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掲載日:2008年9月3日
保税開発区の種類と特徴(保税区、輸出加工区、物流園区、その他)

保税開発区の種類と特徴を、下記します。

1.保税区

保税区は、1990年に第一号の上海外高橋保税区が認可され、その後、15箇所の保税区が設置されています。
保税区内には、区内に加工企業だけでなく、貿易・物流企業を始めとするサービス企業を開設する事ができます。
件数的には、販売会社(貿易会社)の誘致が格段に多いのが特徴ですが、これは、卸売り流通業が外資に対して開放される以前(2004年6月の「外商投資商業領域管理弁法」施行以前)、保税区が試験的に外資貿易会社を受け入れた事によるものです。
その為、外商投資商業領域管理弁法施行前に、保税区内には数多くの外資貿易会社が設立されましたが、当時の保税区貿易会社とは、(貿易会社とは言っても)国内流通権・貿易権を持っておらず、営業範囲を、「保税区内企業・外国企業・区外の貿易権を有する企業との取引」のみに限定された、特殊な存在でした。
但し、正規の営業範囲は上記の通りですが、実際には、保税区内の交易市場・貿易会社を活用する事で、変則的ながらも貿易・国内流通行為に従事する事ができましたので、この様な取引が広く行われていました。
それが、その後の規制緩和により、現時点では、保税区企業でも、外商投資商業領域管理弁法の手続に基づいて国内流通権の取得申請を行う事ができるようになりましたので(保税区及び物流園区貿易関連問題に関する通知:商貿字[2005]76号)。
それ以降は、当該通知以前に設立された保税区貿易会社の多くが、国内流通権・貿易権を取得し、正規の商業企業(卸売り・貿易型)に転換しています。

保税区は、他の保税開発区に先駆けて設置された開発区である事から、他の保税開発区に比べて、豊富な運用実績を持っており、インフラの整備も進んでいます。
その意味では、信頼性の高い開発区という事ができますが、輸出に関する増値税の輸出還付政策が変則的であるのが難点といえます。
よって、「中国から見た輸入取引の経由地としての活用」、「中継貿易」、「区内での加工貿易」を行う場合はよいのですが、中国から財貨を輸出する際に、保税区を経由するオペレーションは、得策とは言えません。

尚、保税区の監督規定としては、「保税区税関監督弁法(税関総署令[1997]第65号)」、その他、各地域の保税区監督条例(上海外高橋保税区条例等)が挙げられます。

2.輸出加工区

輸出加工区は、2000年に第一号の全国15箇所が認可されて以降、現時点では、約60箇所に増加しています。
輸出加工区は、文字通り、輸出加工企業を専門に誘致する保税開発区であり、区内には、輸出加工企業、及び輸出加工企業に関連する倉庫・物流企業のみが設立が可能です。
また、区内に搬入できる財貨は、区内で加工工程が行われるものに限定され、保税区・物流園区等の様に、中継貨物を搬入する事はできません。
この様に、使用用途が限定された開発区ですが、国内原材料を(国内区外から)区内に搬入する際に、輸出通関と同時に増値税の輸出還付が受けられる点は、保税区とは異なる優位点と言えます。

輸出加工区は、区内に設立する企業は、輸出主体である事が要求され、中国内での製品販売は制限されます。
では、どの程度の製品が中国内で販売かという点ですが、これに付いては、関連規定「輸出加工区に対する監督管理暫定弁法(国務院令[2003]第389号)」には明記されていません。
但し、中国では、輸出を主体とする企業というのは、「製品の70%以上を輸出する企業」と定義されている事から、一般には、30%以内の比率で国内販売が可能と解釈されています。
但し、実際には、この比率の国内販売が自動的に認められる訳ではなく、これを上限とした税関との個別協議によって、国内販売可能割合は決められます。

以上の通り、販売先が大きく制限されると言うのが、輸出加工区活用に当っての大きな問題です。
生産型企業の場合は、会社設立に当っての設備投資も高額になりますし、移転の時間・手間もサービス型企業とは比較にならないほど煩雑になります。
その意味で、進出地の選定には慎重を要する必要がありますが、輸出加工区に会社を設立する場合には、「経営期間中は、輸出主体の状況が変わらない(国内販売が主要な比率にならない)」事が絶対的な条件になりますので、活用が躊躇されるケースが多いと思われます。
よって、輸出加工区ではなく、一般地域(非保税地域)に会社を設立し、進料加工を行う方を選択するケースが多かった為、輸出加工区は、必ずしも人気の有る保税開発区とは言えませんでした。
但し、ここ数年の加工貿易制限により、輸出加工区の注目が、急に高まっています。
これは、具体的には以下の様な動きです。

  • 加工貿易企業の立地制限(税関総署令[2007]第44号)
    制限分類製品を取り扱う加工貿易企業は、沿海部では、保税区・輸出加工区を除いて新設が認められなくなった。
  • 加工貿易保証金積立義務の強化(税関総署令[2007]第44号)
    同公告により、加工貿易の積立義務が強化されたが、輸出加工区・保税区は、加工貿易保証金制度の適用対象外となっています。
  • 加工貿易禁止分類品目の拡大(商務部・税関総署・国家環境保護総局公告[2006]第82号等)
    加工貿易禁止分類品目が、毎年拡大しているが、禁止分類品目に該当した場合は、加工貿易が禁止される事になる。
    禁止分類品目に関しては、輸出加工区・保税区内でも加工貿易は禁止されるが、禁止分類に該当した段階で、輸出加工区・保税区内で、既に当該品目の加工貿易を行っていた企業に付いては、継続が認められる。

