中国・ベトナムにおけるビザと就業許可・外国企業の国内取引関与について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.107
2025-05-07【中越ビジネスマニュアル 第 107 回】
中国・ベトナムにおけるビザと就業許可について
中国とベトナムのビザと就業許可について解説します。
1.中国
(1)日本人に対するビザ免除措置
2024年11月22日に公布された「ビザ免除国家範囲の一層の拡大と入境政策の改善に関する政策の通知」により、24年11月30日より、日本人に対するビザ免除措置が再開されました。再開に当たり、従来は15日間だった滞在期間が30日に延長されています。
(2)ビザの種類
「外国人出入国管理条例(国務院令2013年第637号)」・「外国人の入国及び短期業務遂行に関する入国手続きの通知(人社部発[2014]78号)」に、ビザの種類が規定されています。中国でのビジネス(出張・駐在)を前提とした場合、該当するビザは、「Zビザ(工作許可証の取得を前提とした就労のためのビザ)」、「Mビザ(商業貿易活動を前提とした出張用ビザ)」、「Fビザ(交流・視察等を目的としたビザ)」となります。
(3)就業許可
中国での工作許可証申請の根拠となるのは、「外国人中国就労許可制度の全面的実施に関する通知(外専発[2017]40号)」で、ここでは外国人のランクをA~Cの3種類に分けています(C類は特殊な分類であるため、通常はA類・B類のいずれかを申請)。
分類は年収、ポイント、その他の方法の適用によりますが(いずれかの条件を満たせば取得可能)、年収基準の場合、A類は「平均給与が当該地域(市)の前年度の平均給与の6倍以上」、B類は「4倍以上」。ポイントの場合はA類は85点以上、B類は60点以上です。
実務上は、「学士以上の学位。2年以上の職務経験。年齢60歳以下」の3条件を全て満たす場合、B類に該当しますので、(ポイント計算などはせずに)この条件により、工作許可を取得するケースが多い状況です。
2.ベトナム
(1)日本人に対するビザ免除措置
23年6月24日に公布された「ベトナムにおける外国人の入国・出国・乗継・居住に関する法律への一部改正法」により、23年8月15日より、日本人に対するビザ免除による滞在可能期間は15日間から45日間に延長されています。 また、ビザ免除にて入国した場合、出国から30日以内のビザ免除での再入国は認められていませんでしたが、20年7月10日以降、再入国への制限は撤廃されています。
(2)ビザの種類
「ベトナムにおける外国人の入国・出国・乗継・居住に関する法律(第47/2014/QH13号)」・「同法一部条項への改正法(第51/2019/QH14号)」に、ビザの種類が規定されています。
ベトナムでのビジネス(出張・駐在)を前提とした場合、該当するビザは、「LD1ビザ(就労許可証の取得免除者を対象とした就労のためのビザ)」、「LD2ビザ(就労許可証の取得を前提とした就労のためのビザ)」、「DN1ビザ(商業貿易活動を前提とした出張用ビザ)」、「DN2ビザ(事業促進・商用拠点設置等を目的としたビザ)」となります。
(3)就労許可
ベトナムでの就労許可証申請の根拠となるのは「労働法」、「ベトナムで就労する外国人労働者に関する労働法の一部条項の詳細に係る政令・第11/2016/ND-CP号」、「同政令の施行細則に係る労働傷病兵社会省通達・第40/2016/TT-BLDTBXH号」及び「ベトナムで就労する外国人労働者及びベトナムの外国雇用者のために就労するベトナム人の採用・管理に係る政令・第152/2020/ND-CP号」です。
この制度では、外国人に対する就業許可発給を3種類に分類しています。それぞれの条件は、以下の通りです。
1)管理職
●企業法の規定に基づく企業管理者(出資者総会会長・出資者、会社会長、取締役会会長、取締役、社長、その他定款記載の管理者)、機関・組織の長・副長
●支店・駐在員事務所(連絡事務所)・事業所長
