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掲載日:2008年9月3日
見做しP/E認定と税金(企業所得税・個人所得税)の関係

1.P/Eとは

P/E(Permanent Establishment:恒久的施設)というのは、二国間に跨るビジネスを行う際に、必ず登場する用語です。P/Eというのは、ある意味抽象的な概念ですので、用語はよく知っているけれど、内容がよく分からない、という感想をお持ちの方が多いと思います。
簡単に言えば、外国企業の体の一部(支店・工事事務所等の分枝機構)が、国内にあって、そこが、事業活動を行っていれば、P/Eになると言う事です。
例えば、P/Eと、P/Eでない例を挙げると、原則論は以下の通りとなります。

  • 外国企業の分公司(支店)
    外国企業の機構であり、通常、営業活動を行っているのでP/Eに該当する。
  • 外国企業の事業所(工事事務所等)
    分公司と同様の理由で、通常、P/Eに該当する。
    但し、日中租税条約の規定により、6ヶ月以内の工事はP/Eに該当しない。
  • 外国企業の常駐代表所
    外国企業の機構ではあるが、通常は、営業活動(収益獲得行為)を行っていないので、P/Eには該当しない。
  • 外商投資企業
    現地法人は、出資者とは独立した法人格を有している為、P/Eには該当しない。

2.看做しP/E認定と言うのはどういう事か

上記は、教科書通りの判定ですが、この通り(原則論通り)に話が運ばないケースが多いのが、P/E判定の面倒なところです。
これは、取りも直さず「看做しP/E」という問題がある為です。
看做しP/E認定の例を挙げると、常駐代表所のP/E認定があげられます。これは、「特定の常駐代表所は、実質的な営業活動を行っている」という判定より、一部の常駐代表所がP/E認定を受け、現時点では、大部分常駐代表所に対して企業所得税の課税が行われているものです。
これ以外にも、6ヶ月超継続する工事を監督する為に、技術者を継続的に派遣する場合、たとえ工事事務所を開設しなくても、「実質的に工事事務所を開設している」と看做されて、P/E認定を受ける事もあります。
更には、現地法人を、手足の様に使っていると(現地法人の独立性がないと判定され)、実質的な分枝機構、つまり代理人P/Eとして認定される可能性もあります。
つまり、P/E認定には、「実質判定」という切り口が有るため、形式さえ整えておけば安心という訳には行かないのが難しいところであり、一旦、税務局よりP/E認定が行われると、泥縄試合になり易いと言う局面がある訳です。

3.P/E認定されると何が困るのか

では、P/E認定されると、何が困るかと言う点ですが、一言で言うと、「外国企業自身が、中国での課税対象になる」という事です。
つまり、日中租税条約上(また、国際税務の基本的な概念上)、配当・利子・使用料等の「投資所得」は、当該国に外国企業のP/Eが無くても課税が行われ、(主に)源泉徴収の形で課税が完結します。
一方、事業所得に付いては、P/Eが無ければ課税しない、という原則があるため、中国にP/Eが無い日本企業は、商品売買益等の事業所得(例えば、対中輸出)に関して、中国で企業所得税を課税される事はありません。これが、P/E認定された段階で、課税が行われる事になる訳です。
この場合、中国で課税対象となる所得は、原則としてP/Eに帰属する所得に限定されています(日中租税条約が帰属主義を採用している為)。
よって、P/E認定が行われたからと言って、課税リスクが無制限に広がるわけではありませんが、実務上、帰属の判定が難しい事もあり(P/Eが取引に関係している事を立証するのは比較的容易ながら、関係していない事を立証するのは難しい為)、結果として、課税範囲が拡大する恐れもあり、これが、P/E認定の最大のリスクという訳です。

4.技術者の派遣とP/E認定

看做しP/Eと言っても、「営業活動をしない筈の常駐代表所が、補助的活動の範囲を超えた活動を行った為P/E認定される場合」、「現地法人が、実質的な分枝機構(代理人P/E)として認定される場合」等、色々なケースに分かれるのは、前回解説した通りです。
最近、比較的よくご相談を受けるのは、以下の様な技術者を派遣に伴うP/E認定です。

  1. 機器販売+役務提供方式で工事を行う際に、実質的な請負工事を行っていると見做され、P/E認定される場合。
  2. 工事に関して、機器販売には関わらず、技術者だけ派遣しているものの、工事事務所を開設していると見做されP/E認定されるケース。
  3. 工事とは関係無いものの、中国の企業と長期技術提供サービスを締結し、技術者を継続的に派遣する事によって、P/E認定されるケース。
(1)・(2)のケースは工事事務所認定ですので、中国内での工事が6ヶ月を超える期間継続し、それに関連して技術者・その他の人材を派遣している場合に生じる問題です。
日中租税条約の議定書には、「出張者が、機械・設備の販売、又は賃貸に関連するコンサルティング役務を提供する場合には、P/E認定は行わない」事を規定していますが、これはあくまでも補助的役務の場合に限定されており、出張者が、「工事の指揮権を持っている場合、全面的な技術責任を持っている場合」は、コンサルティング役務とは看做されず、P/E認定の対象となる事になります。
(3)の場合は、恒常的な技術者の派遣が、あたかも、分枝機構を構築している様に看做され、P/E課税が行われるというケースです。

5.P/E認定と税務的な影響

● 企業所得税

P/E認定が行われるとどうなるかですが、当然の事として、「帰属する所得に対して、企業所得税が課税されます」。有るべき論から言えば、P/Eに帰属する実質所得を算定して、これに対する課税を行うのが原則ですが、実務上、看做しP/Eに帰属する所得を判定するのは困難で、査定利益課税方式が採用される事が大半です。また、査定利益課税の形態が、P/E認定されない場合と同様、源泉徴収(役務対価の送金に関する企業所得税の源泉徴収10%)という場合も有り得ます。

● 営業税

租税条約は、所得に対する税金(企業所得税・個人所得税)の課税権を取り決めたものですので、理論的にはP/E認定は営業税の課税に直結しませんが、実務的には、ほぼ同時に課税が行われます。また、営業税は国内源泉役務を課税対象としていますので、国内での技術指導実績がある以上、課税はやむを得ない話でもあります。

● 個人所得税

技術派遣員の給与を、全額本社(日本法人)が負担しており、且つ、派遣員の中国滞在日数が、暦年で183日以内であっても、P/E認定と同時に、個人所得税の納税を要請される事になります。
これは、中国の看做しP/E(分枝機構)が、査定利益課税方式で課税されている場合、関連している人員の給与の一部(中国滞在に応じた日数)は、P/Eが負担していると看做される為です(国税発[1994]148号)。これは、看做し課税方式が、収益及び費用を推定(理論値)で算定する関係上、ある意味いたし方無い面はあります。
この様に、給与の一部をP/Eが負担していると看做された場合、この部分は、租税条約の規定に基づき、183日ルールの対象外となりますので、結果として、P/E認定が個人所得課税に結びつく事になります。

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租税条約における恒久的施設(P/E)の定義の解釈に関する通知:掲載日:2008年9月3日