(輸出加工企業)の支払いや外国人の給与支払いは外貨での振込が認められています。また、外貨での現金引き出しも原則として認められておらず、国外出張などに限定されています。

2)ベトナムドン経常口座

ベトナムドンの経常項目収入の受領、経常項目支払いに使用される口座です。国外への対価支払いに際しては、外貨にて振り込むことは可能ですが、ベトナムの貿易赤字が続いていた 2000 年代初頭は、銀行も外貨が不足しており、経常口座のベトナムドンを外貨に換金できずに振込が適時に行えないケースが散見していました。ドルでの振込に際して、いったんユーロを購入し、ユーロからドルを調達するなどの苦労のある時代を経て、現在の貿易黒字化に伴い、そのような不便は無くなってきています。

3)資本金口座

出資者からの資本金の受領、配当支払い、国外からの借入金の入金・返済・利払いなどの資本項目に限定されており、1社1口座に限定されます。

中国・ベトナムにおける外貨口座の開設について

外貨口座の開設手続きについて解説します。

■ 1.中国

中国の代表的な外貨口座の開設手続きは、以下の通りです。

(1)外貨経常口座

外貨経常口座は、開設に際して外貨管理局の許可は不要(事後届出のみ)ですので、企業のニーズに応じて複数の口座が開設できます。かつては、外貨経常口座の開設に際しては、外貨管理局の許可取得が必要であり、会社登記地に一口座のみという制限がありました。これが、一般区(非保税区)企業については「経常項目の外貨管理政策を調整する事に関する通知(匯発[2006]19 号)」、保税区域の企業については「保税監管区域外貨管理弁法(匯発[2007]52 号)」により撤廃され、開設申請書・営業許可証・企業認証番号証を銀行に提示すれば開設ができるようになっています。

(2)外貨資本項目口座

資本項目に該当する外貨口座には、資本金口座、借入金口座、外資企業設立前準備口座、保証金口座等があります。

以前は、全ての資本項目口座の開設について外貨管理局の許可が必要でしたが、「直接投資に係る外貨管理政策のさらなる改善及び調整に関する通知 (匯発[2012]59 号)」により、資本金口座、外資企業設立前準備口座、保証金口座等については、許可が不要となりました。

1)資本金口座

設立許可取得、仮営業許可証取得後、外貨登記証を外貨管理局で登録することにより、資本金口座の開設が認められます。

なお、会社開設前準備口座を開設していた場合は、資本金口座開設後にその残高を振替えて、準備口座は閉鎖する必要があります。

2)外債口座・借入金口座

外債口座は融資契約を締結し、外貨債務登記を行った上で、開設します。

中国内の金融機関から外貨融資を受ける場合は、外貨債務登記が行われませんので(中国外からの融資の場合のみ外貨債務登記が必要)、この場合は融資する銀行がそのまま借入金口座の開設手続きを行います。

■ 2.ベトナム

ベトナムの代表的な外貨口座の開設手続きは、以下の通りです。

(1)外貨経常口座

外貨経常口座は、開設に際しての中央銀行への許可および事後届出は不要ですので、企業のニーズに応じて複数の口座が開設できます。外貨経常口座の開設に際しては、原則として、開設申請書、投資登記証明書・企業登記証明書・法的代表者の身分証明書(外国人の場合はパスポート)の公証済み写し、定款の写しを銀行に提示すれば開設ができるようになっています。銀行によっては、その他の書類の提示を求められる場合もあるため、口座開設予定の銀行に直接確認する必要があります。

(2)外貨資本項目口座

資本項目に該当する外貨口座には、資本金口座、外資企業設立前準備口座があります。これらの口座開設に際しても、中央銀行への許可および事後届出は不要です。

1)資本金口座

資本金口座の開設に際しては、開設申請書・経常口座開設と同様の必要書類を銀行に提示すれば開設ができるようになっています。経常口座の開設と異なる点は、一口座のみ開設が認められる点です。

2)設立前準備口座(非居住者口座)

設立前準備口座の開設に際しては、開設申込書、企業登記証明書(日本法人の場合は履歴事項全部証明書)・印鑑登録証明書の公証・認証済み写し・ベトナム語訳を銀行に提示すれば開設ができるようになっています。

従前は、現地法人設立前の投資者による立替払いは、設立前準備口座を通して支払う必要がありましたが、2019 年9月6日以降は、投資者はこの口座を利用せずに、直接海外から支払うことも認められています。

設立前準備口座から、現地法人のための支払を行い、この立替金を現地法人の資本金や借入金に振り替えることもできるため、経常性、資本性の両側面を有する口座といえます。

以上