中国・ベトナムにおける個人所得税・非居住者の役職兼務について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.116
2026-01-13【中越ビジネスマニュアル 第 116 回】
中国・ベトナムにおける個人所得税について
中国とベトナムの個人所得税について解説します。
1.中国
(1)根拠法
2019年1月1日に施行された「個人所得税法」が根拠となります。
(2)居住者・非居住者の課税方法
個人所得税の課税年度は暦年(1月1日~12月31日)で、18年末まで施行されていた旧法では月次で課税所得を確定しましたが、19年の税制改正により、居住者は年度で所得を確定する方法に変更されました。 非居住者は依然として月次で申告所得を確定します。 居住者と非居住者の課税方法は以下の通りです。
●居住者
中国内に住所がある個人(中国公民を指す)および住所はない(外国人を指す)が納税年度に累計満183日中国内居住した個人を指します。
居住者は、全世界所得に対して課税されますが、外国人居住者の場合、満183日滞在連続6年未満の場合は、国外源泉所得に対する課税が免除されます(実施条例第4条)。
外国人の6年の起算は19年1月1日以降開始しますので、19~24年度に連続30日超の出国(もしくは累計して滞在日数が183日未満となるような出国)がなく、連続居住を続けている外国人居住者は今年度から全世界所得税に切り替わっています。
●非居住者
年間中国滞在が183日未満の外国人個人が該当し、中国源泉所得に対して課税されます。
(3)基礎控除と特別付加控除
居住者に対しては、年間6万元の基礎控除が認められます。 その他、税制改正により、特別付加控除(子女教育費、継続教育費、大病医療費、住宅ローン金利、住宅家賃、老人扶養など)が認められました。
ただ、外国人に対する優遇(財政部・税務総局公告2023年第29号により、現時点では27年末まで認められている家賃免税などの優遇)を享受している外国人は、特別付加控除の適用は認められません。
(4)税率
3~45%の超過累進課税となります。
2.ベトナム
(1)根拠法
09年1月1日に施行された「個人所得税法」が根拠となります。
(2)居住者・非居住者の課税方法
個人所得税の課税年度は、原則として暦年(1月1日~12月31日)となりますが、例外として、暦年では居住者に該当しないが、ベトナムへの初めての入国日から12カ月間に183日以上ベトナムに滞在する場合、最初の課税年度は入国日から1年間となります。 居住者と非居住者の課税方法は、以下の通りです。
●居住者
以下のいずれかに該当する個人を指しますが、課税年度におけるベトナムでの滞在日数が183日未満であり、他国の税務当局が発行した居住者証明書等で、他国の居住者であることを証明できる場合は除きます。
1)暦年もしくはベトナムへの初めての入国日から12カ月間以内に183日以上ベトナムに滞在する個人
2)ベトナム居住法に基づく恒久的居住地に関する登記を有する個人
3)レジデンスカードを有する者
4)ベトナム住居法に基づく住居用の賃貸借契約を課税年度において183日以上締結している個人
居住者は、全世界所得に対して課税されます。
●非居住者
居住者に該当しない者を指し、ベトナム源泉所得に対して課税されます。
(3)基礎控除と特別付加控除
居住者に対しては月額1,100万ドンの基礎控除が認められます。 また、被扶養者1人につき、月額440万ドンの扶養控除も認められますが、被扶養者の年齢が労働年齢に該当する場合、原則として扶養控除は認められません。 現在の労働年齢は、男性が18歳から61歳3カ月、女性が18歳から56歳8カ月となります。労働年齢は段階的に引き上げられますので、男性は28年に62歳、女性は35年に60歳まで引き上げられます。
非居住者に対しては、基礎控除及び特別付加控除は認められません。
(4)税率
居住者の給与・賃金所得に対しては5~35%の超過累進課税となります。 非居住者の給与・賃金所得に対しては20%の固定税率となります。
中国・ベトナムにおける非居住者の役職兼務について
