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掲載日:2008年9月1日
機器販売+役務提供契約方式を採用する場合のP/E認定について

1.外国企業が中国に工事事務所を開設する事の制限

従来、外国企業が中国で請負工事を行う場合、中国にスポットベースの工事事務所(事業所)を設立し、工事を遂行する方法が広く採用されていました。
但し、2004年の4月より、以下の規定により、外国企業が工事事務所を開設することが、実質的に不可能となりました。

<関連規定>
  • 外商投資建設業企業管理規定(建設部・対外貿易経済合作部令 第113号)
  • 外商投資建築企業管理規定の資質管理問題に関する実施弁法(建設部 建市[2003]73号)

当該規定は、工事事務所の開設自体を否定するものでは有りませんが、2003年10月以降は、「外国企業、及び外国企業の在中分枝機構には、建築企業資質証書を発給しない」事が定められており、結果として、工事事務所を開設したとしても、中国内で請負工事(具体的には、土木工事、建築工事、線路・パイプライン・設備の据付工事、それに付随する行為)を行う事は出来ず、現実問題として、開設不可能という事になります。

本件の実施は、「中国内において請負工事を行う外国企業の資質管理関連業務をよりよく行う事に関する通知(建設部 建市[2003]193号)」により、2003年10月から2004年4月迄延期されましたが、何れにしても、現時点では、外国企業が中国内で工事事務所を開設し、工事を行う事は出来ない事になります。

では、外国企業が、中国国内で請負工事を行うためにはどうするか、という点ですが、方法としては、「外資建築企業を設立する」、若しくは「中国の工事会社を起用して、そこに対して機器販売と、据付に関する役務提供を実施する」という方法を選択する事になります。

外資建築企業は、上記の「外商投資建設業企業管理規定」を根拠規定とする現地法人形態で、独資での設立も可能ですが、独資であれ合弁であれ、資質管理が非常に厳しく、それなりの請負工事を行うためには、資本金・建築関係の資格を有する人員の確保、過去の工事請負実績等、様々な面で高いハードルをクリアする必要があります(請負う事ができる工事の規模によって、これらの条件は変わってきます)。よって、スポットベースの工事を行う為に、簡単に設立できるようなものではありません。

そこで考えられるのが、中国の建築会社(外資建築企業を含む)を中国での請負当事者とし、外国企業は、中国外調達機器の販売(対中輸出)と工事監督役務の提供(Supervising Service、以下SV)のみを行う方法です。この、形態(以下、機器販売+SV方式)は、特に、プラント・インフラ工事等で重要な選択肢となります。

では、機器販売+SV方式を採用した場合、外国企業の中国における課税は、どの様に行われるのでしょうか。
更に言えば、この方法を採用する場合、この実質的な工事は、Permanent Estabilishment(恒久的施設:以下、P/E)として認定されるのでしょうか。 以下、日本企業が中国でこの方式で工事を行う事を前提に、課税関係を解説します。

2.P/E認定に関する日中租税条約の扱い

機器販売所得とSV所得の性質は、双方事業所得と考えられますので、国際課税のルール(P/E無ければ課税無し)により、「日本企業のP/Eが中国に無い場合は、企業所得税は課税されない」事になります。では、工事に関わるP/E認定条件は、どの様なものでしょうか。
日中租税条約では、工事P/Eの認定条件を、以下の通り定めています。

  • 請負工事(日中租税条約第5条第3項)
    建築工事、建設、組み立て、据付工事、若しくはこれらに付随する監督活動は、6ヶ月を超える期間存続する場合に限り、恒久的施設とする。
  • 工事関連コンサルティングの提供(日中租税条約第5条第5項)
    一方の締約国の企業が、他方の締約国の企業に於いて、使用人その他の職員を通じてコンサルティングサービスを提供する場合、この様な活動が単一の工事、または複数の工事について、12ヶ月の間に合計6ヶ月を超える期間行われる場合に限り、当該企業は当該他方の締約国に恒久的施設を有するものとされる。

機器販売+SV方式では、外国企業は指導員(Supervisor)を派遣して、技術指導に当たる形になりますので、上記の内、該当する規定は、後者(第5条第5項)という事になります。
この条項に照らすと、「SV活動が関連する工事の継続期間が、6ヶ月以内であれば、P/E認定されない」という事になります。 では、P/E認定される場合とされない場合で、機器販売とSV部分に対する課税はどうなるかを下記します。

