【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.68

2022-05-24

【中越ビジネスマニュアル 第 68 回】

■ 中国・ベトナムにおける対外借入(株主ローン等)について

現地法人の資金調達方法としての外債(対外借入)管理について、解説します。

1.中国

(1)対外借入方法の選択

中国の対外借入管理方法は、以下の2種類からの選択適用となります。

  • 投注差方式
    • 2003 年から開始された方法で、対外借入枠を定款に書かれた「投資総額と資本金の差額」に制限する方法です。
  • マクロプルーデンス方式
    • 一定の調整を加えた対外借入金額を、前年度末の自己資本の2倍以内に制限する制度です。なお、新制度であるマクロプルーデンス方式が開始されたのが 16 年5月3日ですので、それ以降に実行する最初の対外借入時に、所管の外貨管理局にいずれの方法を選択するかを届出て、継続適用します。
(2)借入方法の注意点

1)投注差方式

比較的シンプルな方法ですが、外貨建て短期借入は、返済すれば残高が復活しますが、それ以外の借入(外貨建て中長期借入および全ての期間のクロスボーダー人民元借入)は、(累計管理であり)返済しても借入枠が復活しない点に注意が必要です。

2)マクロプルーデンス方式

この方法は、通貨・借入期間にかかわらず、全て残高管理ですので、返済すれば借入枠は復活します。ちなみに、借入枠・調整済借入額共にいくつかの指数が設定されており、それが政策的に頻繁に調整されるという注意点があります。

  • 借入枠
    • 対外借入可能額=自己資本 × 融資レバレッジ率(一般企業は2)× マクロプルーデンス調節係数(1)

以上の結果、自己資本の2倍となります。 ちなみに、融資レバレッジ率は、制度開始時は1でしたが、現在では2となっています。 マクロプルーデンス調節計数は制度開始から、1 →1.25→ 1と調整されています。

  • 調整済借入額
    • 調整済借入残高=クロスボーダー人民元・外貨対外借入残高 × 期間リスク調整(短期は 1.5、中長期は1)× 類型リスク調整(1)+外貨対外借入残高 × 為替リスク調整(0.5)

以上のように、「短期借入の場合は、実際の借入額の 1.5 倍の枠を消費する」。さらに、「(人民元でなく)外貨借入の場合は、借入額の 0.5 倍を加算する」必要があります。

2.ベトナム

(1)対外借入方法

ベトナムの対外借入管理方法は、契約期間が1年超となる中長期借入に関してのみ、投注差方式が適用されます。契約期間が1年以下となる短期借入は、投注差方式の対象外ですので、企業の裁量によりその実行が可能です。

  • 投注差方式
    • 借入枠を、投資登記証に書かれた「投資総額と資本金の差額」に制限する方法ですが、対外借入のみならず、国内借入もその対象となる点が特徴です。
(2)借入方法の注意点

1)投注差方式 対外借入の場合は、契約締結日から 30 日以内かつ契約実行前に中央銀行での登録が求められますが、国内借入の場合は、中央銀行での登録は不要です。残高管理ですので、返済すれば借入枠は復活します。

2)中央銀行への四半期報告 対外借入の場合、中央銀行への四半期報告が求められており、登注差方式の対象外である、1年以下の短期借入もその対象となっています。報告書の提出期限は、四半期翌月の5日です。

■ 中国・ベトナムにおける外資企業の国内借入について

国内の銀行、一般企業から借り入れる際の注意点を解説します。

1.中国

(1)銀行借入

中国内企業の国内銀行からの借入は、外貨・人民元共に可能です。国内借入は、外債(親子ローンなど)とは異なり、総量規制は適用されません。 国内で借り入れた外貨は、人民元に換金することはできませんので、用途に合わせて借入通貨を選択する必要があります。

また、外資企業が中国内銀行から借り入れるに際して、親会社が保証を差し入れる場合でも、同様に総量規制の対象とはなりませんが、差入時に偶発債務登記が必要であり、保証履行時に、外債の総量枠規制(投注差もしくはマクロプルーデンス)が実施されます(匯発[2005]74 号)。 「クロスボーダー担保外貨管理規定(匯発[2014]29 号)」には、外資企業(借入企業)の前年度の会計監査報告書に記載された純資産金額は、総量規制の対象外となることが規定されていますので、純資産金額を超過した金額が総量規制の対象となります。

なお、法律上の明記はありませんが、外貨管理局は、純資産金額が総量規制から控除されるのは投注差方式を採用している場合だけであり、マクロプルーデンス方式においては、既に十分な総量が提供されているため、この適用対象にはならず、保証履行額全額が総量規制の対象であるとコメントしています。

(2)企業間融資

「貸付通則(人民銀行令 1996 年第2号)」では、中国内の非金融企業間の直接融資は禁止されています。このため、中国内の一般企業(非金融企業)の融資行為は、通貨を問わず(外貨・人民元双方)認められません。

中国の非金融企業が実質的な貸付を行う場合、委託貸付という、銀行を仲介した間接融資制度を採用します。この制度を使えば、実質的な企業間融資が可能となります。

2.ベトナム

(1)銀行借入

ベトナム内企業の国内銀行からの借入は、外貨・ベトナムドン共に可能です。ただし、外貨収入がない(ベトナム国内販売のみを行う)企業の場合、外貨での返済能力は無いため、外貨借入は認められません。

ベトナムでの国内借入は、外債(親子ローンなど)と同様に、契約期間が1年超となる中長期借入には総量規制が適用されますので、借入枠は投資登記証に書かれた投資総額と資本金の差額に制限されます。ただし、中央銀行への登録が不要な点は、外債の扱いと異なっています。

(2)企業間融資

ベトナム内企業は登記された事業内容以外の活動は行えませんので、ベトナム内の一般企業(非金融企業)の融資行為は、通貨を問わず(外貨・ベトナムドン双方)認められません。

以上