中国・ベトナムの組織の役職に就く人物が国外組織と兼務することについて、対応可否と注意点を解説します。
1.中国
(1)代表的な役職者
中国内の組織の役職の代表例は以下の通りです。
1)法人
法人の代表的な役職として、董事長、董事、執行董事、監事、総経理、法定代表人等が挙げられます。
●董事長・董事・執行董事
執行董事は董事会を組成せず、1人に権限を集中する場合の役職です(会社法第75条)。 執行董事制を採用する場合を除き、董事会(日本でいう取締役会)を組成する必要があり(第67条)、その中から董事長を任命します。
●監事
日本でいう監査役であり、監事会を組成する場合と、組成せず監事を任命する場合があります(第76条、第83条)。
●総経理
董事会より任命され、董事会の授権に基づき職務を執行します(第74条)。
●法定代表人
会社を代表して会社実務を遂行する董事もしくは総経理が就任します(第10条)。
改定前の会社法では、董事長もしくは総経理と規定されていましたが、選択の範囲が広がりました。
2)常駐代表処
常駐代表処は、「常駐代表機構登記管理弁法」に基づき、4名以内の代表を任命できます。 1名の首席代表と3名以内の一般代表となります。
外国人は、代表登記をベースに就業許可を取得します。
(2)非居住者の役職兼務の可否
1)法人
董事長、董事、執行董事、監事、総経理、法定代表人に関して、居住者であることを義務付けてはいませんので、非居住者が就任することは可能です。
総経理に関しては、董事会に移譲された権限内で、経営管理等を実施する現場監督という位置付けですので、行政機関から居住者が望ましいと言われる場合があります。 ただし、非居住者の総経理兼務を直接的に禁止する法規は無く、実例は多数あります。
2)常駐代表処
全ての代表は非居住者を登録することができますが、非居住者代表は個人所得税の183日ルールの適用が認められないのが注意点です。
2.ベトナム
(1)代表的な役職者
ベトナム内の組織の役職の代表例は以下の通りです。
1)法人
法人の代表的な役職として、社員総会会長、会長、監査役、社長、法定代表人等が挙げられます。
●社員総会会長、会長
ベトナムでの一般的な法人形態は有限会社ですが、一人社員有限会社(出資者1名・社)が会長を任命する場合を除き、社員総会(株式会社の株主総会に該当)を組成する必要があり(会社法第55条)、その中から社員総会会長を任命します。 会長は社員総会を組成せず、1人に権限を集中する場合の役職です(第81条)。
●監査役
一人社員有限会社では監査役の任命、二人以上社員有限会社では監査役会(出資者11名以上の場合)の組成が求められていましたが、2021年以降、任命・組成は任意となっています(第54条、第79条)。
●社長
社員総会もしくは会長より任命され、その授権に基づき職務を執行します(第59条、第82条)。
●法定代表人
会社を代表して会社実務を遂行する社員総会会長、会長もしくは社長が就任します(第54条、第79条)。
2)駐在員事務所
駐在員事務所は、1名の代表者を任命することが求められており(政令番号07/2016/ND-CP・第10条)、外国人は代表登記をベースに就業許可を取得します。
(2)非居住者の役職兼務の可否
1)法人
法定代表人は、少なくとも1名が常駐することが義務付けられていますので、社員総会会長、会長、社長のうち、法定代表人に該当する者はその対象となります。
したがって、法定代表人が1名の場合、非居住者は法定代表人を兼務することができません。 監査役に関しては、居住者であることを義務付けてはいませんので、非居住者が就任することは可能です。
2)駐在員事務所
代表者は非居住者を登録することができますが、代表者が自身の業務の委任をすることなく30日以上ベトナムを離れた場合、駐在員事務所の設立元法人は、新たに代表者を任命しなければなりません(政令番号07/2016/ND-CP・第33条)。
また、代表者は設立元法人・他社の支店長、設立元法人の法的代表人等との兼務が禁止されていますので、非居住者の兼務には制限があります。
以上