【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.73

2022-08-19

【中越ビジネスマニュアル 第 73 回】

中国・ベトナムにおける外資企業の減資について

■ 1.中国

中国では過去には、外資企業の減資は極めて困難でしたが、徐々に規制が緩和され、特に 2020 年1月1日の外商投資法施行(外資三法の廃止)以降、事例が増えています。
規制緩和の経緯は、以下の通りです。

(1)禁止から原則禁止に(01 年)

独資企業法実施細則・合資企業法実施条例が改定され、経営期間中の登録資本金減少を「禁止」、「原則禁止であるが、確実に実施する必要がある場合は、認可機関の審査を受ける」という内容に変更されました。

(2)許可から備案(16 年)

「外商投資企業設立・変更備案管理暫定弁法(商務部令 2016 年第3号)」により、非ネガティブリスト外資企業については、商務主管部門の許可は不要(備案に変更)となりました。この結果、非ネガティブリスト外資企業であれば、商務主管部門は減資の審査をしないこととなり、市場監督局に審査権限が実質的に移管されました。

(3)外商投資法施行後(20 年1月1日)

外資三法が廃止され、外商投資法が施行されたため、減資を直接的に禁止する条項は無くなりました。さらに、商務主管部門の許可・備案は不要となったため(ネガティブリスト企業は例外)、市場監督局で直接減資を申請ができるようになりました。
現在の減資に関する実務運用を、上海市市場監督局に確認した結果、「債務超過になっていない、かつ減資後も経営上に必要な流動資金も確保できている場合、減資を認める」という回答でした。実際に、外資企業の減資事例は増えています。
以上の通り、減資は徐々に現実的な選択肢となってきていますが、減資の前提は財務状況がよいこと(減資により、債務弁済に影響を与えないこと)です。よって、欠損填補のために資本金を減額する無償減資は有償減資に比較して難易度が高い状況です。

■ 2.ベトナム

ベトナムでは、減資の可否が会社形態により区別されていましたが、15 年7月1日施行の企業法改正以降は、有限会社・株式会社ともに減資が認められています。

(1)減資可否の区別撤廃(15 年)

15 年7月1日施行の企業法改正以前は、二人以上社員有限会社(出資者が2名以上の有限会社)、株式会社の減資は認められていましたが、一人社員有限会社(出資者が1名の有限会社)の減資は認められていませんでした。同法改正により一人社員有限会社の減資が認められることになり、会社形態による区別は撤廃されました。21 年施行の企業法改正においても、この点は踏襲されています。

(2)減資が認められるケース

減資が認められるのは、3つのケースに限定されています。<1>持ち分割合に応じた払い戻し<2>会社による持ち分の買い取り<3>資本金全額の期限内払い込みの未達――。
減資は、最高意思決定機関(出資者総会・株主総会等)の決議を得た上で、計画投資局等で登記を行う必要があります。各ケースで求められる必要条件を満たした上で、財務諸表を提出し、財務状況の証明(減資後、債務弁済に支障が生じないこと)を行います。
以上の通り、減資を行える対象企業の増加、減資が認められる3つのケースの明示により、ベトナムにおいても減資は徐々に現実的な選択肢となってきています。

中国・ベトナムにおける外資生産型企業の設立について

外資生産型企業設立のポイントについて解説します。

■ 1.中国

(1)企業分類

生産型企業の場合、業種も多岐に分かれますので、それがどのような位置付けであるかを確認する必要がありますが、それが「外商投資奨励目録(国家発展改革委員会・商務部 2020 年第 38 号)」と「外商投資参入特別管理措置;ネガティブリスト(国家発展改革委員会・商務部 2021 年第 47 号)」です。
奨励分類外資企業の場合、総投資の範囲内で輸入する設備機械の関税免除措置が適用されます。また、ネガティブリスト外資企業の場合、出資比率制限、参入条件など、各種の制限対象となります。なお、外商投資法の施行(2020 年1月1日)により、非ネガティブリスト企業については、商務主管部門での設立許可・備案(届出)は不要となっています。

(2)工業用地の使用

中国の工業用地も不足気味になっている状況であることから、企業進出が成熟している地域の場合、優良企業に対して優先して、使用を認める傾向にあります。
優良企業の判定は、奨励分類業種か否か、企業規模(世界 500 強企業等)、環境対応、付加価値などにより判定されます。
また、発展改革委員会でのプロジェクト審査(工業用地を使用するに適切なプロジェクトか)、環境保護局での環境評価などのステップが必要となります。

(3)資本金

生産型企業の資本金は、使用する工業用地に応じて(土地使用権の購入・賃借にかかわらず)、土地強度(平米当たりの投資総額要求)が決定されており、必要となる最低投資総額が決定されます。それにより要求される総投資額に、総投資と資本金の比率(工商企字[1987]38 号)を乗じて、必要となる資本金額を決定します。
なお、資本金の払い込み期限は、14 年の会社法改定により廃止されましたので、定款に定めた条件(経営期間内の払い込み、というような記載も可能)で、随時払い込むことができます。

(4)加工貿易

生産型企業が加工貿易(保税輸入原材料を使用した輸出加工)を行う場合、税関に外国企業との契約書を提示して、加工貿易手冊・帳冊の取得申請を行う必要があります。

■ 2.ベトナム

(1)企業分類

生産型企業の場合、業種も多岐に分かれますので、それがどのような位置付けであるかを確認する必要がありますが、それが「投資法・第 61/2020/QH14 号・第6条・第7条・第9条・第 15 条・第 16 条・別表4」です。
投資奨励事業・投資奨励地域に投資する企業の場合、法人税率の優遇・減免、固定資産や原材料にかかる輸入関税の免除、土地使用料等の減免措置が適用されます。また、条件付き投資分野へ投資する企業の場合、出資比率制限、参入条件など各種の制限対象となります。

(2)工業用地の使用

以前は認められていた工業団地以外の場所への進出は、環境保護の観点から認められなくなっており、工業団地への進出を前提に設立計画を立てる必要があります。また、企業進出が成熟していない地域の場合、染色業等相対的に環境負荷の高い企業を受け入れる工業団地もあるため、各工業団地の特色を把握し、進出先の絞り込みを行います。

(3)資本金

生産型企業の資本金・最低投資総額への規制は原則ありませんが、条件付き投資分野に該当しますと、業法等により最低資本金額が定められている場合がありますので事前確認が必要です。
なお、有限会社・株式会社の資本金の払い込み期限は、14 年改正企業法により、企業登記証明書(ERC:Enterprise Registration Certificate)の発行日から 90 日以内に統一され、21 年施行の企業法においても同様の扱いとなっています(同法・第 47 条・第 75 条・第 113 条)。これは、生産型企業も同様です。

(4)輸出加工企業

投資奨励事業・投資奨励地域の条件を満たさない生産型企業が原材料輸入等の保税措置を得るためには、投資計画局、工業団地管理委員会等のライセンス発行機関から、輸出加工企業(EPE:Export Processing Enterprise)としての投資登記証(IRC:Investment Registration Certificate)を取得する必要があります。

以上