中国・ベトナムにおける非貿易項目の対外送金・親会社保証による国内借入について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】 ダイジェスト版Vol.123
2026-08-19【中越ビジネスマニュアル 第123回】
中国・ベトナムにおける非貿易項目の対外送金について
中国とベトナムの非貿易項目対外送金について解説します。
1.中国
(1)対外送金の原則
中国からの非貿易項目対外決済の根拠となるのは、国家税務総局・国家外貨管理局2013年第40号と匯発[2020]14号となります。
大原則は、対外送金額が5万米ドルを超過する場合、所管税務機関での備案(届け出)が要求される(実質的な審査が必要となる)ことで、備案が受理された場合に発行される備案証を銀行に提示すれば、対外送金が認められます。
ただし、コミッション・賠償金・保険金などは、金額の多寡にかかわらず所管税務機関の審査は不要で、銀行審査のみとなります。
(2)送金内容に基づく違い
1)配当
配当に対しても5万米ドルルールは適用されますが、原則として適切な配当で備案が通らないことはありませんので、源泉徴収後に対外送金は可能です。
2)業務委託料(役務費)
役務提供者が提供した時間と単価に応じて価格を設定するのが原則です。
5万米ドルルールの適用対象となります。
3)コミッション
仲介手数料で、商売成立の対価として位置づけられていますので、成立した売り上げにコミッション率を乗じて対価を設定します。
コミッションの場合は、5万米ドルルールは適用されませんが、貿易取引に関連する支払いのみ対外送金可能です(中国国内取引に付随するコミッションの対外支払いは不可)。
4)ロイヤルティー
知的所有権の使用許諾の対価です。
5万米ドルルールの適用対象になりますが、それ以前に(契約締結後)、商務主管部門で技術輸入登記が必要で、商務主管部門の手続き時に、対価の妥当性も審査されます。
2.ベトナム
(1)対外送金の原則
非貿易項目送金に関しては、「外国為替法(28/2005/PL-UBTVQH11)」に基づき、経常項目に関わる送金は原則自由とされていますので(同法第2章第6条)、銀行に送金内容に関する証憑を提示することで対外送金ができます。
(2)送金内容に基づく違い
1)配当
配当に際しては、法定準備金の積み立ては求められていません(金融業等は除く)。
送金実行予定日の7営業日前までに管轄税務局への書面での通知が必要です。
銀行での送金手続きには、この通知書のほか、監査済み財務諸表、法人税確定申告書・納付書、配当に関する社員総会・株主総会決議書等の提出が必要です。
2)立替金
国外で発生した立替金の決済も認められます。
銀行には立替金契約書、請求書等を提示します。
また、国外で給与支払いが立て替えられた場合などは、送金前に個人所得税の源泉徴収を行う必要があるため、源泉徴収証明書等の提示が求められる場合もあります。
なお、これらの費用を法人税法上の損金とするためには、ベトナム法規において求められるインボイスと同等の内容が記載された領収書、証憑のベトナム語訳等も必要となります。
ベトナム法人設立前の立替金の送金可否に関しては、各銀行で扱いが異なるため、事前の確認が必要です。
3)業務委託料(役務費)
契約書、請求書を銀行に提示すれば対外送金が認められます。
ベトナム国内でサービス提供がなされた場合、外国契約者税が源泉徴収されます。
4)コミッション
ベトナムの世界貿易機関(WTO)コミットメントにおいて、外資企業に対してコミッションビジネスは開放されていないことから、外国企業がベトナム国内販売に係るコミッションの受け取りができるかは不透明です。国外販売に係るコミッションに関しては、契約書、請求書を銀行に提示すれば対外送金が認められると考えられます。
5)ロイヤルティー
フランチャイズ・商標権は商工省、技術移転は科学技術省での登録が求められます。
これらの登録書類に加え、契約書、請求書を銀行に提示します。
外国企業はベトナムから所得を得ることになるため、外国契約者税の源泉徴収も必要です。
中国・ベトナムにおける親会社保証による国内借入について
大企業の子会社であっても、現地法人の信用だけで借り入れをするには一定の限界があります。
今回は、親会社保証による借り入れについて解説します。
1.中国
(1)保証付き借り入れ
中国の外資企業が中国内の銀行から借り入れする場合、総量規制の対象とはなりません(注)。これは、親会社保証付きの借り入れであっても同様です。
(注):中国法人が国外から対外借り入れをする場合、外債登記が必要であり、登記できる金額には一定の制限があります。総量規制においては、企業自身が投注差方式(2003年から開始された方法で、借入枠を定款の総投資と資本金の差額に制限する制度)とマクロプルーデンス方式(借入枠は随時変動されるが、現時点では調整済借入額を前年度の会計監査報告書の自己資本の3.5倍以内に制限する制度)のいずれかを選択し、継続適用する必要があります。
(2)保証履行
上記(1)の通り、親会社(境外企業)の保証付き借り入れでも総量規制の対象とはなりませんが、現地法人が返済不能になり、国外機構が保証履行を実行する場合には、総量規制の対象となり、登記可能な額は当該外資企業の総量規制の範囲内に制限されます。
「クロスボーダー担保外貨管理規定(匯発[2014]29号)」では、借入企業が投注差方式を採用している場合、前年度の会計監査報告書に記載された純資産金額は、保証履行をしても総量規制の対象からは除外されることが規定されています(保証履行額が前年度の純資産金額を超過した部分が総量規制の対象)。一方、法律上の明記はありませんが、マクロプルーデンス方式を採用している場合は、この適用はありません。
2.ベトナム
(1)保証付き借り入れ
ベトナムの外資企業がベトナム内の銀行から借り入れする場合、契約期間が1年超となる中長期借り入れは借入限度額規制の対象となります。借入限度額は、原則として投資登記証(IRC:Investment Registration Certificate)に記載された総投資額と資本金の差額を基準として管理されます。これは、親会社保証付きの借り入れか否かを問いません。
また、国内借り入れの場合、中央銀行への登録は不要ですが(注)、月次での借り入れ・返済状況の報告が求められます。
(注):ベトナム法人が国外から対外借り入れをする場合、ベトナム国内借り入れと同様に、契約期間が1年超となる中長期借り入れは借入限度額規制の対象となります。なお、対外借り入れの場合、中央銀行への登録も必要となります。
(2)保証履行
上記(1)の通り、借入限度額規制の要件に保証の有無は関係ありません。また、親会社保証の履行により借入債務が親会社に移転した場合でも、中国のように保証履行時点で追加的な借入限度額規制が適用される明確な規定はありません。
以上