中国・ベトナムにおける国外投融資、コミッションの受け払いについて【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.100
2024-09-17【中越ビジネスマニュアル 第 100 回】
中国・ベトナムにおける国外投融資について
国外への投融資について解説します。
1.中国
(1) 国外への投資 中国からの対外投資は、発展改革委員会と商務主管部門双方の事前手続きが必要で、双方での手続きが完了した段階で、投資を実行することができます。
発展改革委員会と商務主管部門の手続きは、「備案(届け出)を主体として、敏感性プロジェクトの場合に許可が義務付けられる」点については共通しています。
つまり、「中国と国交がない国や、国外出資を歓迎しない業種等」以外は、備案手続きで出資を認めることを意味しています。
ただ実務的には、国外投資がビジネス・会社運営上の必然性があるものか(資金の逃避やマネーロンダリングにつながるものではないか)など、合理性の審査が行われますので、無条件に受理される訳ではありません。
(2) 国外への貸付 国外貸付の根拠となるのは、銀発[2016]306号・匯発[2017]3号・銀発[2020]330号であり、以下の条件で外貨管理局での登記が認められます。
1) 貸付条件 貸付が可能となるのは、設立後1年以上が経過した企業であり、相手先(国外の借入企業)は、融資者と直接・間接の出資関係がある企業に限定されます。
2) 貸付限度額 貸付可能金額については、以下の公式が規定されています。 ●対外貸付残高上限=直近1期の監査済み純資産×マクロプルーデンス調節係数(0.5) ●対外貸付残高=人民元・外貨の域外貸付残高+外貨域外貸付残高×通貨転換因数(0.5)
以上の通り、国外貸付金額は、直近の会計監査報告書に記載された純資産の50%が上限であり、外貨での貸付は0.5を乗じた金額を加算する必要があります(銀発[2021]2号)。
なお、かつては期前返済をした場合、残高が復活しませんでしたが、銀発[2020]330号によりこの制限が外され、返済により貸付枠を回復することができるようになりました。
2. ベトナム
(1) 国外への投資 ベトナムからの対外投資は、国会承認案件、政府承認案件、その他案件に分けられます(投資法・第56条)。国会・政府承認案件に関しては、各機関での承認後に計画投資省での申請手続きを行います。その他案件に関しては、国会・政府の承認手続きは不要ですので、計画投資省にのみ申請手続きを行います(投資法・第61条)。
1) 国会・政府での手続き 国会の承認手続きが必要な案件は、「20兆ドン以上の投資資本を有するプロジェクト」・「国会の決定を必要とする特別な制度・政策の申請を要するプロジェクト」が該当します。政府の承認手続きが必要な案件は、「銀行、保険、証券、報道、ラジオ、テレビ、通信分野における4,000億ドン以上の投資資本を有するプロジェクト」・「前記以外の分野における8,000億ドン以上の投資資本を有するプロジェクト」が該当します(国会承認案件は除く)。
2) 計画投資省での手続き 国会・政府承認案件に関しては、「投資承認書」・「投資者の対外投資決定書」を計画投資省に提出することで、対外投資登記証明書が発給されます。その他案件に関しては、「対外投資申請書」・「投資者の投資登記証」・「投資者の企業登記証」・「投資者の対外投資決定書」・「対外投資用の外貨準備に係る誓約書」を提出します。銀行、保険、証券、報道、ラジオ、テレビ、通信、不動産分野に関しては、別途、関連当局から条件具備にかかる証明書が求められる場合があります。
(2) 国外への貸付 ベトナムでは国外貸付の根拠となる規定がないため、中央銀行の草案では以下の条件が提起されています。
1) 貸付条件 貸付が可能となるのは、設立後5年以上が経過した企業であり、貸付申請前の2年間利益が出ていること、不良債権、国外債務・税金の滞納がないことが求められています。また、他の機関からの借入金を用いての貸付は認められていません。相手先(国外の借入企業)は、融資者の親会社や関連会社が想定されています。
中国・ベトナムにおけるコミッションの受け払いについて
中国とベトナムでのコミッションの定義と受け払いについて解説します。
1.中国
(1) コミッションの定義 日本と中国を比較すると、日本のコミッションは範囲が広い(中国は狭い)ように思われます。日本では例えば、報告書を提出して、固定額の報酬を得るような形もコミッション(定額コミッション)と表現されることが多いですが、中国ではこのような役務に対する対価は役務費に該当し、コミッションには該当しません。
中国のコミッションは、商売成立を前提とした役務に対して支払われ、売上に対して一定比率を乗じて算出するもの(仲介手数料)が該当します。
(2) コミッションの受け払い コミッションを受領する前提で、役務を提供する行為は「コミッション代理」と呼ばれる卸売流通権の一部です。よって、コミッションの受領は卸売流通権を有することが前提となります。
もちろん、国内での受け払いではそれほど厳格に管理されている訳ではありませんので、卸売流通権がなくてもコミッションの受け払いをしている事例はあり得ます。
ただ、コミッションの特徴として、提供する役務と受け払いする金額が必ずしも比例しない点が税務上は注意点となります。つまり、商売が成立しなければ、ただ働きとなる一方、一度成立してしまえば、さほどの役務を提供しなくても、高額の支払いが行われる場合があるためで、やはり営業許可範囲と一致させた方が安全と言えます。
(3) 外国企業のコミッション受領 外国企業が中国企業からコミッションを受領できるのは、貿易取引に関してのみとなります(国家税務総局・外貨管理局2013年第40号)。これは、外国企業は中国内での卸売流通権を有していないため、中国内取引に関してコミッション代理役務を提供することはできず、貿易取引であれば、中国外で役務提供した(中国の営業許可管理の対象外)という前提が成立するため、中国内取引に関連するコミッションは対外送金不可(貿易取引に関連するものは可能)というロジックになるものです。
2.ベトナム
(1) コミッションの定義 ベトナムにおいても、報告書を提出して固定額の報酬を得る形式での役務提供は、狭義のコミッションには該当しません。狭義のコミッションは、中国同様に商売成立を前提とした役務に対して支払われ、売上に対して一定比率を乗じて算出するもの(仲介手数料)が該当します。
(2) コミッションの受け払い ベトナムのWTOコミットメントにおいて、外資企業に対して、コミッションを受領する前提で役務を提供する行為であるコミッション代理は開放されていません。ただし、国内での受け払いにおいて、それほど厳格に管理されている訳ではありませんので、マーケティングに関するコンサルティング契約として、基本契約で一定比率を定め、商売成立時に固定額で契約書を作成して受け払いをするという事例は見受けられます。
(3) 外国企業のコミッション受領 外国企業がベトナム企業からコミッションを受領できるのは、貿易取引に関してのみではなく、ベトナム国内での役務提供への対価に関しても認められます。一般的な国際ルールとして、PE(恒久的施設)無ければ課税無しが原則となりますが、ベトナムでは、外国企業がベトナムにPEを有するか否かにかかわらず、ベトナム国内での役務提供に対して、法人税、付加価値税等が課税対象となっています。ベトナム企業は、外国企業のベトナム国内での役務提供への対価支払いに際してこの外国契約者税を源泉徴収しますので、外国企業はその差額を受領することとなります。
以上