●機関・組織・分枝機構長の直属であり、機関・組織・分枝機構の少なくとも1部門を直接管理する者
2)専門家
●学士相当以上の学位およびベトナムでの職務関連分野での3年以上の職歴を有する者
●ベトナムでの職務に関連する5年以上の職歴および当該分野での専門家資格を有する者
●労働傷兵社会省の要請により首相が決定する特別な場合に該当する者
3)技術者
●ベトナムでの職務に関連する技術分野等での1年以上の専門教育を受け、当該分野での3年以上の職歴を有する者
●ベトナムでの職務に関連する5年以上の職歴を有する者
中国・ベトナムにおける外国企業の国内取引関与について
外国企業が中国・ベトナムの国内取引に関与することの可否について解説します。
1.中国
中国内で売買行為を行う場合は、中国内での卸売り流通権が必要ですが、外国企業はこれが取得できません。よって、外国企業が中国内取引に関与することはできません。
ただし、以下の特例があります。
(1)保税区域を活用した場合(保税区域游)
中国企業が保税区域(保税物流園区・保税物流中心B型・総合保税区が使用されます)に搬入(搬入企業が輸出通関)し、いったん外国企業は区内で貨物の所有権を得ます。 その後、再度搬出(搬出時に引き取る企業が輸入通関)するのがこの取引です。
外国企業は、保税区域内の暫定保管貨物の所有権を持つことができますし、保税開発区の搬入・搬出に際して、輸出入通関実績ができます。 よって、貿易取引に準じて貨物代金決済が可能で、取引が成立します。
このオペレーションが使われるのは、通常は加工貿易貨物に限定されますが、まれに非保税貨物(内貨)の売買に際して、外国企業が売上を計上したいため、この方法を使うことがあります。 ただこの場合、本来であれば不要な関税がかかることや、物流・通関コストが高額になるので、あまり得策ではありません。
(2)転廠(深加工結転)
転廠とは、加工貿易企業間の国内貨物移送です。 加工貿易とは、中国企業が原材料を輸入し、加工後の製品を輸出する行為ですので、調達(輸入)・販売(輸出)ともに外国企業との契約があります。 ただし、中国内で一次加工、二次加工が行われる場合、税関手続き上は契約に基づき輸出入通関をした上で、貨物を国内で移送するのが転廠です。
この場合、転出企業は輸出通関・転入企業は輸入通関実績ができます。 契約上、転出・転入企業の取引の相手先となっているのは外国企業であるため、外国企業の取引介入が成立します。
2.ベトナム
ベトナムでは、外国企業がベトナム内の売買に関与することが認められてきましたが、一定の条件が付されるなど、外国企業の対象が絞られてきています。 また、今後は外国企業を直接の取引主体としては、認めない方向で政令が起草されています。
(1)見なし輸出入取引(オンザスポットエクスポート・インポート)
ベトナム内で貨物が受け渡しされる取引の間に、外国企業が売買当事者として関与することは、見なし輸出入取引(オンザスポット(もしくはインランド)エクスポート・インポート)として認められています(政令番号08/2015/ND-CP第35条1項)。 見なし輸出入取引とは、物流はベトナム国内のみ(ベトナム国内企業から他のベトナム国内企業への納入)であるものの、商流として、いったんベトナム国内企業から外国企業に売却をし、再度他のベトナム国内企業に売却される売買形態を指します。
(2)外国企業関与への規制
2023年8月8日、税関総局はオフィシャルレター・第4146/TCHQ-GSPL号を発行し、外国法人がベトナムに子会社、関連会社、マイナー出資会社、支店、駐在員事務所、BCC契約等を有する場合は、見なし輸出入取引へ関与できないことを明確化しました。
また、ベトナムに拠点を有さない企業の見なし輸出入取引を禁止する政令案が起草されており、施行から1年間は暫定的に取引を認めるが、その後は禁止という内容となっています。今後、外国企業がベトナム国内取引に関与する場合、ベトナム国内の代理人を定め、輸出入取引ではなく、ベトナム国内取引として処理する施策となります。
以上