中国・ベトナムにおける税務調査・確定申告について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.110

2025-07-09

【中越ビジネスマニュアル 第 110 回】

中国・ベトナムにおける税務調査について

中国とベトナムの税務調査・税務管理について、該当を紹介します。

1.中国

(1)税務調査の実態

中国では、一般的な税務調査のほか、税務機関より自己点検要請を受けることがあります。 これは、企業に対して過少納付の有無を確認し、問題ある場合は罰則の軽減を前提に、一定期間中に自主的な報告を求めるものです。

また、このように税務機関が企業に対して行動を取る方法(税務調査の実施、自主報告の要請)のほかに、データ管理が常時行われ、利益率や残高の異常、納税額の減少、その他の傾向の有無が確認されています。

(2)税務ランク

納税信用ランクは、申告・納税状況に関する格付けであり、A級(優良)・B級(正常)・M級(新設違法歴無し)・C級(厳格管理対象)・D級(重点監督管理対象)の5分類で管理されます。 ランクの決定は、ポイント制(100点からの減点制)ですが、犯罪行為、10万元以上の脱税、虚偽申告等があった場合は即時D級に降格となります。

(3)企業清算時の税務調査

清算時の税務調査(税務登記抹消時の手続き)は、2018年に大きく変わりました。

それ以前は、国税・地方税双方の調査が必要(同時進行不可)であり、比較的入念な調査が行われたため、半年以上の期間を要するケースが少なくありませんでした。

これが、2018年に税務登記即時抹消という手続きが導入されたことで、劇的に時間短縮が実施されました。

これは「企業税務抹消手続きの一層の合理化に関する通知(税総発[2018]149号)」により導入された制度で、納税ランクA・Bであり、過去の納税状況が適切な企業は、税務機関に即時抹消(申請当日に税務登記抹消を許可)が認められます。 事前確認は必要ですが、1週間程度の短期で確認結果は出ますし、他の作業と同時進行できますので、その意味では、大きな規制緩和になったと言えます。

ただ、過去の納税状況に問題ありと見なされた場合はこの限りではありません。

2.ベトナム

(1)税務調査の実態・税務ランク

ベトナムでも、税務局によるデータ管理が行われており、利益率や残高の異常、納税額の減少、関連者間取引の多寡、繰越損失の年数、その他の傾向の有無を確認し、毎年市・省級税務局により税務調査対象企業リストが作成され、税務調査が実施されています。 一般的に内資企業より外資企業、中小企業より大企業が税務調査対象となりやすい状況です。また、中国のような税務信用ランクに基づく分類は公表されていません。

(2)企業清算時の税務調査

ベトナムの企業清算は、中国に比べると困難であり、その中でも、税務登記抹消はいまだに半年以上の時間が必要です。 その理由として、全ての企業に定期的・効率的に税務調査が行われている状況では無いため、企業清算に際して、納税不足の有無を慎重に審査されることが挙げられます。 また、経常的な国家予算不足から、税務当局は徴税に重きを置いているため、より多く徴税が見込めるケースではより多くの税務局員を振り分けますが、あまり徴税が見込めないケースや還付申請がなされたケースには、人員を割いていない印象さえ受けます。

ベトナムには、地方税は無く、国税一本ですので、その点に関する煩雑さはありませんが、常時調査や税務信用ランク等に基づく効率的な調査にはいまだ道半ばであり、企業清算時の税務調査には時間を要しています。


中国・ベトナムにおける確定申告について

中国とベトナムの確定申告制度について解説します。

1.中国

(1)企業所得税

企業所得税法・第54条には、「企業は年度の終了日より5カ月以内に、税務機関に対して年度企業所得税納税申告書を提出し、確定申告を行い、税金の納付、還付の精算を行わなければならない」と規定されています。 中国では、会計年度は暦年に統一されていますので、全ての企業は翌年5月末までに確定申告する必要があります。

企業所得税の確定申告終了後に、董事会・股東会の決議を経て、利益処分(配当など)を実施することができます。

(2)個人所得税

2019年の個人所得税法改定により、確定申告期限が変わり、またその位置付けも大きく変わりました。変更前は翌年3月末までの申告とされていましたが、現在は翌年3月1日~6月30日が確定申告期限となっています。

個人所得税の確定申告が必要な納税義務者は、以下の通りです。

●2カ所以上から総合所得を取得し、かつ総合所得の年間収入額から特別控除を引いた残高が6万元を超過する場合。

●役務報酬所得、原稿料所得、ロイヤリティー所得のいずれかもしくは複数項目の所得を取得し、かつ総合所得の年間収入額から特別控除を引いた残高が6万元を超過する場合。

●納税年度において、予納した税金額が納付すべき税金を下回る場合。

●納税者が税金還付を申請する場合。

(3)増値税輸出還付

増値税輸出還付に関しては、「輸出貨物役務増値税および消費税管理弁法(国家税務総局2012年第24号)」に、企業は貨物の輸出通関日から翌年4月30日までの各増値税納税申告期間内に関連書類をそろえ、主管税務機関に輸出貨物増値税、消費税の免除・還付を申告する必要があると規定されています。

2.ベトナム

(1)企業所得税

改正租税管理法・第38/2019/QH14号には「会計年度末日から3カ月目の末日」までに確定申告を行うことが求められています。

ベトナムでは、会計年度は3月・6月・9月・12月決算を選択することができますので、確定申告期限はそれぞれ、翌会計年度の6月末・9月末・12月末・3月末となります。 一般的な法人形態である有限会社の場合、企業所得税の確定申告終了後に社員総会決議もしくは会社会長決定を経て、利益処分(配当など)を実施することができます。

(2)個人所得税

課税所得を有するベトナム居住者は、個人所得税の確定申告を行う必要があります。 確定申告の期限は、源泉徴収した法人が申告する場合と個人が申告する場合では異なっており、法人の場合は暦年末日から3カ月目の末日、個人の場合は暦年末日から4カ月目の末日となっています。

(3)付加価値税輸出還付

ベトナムの付加価値税制度には確定申告が無いため、以下の条件を満たす場合にのみ、付加価値税輸出還付申請が認められています。

・1カ月もしくは四半期において、物品・サービスを輸出する事業者であり、3億ドン以上の未控除の仕入付加価値税を有する場合、月次もしくは四半期での還付申請が可能です(ただし、輸入後に輸出する物品は除く)。

・1カ月もしくは四半期において、物品・サービスの輸出と国内で消費される物品・サービスの両方を提供する事業者は、輸出物品・サービスの生産・取引に用いられた仕入付加価値税が国内で消費された物品・サービスの売上付加価値税との相殺後に3億ドン以上ある場合、物品・サービスの輸出に関する税金の還付申請が可能です。ただし、物品・サービスの輸出に関する付加価値税還付額の上限は、還付期間の物品・サービスの輸出収益額の10%となります。10%を超過して還付されなかった仕入付加価値税は、以降の課税期間において引き続き控除対象となります。

以上