  1. 工事が6ヶ月以内の場合
    • SVフィーに対する課税
      SV活動に関してP/E認定されない事から、理論上は、SVフィーに対して、企業所得税は課税されない事となります。
      一方、営業税(流通税)については、日中租税条約の規定対象とはなっておらず、国内法(営業税暫定条例)に基づいて、課税の要否が判断されます。つまり、中国国内を源泉とした役務提供が行われたかどうかが判断のポイントとなります。
      結果を言えば、SV活動は中国国内での役務提供活動に他ならず、SVフィーに対しては、5%の営業税が課税されます。
      つまり、工事が6ヶ月以内の場合、「理論上は」SVフィーに対して営業税5%のみが課税される事になります。
      但し、「実務上は」、SVフィーの対外支払いについては、営業税だけでなく、10%の企業所得税が徴収されるケースが多いと言えます。
      つまり、SVフィーについて、ロイヤルティに準じた課税が行われている訳ですが、この場合、SVフィーに対しては、営業税5%に加え、以下の算式による企業所得税が課税される事になり、結果として、合計14.5%の源泉徴収が行われる事になります。
      企業所得税額=(SVフィー?営業税額)x10%
    • 機器販売に対する課税
      機器販売(対中輸出)所得は純然とした事業所得であり、P/E認定が行われない以上、中国での企業所得税課税は行われません。
      又、流通税に関しては、輸入通関の当事者(中国内の請負企業)が、輸入通関時に増値税・関税を納税する事となります。つまり、外国企業にとっては無関係、という事になります。
  2. 工事が6ヶ月超の場合
    • SVフィーに対する課税
      SV活動がP/E認定されている為、企業所得税の納税義務がある事は確かです。更に、営業税の納税義務がある事は、(1)で解説した通りです。
      営業税については、SVフィーの5%で問題ないといえますが、企業所得税については、課税形態として、以下の可能性が考えられます。
      1. SV活動に対する実質所得に対して、33%の税率で課税される。
      2. 見做し課税方式適用後の、見做し所得に対して33%の税率で課税される。
      3. 営業税控除後のSVフィーに対して、10%の源泉徴収が行われる。

      実務的には、c) の形態が採用されるケースが多い様です。 つまり、結果としては、(1)の場合と同様で、SVフィーに対して14.5%の源泉徴収課税が行なわれるケースが、実務上は多いといえます。

    • 機器販売に対する課税
      外国企業のP/E(SV活動に関する認定)が中国に構築されていますので、このP/Eに帰属する事業所得は中国で納税義務が生じます。
      SV活動は、当該機器の据付に関するものである為、理論上は、P/Eに帰属する所得と考えられ、この部分についても、企業所得税の納税義務が出てくると考えられます。
      この場合の課税形態としては、以下が考えられます。
      1. 機器販売に関わる実質所得に対して、33%の税率で課税される。
      2. 見做し課税方式適用後の見做し所得に対して、33%の税率で課税される。

      つまり、実質所得が対象になるか、査定利益が対象になるかは別として、SV部分のみならず、機器販売も企業所得税の課税対象となる可能性があるという事です。
      但し、実務上は、課税の対象はSV部分に限定され、機器販売利益に対しては課税されない(帰属の範囲が拡大しない)ケースが多く見られます。つまり、(1)・(2)の場合共に、SV部分に関して、14.5%の源泉徴収課税で完結する可能性が少なからずあるということです。
      但し、理論的には機器販売所得は、SV活動によるP/Eに帰属する事は明らかであり、その意味で、企業所得税の課税が、この部分に及ぶ可能性を考慮しておく必要があります。
      因みに、流通税(増値税)については、?の場合と同様、輸入通関の当事者が負担するものであり、外国企業が負担するものでは有りません。

3.日中租税条約議定書の規定(補足)

日中租税条約第5条の規定(上述)とは別に、以下の様な内容が、日中租税条約の「議定書」に記載されています。

  • 日中租税条約第5条第5項の規定に拘わらず、締約国の企業が提供するコンサルティング役務が、「機械及び設備の販売または賃貸に関連するものである場合」は、役務提供期間に拘わらず、恒久的施設を有するものとはされない。

これを読むと、機器販売+SV方式の場合は、工事期間に拘わらず(6ヶ月を超過しても)、P/E認定されないのではないか、という期待が生じます。
但し、ここで問題となるのが、1997年に国家税務総局より公布された、「日中租税条約とその議定書の条文解釈に関する通知(国税函[1997]429号)」です。
ここでは、「上記の議定書の趣旨は、国際貿易・リースの振興であって、この例外規定の対象となるコンサルティング役務とは、販売・リース関係のコンサルティングに限定される」と規定されています。
その為、機器販売+コンサルティング提供方式を採用する場合で、日本企業が提供するコンサルティングが、以下の役割を担っている場合は、工事監督活動と見做して、(6ヶ月以上の期間引き続いた場合は)P/E認定される事になります。

  1. 全工程に関する指揮権の保有
  2. 全面的な技術責任の負担
  3. フルターンキー形式の採用
  4. 機器の設計・据付、調整から試運転迄の指導
  5. 設備の適正な稼動に関する保証
  6. その他

機器販売+SV形式を採用する場合は、外国企業が提供するSVサービスは上記の内容を含む事が多いと推測されます。それを考慮すれば、当該議定書の対象となる様なケースは非常に稀であり、議定書の例外規定が適用される可能性は低いといっても良いでしょう。

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