中国・ベトナムにおける資本金の払い込みと親子ローン・法人のオフィス要件について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】 ダイジェスト版Vol.124
2026-09-14【中越ビジネスマニュアル 第124回】
中国・ベトナムにおける資本金の払い込みと親子ローンについて
中国・ベトナムに現地法人を設立した際の、資本金の払い込みと親子ローンについて解説します。
1.中国
(1)資本金払い込み
登録資本金の払い込みは、会社設立5年以内に完了する必要があります。
資本金の払込期限は、会社法に規定されていますが、2014年3月1日の会社法改定で、いったんは無期限と規定されました。
これにより、会社定款には「経営期限内の払い込み」と記載し、会社のキャッシュフローに応じて払い込むのが通常となっていましたが、2024年7月1日の会社法改定により、5年以内の払い込みが義務付けられました。
(2)親子ローン
親子ローン(海外の親会社から外資企業への貸し付け)は、外貨管理局での外債登記が必要であり、総量規制の対象となります。
総量規制は、投注差方式(2003年より開始)、マクロプルーデンス方式(2016年5月3日開始)の2種類で、2016年5月3日以降の最初の外債借入時に、いずれかの方法を決定する必要があります。
投注差方式は、定款上の総投資から資本金を控除した差額に外債額を限定する方式ですが、総投資と資本金には一定の比率が設定されているので、借入枠が小さくなることと、外貨建て短期外債のみは返済すれば借入枠が復活しますが、その他は返済しても枠が戻らないというデメリットがあります。
マクロプルーデンス方式は、調整済み借入金を、前年度の会計監査報告書の純資産の3.5倍以内(現時点。枠は随時調整される)とする制度で、投注差方式よりも枠が大きいことと、返済すれば残高が復活する利点があります。
一方、会社設立初年度は借り入れが認められないことや、中長期借り入れの場合は国家発展改革委員会での備案(届け出)が必要など、煩雑な手続きが要求される問題があります。
2.ベトナム
(1)資本金払い込み
登録資本金は、企業登記証明書(ERC)の発行日から90日以内に払い込む必要があります。
会社法では90日以内の払い込みが義務付けられており、期限までに払い込みが完了しない場合は、未払込額に応じて登録資本金の減額登記を行う必要があります。
また、行政罰の対象となる可能性があります。
なお、外資企業の場合は、資本金の払い込みは直接投資資本口座(Direct Investment Capital Account:DICA)を通じて送金する必要があり、送金記録は将来の利益送金や資本取引の際の重要な証憑となります。
(2)親子ローン
親子ローン(海外親会社からベトナム現地法人への貸し付け)は、外国借り入れとして管理されます。
借入期間が1年を超える中長期借り入れについては、ベトナム中銀(SBV)への登録が義務付けられています。
一方、短期借り入れ(1年以内)は原則として事前登録は不要ですが、1年を超えて借り入れを継続する場合には登録が必要となります。
また、中長期借り入れ(ベトナム国内借り入れを含む)に対しては上限が定められており、投資登記証明書(IRC)記載の総投資額から資本金を差し引いた差額が借り入れ可能な枠となります。
中国・ベトナムにおける法人のオフィス要件について
法人のオフィス要件について解説します。
1.中国
(1)オフィスの最低要件
中国では、会社設立に際して物理的なオフィスを有すること、一住所に一組織のみの登記が可能であること、オフィスには複数の机が必要であることなどの管理が実施されていましたが、現在では緩和されています。
一住所一組織の原則は、市場監督局が、一住所(権利証発行単位)に複数組織の登記を受理しないことによるものでしたが、2014年に開始された登記制度改革により規制緩和されました。
実施内容は地域(市)によって違いますが(広東省では柔軟に受理されるものの、上海では厳格な出資関係が要請されるなど)、現在では多くの地域で一住所多組織が認められています。
また、オフィスの机は健全な会計処理を行う要件として、税務機関の現場検査で確認されていましたが(会計法では会計係と出納係が必要)、現在では会社設立時の税務機関の検査はありません。
(2)制度と実務の違い
制度上は上記(1)の通りでしたが、実際には物理的なオフィスを借りず、バーチャルオフィスを使用するケースがありました。
このようなバーチャルオフィスは、税務機関の訪問時(日時は事前通知される)には一時的に物理的なオフィスを用意することで、現場検査をクリアしていました。
バーチャルオフィスは、法的にはグレーと位置付けられていましたが、現在では「企業集中登記」「集群注冊託管」という形で登記住所貸し制度が合法化されました(2024年より)。登記住所貸しを利用する場合は、危険化学品取り扱い資格などの特別経営許可を取得することはできませんが、主にIT、ソフトウエア、コンサルティングなどの業務に従事する場合は有用な選択肢となります。
ただ、銀行口座開設に際して銀行の担当者がオフィスを現場確認しますので、結局は「他の場所に実際の経営場所を用意する(集中登記場所で会社登記をし、他の場所で経営を行う)、もしくは物理的なオフィスを一時的に用意してもらう」などの従来通りの手配が必要です。
2.ベトナム
(1)オフィスの最低要件
ベトナムでは、外資企業の会社設立に際して物理的なオフィスを有すること、原則として一住所に一組織のみの登記が可能であること、シェアオフィスの場合は当該企業専用の机が必要であることなどの管理が実施されています。
一住所一組織であることが原則ですが、同じ住所に関連企業や取引先企業の登記を行うことは実務上認められています。
例えば、A社が101号室を賃借しており、その一部をB社の住所として設立申請に使用したい場合、101号室を101―1号、101―2号などに区分して賃貸人と契約を締結し直すことで、実質的に同一住所の複数組織での使用が可能となります。
また、シェアオフィスでの登記申請では、特定の机が当該企業の専用であることを確認するため、管轄当局が写真の提出を求めることがあります。
(2)制度と実務の違い
制度上は上記(1)の通りですが、実際には物理的なオフィスを借りず、バーチャルオフィス(専用の執務スペースや専用机を伴わないもの)を使用するケースはあります。
特にベトナム資本の企業に関しては、オフィスの賃貸借契約書がなくとも企業登記できることもあるため、バーチャルオフィスを使用するケースは散見しています。
ただし、外国企業の駐在員事務所や外資法人の登記に際しては、管轄当局がオフィスの実在性に関する審査を行いますので、実務的にはバーチャルオフィスでの登記は困難です。
また、ベトナムでは中国とは異なり、銀行口座開設に際して銀行の担当者がオフィスを訪問して実在性を確認する運用は一般的ではありません。
中国では制度改革によりオフィス・住所要件の緩和が進んでいる一方、ベトナムでは依然としてオフィスの実在性が重視されており、特に外資企業については慎重な運用が続いています。
以上