中国・ベトナムにおける外国企業に対する課税・外国企業と個人の業務委託契約について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.108
2025-05-19【中越ビジネスマニュアル 第 108 回】
中国・ベトナムにおける外国企業に対する課税について
中国、ベトナムにおける外国企業に対する課税について解説します。
1.中国
(1)貨物売買
商品売買において、外国企業が中国で課税されることは原則としてありません。
1)中国内取引
中国内での売買には、外国企業は関与できず、課税されることもありません。
保税区域内であれば、売買に関与できますが、保税区域内の暫定保管貨物の売買に関しては企業所得税・増値税ともに課税されません。
2)中国の輸入
輸入通関時には関税・増値税・消費税(消費税は特定の輸入品目の場合のみ)が課税されますが、この納税義務者は輸入者(中国企業)です。外国企業は貿易権がありませんので、輸入者になることはなく、課税されることもありません。
企業所得税についても、「事業所得に対しては、PE(恒久的施設)なければ課税なし(単純輸出であれば、相手国では課税されない)」の原則から、中国で課税されることはありません。
(2)非貿易項目
非貿易項目に関しては、外国企業のPEが中国になくても、源泉徴収の形で課税されます。課税されるのは、企業所得税(10%)、増値税(基本税率6%、動産リース13%、交通運輸、建築、不動産等9%)、城市建設税等の付加税(増値税額に対して付加課税され、増値税額の10%程度。地域により異なる)です。
2.ベトナム
(1)貨物売買
商品売買において、外国企業がベトナムで課税されることは原則としてありませんが、商品の売買にベトナム国内でのサービスが付帯する場合には例外として課税対象となります。
1)ベトナム内取引
ベトナムにPEを有さない外国企業は、オンザスポットエクスポート・インポート(ベトナム内で貨物が受け渡しされる取引の間に、外国企業が売買当事者として関与する)取引を通じて関与が可能です。この場合は、外国契約者税として、売り上げに対して法人税(1%)が課税されます。また、外国企業が保税倉庫でベトナム企業に商品を引き渡す売買取引もベトナム国内取引とみなされますので、同様に課税されます。
2)ベトナムの輸入
輸入通関時には関税・付加価値税・特別消費税(特別消費税は特定の輸入品目の場合のみ)が課税されますが、この納税義務者は輸入者(ベトナム企業)です。外国企業は貿易権がありませんので、輸入者になることはありません。
法人税についても、事業所得に対しては、PEなければ課税なし(単純輸出であれば、相手国では課税されない)の原則ですが、物品売買に一定のサービス(輸送、据付、保守等)が付帯する場合には、物品に対しても法人税(外国契約者税)の課税対象となるため注意が必要です。
(2)非貿易項目
非貿易項目に関しては、外国企業のPEがベトナムになくても、外国契約者税が源泉徴収の形で課税されます。課税されるのは、法人税(0.1~10%)、付加価値税(2~5%)であり、サービス内容に応じて税率が異なっています。
中国・ベトナムにおける外国企業と個人の業務委託契約について
日本企業等の外国企業が業務委託ベースで中国・ベトナム人個人を起用する場合の注意点を解説します。
1.中国
(1)業務委託料の支払い方
業務委託料は、日本企業から中国内で契約する個人に対する直接送金となります。
対外送金は(非居住者口座を使用する場合も同様)、日本円・米ドル等での外貨送金が必要となります。クロスボーダー人民元決済は、個人に対しては認められていません。
このように振り込まれた外貨は、1人当たり年間累計5万米ドルの範囲内で、(銀行に身分証明を提示すれば)人民元に換金できます。
(2)業務委託契約に際しての注意点
非居住者企業が中国の個人と業務委託契約を結び、起用するに際して、中国側で注意する点は以下の通りです。
1)名刺
日本企業の社名・ロゴなどの使用は、リスク管理の面で望ましくないだけでなく、登記のない常駐代表行為となり、罰則の対象となるため避けるべきです。
「常駐代表機構登記管理条例(国務院令2010年第584号)」・第35条には、「登記をせずに無断で代表機構を設立し、または代表機構の業務活動に従事した場合、登記機関は活動の停止を命じ、5万元以上20万元以下の罰金に処する」と規定されています。
2)業務委託契約
業務委託契約では、提供する役務の内容・義務と責任・対価の設定方法などを合理的に取り決める必要があります。
3)社会保険
中国内での雇用関係がないと、正規の社会保険(養老・医療・工傷・失業・生育保険および住宅基金の5険1金)に加入することはできません。個人加入の選択肢もありますが、正規のものに比べれば、制限されたものとなります。
2.ベトナム
(1)業務委託料の支払い方
業務委託料は、日本企業からベトナム内で契約する個人に対する直接送金となります。
対外送金は、日本円・米ドル等での外貨送金が必要となります。
入金は、ベトナムドン口座でも、外貨口座でも可能です。ベトナムドン口座の場合、TTB(電信買相場)により外貨からベトナムドンに換算された額にて入金されます。外貨口座の場合、送金通貨と入金口座の通貨が異なる場合も同様の扱いとなります。
(2)業務委託契約に際しての注意点
非居住者企業がベトナムの個人と業務委託契約を結び、起用するに際して、ベトナム側で注意する点は以下の通りです。
1)名刺
日本企業の社名・ロゴなどの使用は、リスク管理の面で望ましくありません。
2)業務委託契約
業務委託契約では、提供する役務の内容・義務と責任・対価の設定方法などを合理的に取り決める必要があります。雇用契約と見なされないよう、会社側の管理、運営、監督が伴わない内容でなければなりません。また、企業名による契約締結権の付与や物品の保管・引き渡しを反復して行わせる行為等は、PE(恒久的施設)として認定されますので、契約内容には注意が必要です。
3)社会保険
ベトナム内での雇用関係がないと、正規の社会保険(社会・医療・失業)に加入することはできません。
以上