以上のような、一連の加工貿易に対する規制強化の動きにより、相対的に(一般の地域以上に)加工貿易の保護が行われる輸出加工区・保税区の評価が上がってきています。

3.保税物流園区

保税物流園区は、全国8箇所が設置されていますが、第一号は上海外高橋物流園区で、2003年に認可されています。
保税物流園区は、保税区内、若しくは、保税区に隣接する形で設置された物流拠点であり、保税保管・中継貿易等、本来保税区に認められた機能を、更に、深化させる事を目的としています。
保税物流園区の特徴は、輸出加工区と同様、中国内(一般区)の財貨を区内に搬入した段階で、増値税の輸出還付が受けられる事です。
保税区が、増値税の輸出還付上の問題を抱えている事は、前述(保税区の項目参照)した通りですが、この物流園区を併設する事で、その問題の補完・解消が図られた形となっています。
保税物流園区内で認められる活動は、「保税保管、簡単加工、輸出入・中継貿易、販売・配送、検査・補修、商品展示」などですが、物流園区が最初に認可・設置された時に、最も注目されたのは、「香港の代替」としての機能です。
具体的には、加工貿易貨物を中国内で販売したい場合、若しくは、中国内の他の加工貿易企業に、転廠以外の形で引き渡したい場合に、一旦、香港・マカオ等に貨物を輸出し、再輸入する方法が採られています。
これが、香港・マカオ遊などと呼称される方法で、広東省・香港間であれば、半日?1日で、このオペレーションを完結させる事ができます。
但し、それ以外の地域の場合、貨物を香港に輸出して再輸入させる為には、相当の輸送時間・コストが必要となり、その代替機能を果たす施設が期待されていました。
保税物流園区は、「中国内貨物搬入時に輸出通関を行う事ができる」、「輸出通関と同時に、増値税の輸出還付が受けられる」、「加工工程を行わない貨物の流通拠点として活用できる」という要件を備えている為、香港・マカオ遊の代替として活用する事ができます。

因みに、保税物流園区は、どこも1Km²前後の小さな保税開発区であり、区内で加工業務を行う事は禁止されています(梱包・分類等の簡単加工業務を除く)。
飽くまでも、物流・流通機能に特化した開発区という事ができます。

4.蘇州総合保税区

蘇州総合保税区は、「蘇州工業園区が保税港区総合保税機能を有する税関特殊監督区域を試験展開する事に関する国務院の批復(国函[2006]128号)」に基づいて、蘇州シンガポール工業園区内に、設置された開発区です。
但し、この批復によって新設されたというよりは、既存の「保税物流中心B型」と「輸出加工区」が統合され、保税港区の運用規定が適用される形で、総合保税区への昇格が行われたというのが実態です。
旧蘇州保税物流中心B型は、他の保税物流中心に先駆けて、管理弁法公布前に認可・設置されたものですし、輸出加工区も、2000年に第一号の認可を受けたものです。
よって、操業開始時点(2007年)は、実際には形態変更時点となっており、その時点で、少なからぬ「加工・物流」オペレーション実績を有していました。

蘇州総合保税区は、区内に「加工・サービス・物流企業の全てを受け入れる」という意味では、保税区と類似していますが、中国内貨物を区内に搬入した段階で、増値税の輸出還付が認められるという点では、保税区以上の優遇が認められているという事ができます。
この意味では、保税区と物流園区を統合した様な位置付けの保税開発区という事ができます。

5.珠海・マカオクロスボーダー工業園区

珠海・マカオクロスボーダー工業園区は、2003年に国務院の認可を受け、2007年に管理弁法(珠海・マカオクロスボーダー工業園区の珠海園区管理弁法:税関総署令[2007]第160号)が公布・施行されています。
園区内では、加工、物流、輸出入・中継貿易、調達・販売・配送、商品展示という、幅広い業務が展開できますし、中国内貨物を園区に搬入した段階で、増値税の輸出還付が認められる点を考慮すると、その位置付けは、保税港区に近いという事ができます。

この開発区の一番の特徴は、ボーダーを跨いだ(税制・外貨管理を始めとする諸制度が異なる地域を跨いだ)、中国で唯一の開発区であるという点です。
では、異なる制度を園区内でどの様に調整しているかというと、園区は、フェンスと区内にある細い水道によって、珠海管轄区とマカオ管轄区に物理的に隔離されており、各々の管轄区は異なる制度の適用を受けています(珠海は中国本土側・マカオはマカオ側)。
また、両管轄区域は、川に架かる橋で繋がっていますが、往来に際しての通関手続が出境時の一回のみと簡便化されています(通常は入出境時の二回)。

この開発区は、マカオ・珠海という隣接した地域の往来(生産・人材・貿易等)の促進する事を目的として設立された開発区という事ができます。

6.保税物流中心B型

保税物流中心は、2004年に認可された旧蘇州保税物流中心B型試点(現在は、蘇州総合保税区)を第一号とし、2005年に管理規定(保税物流中心B型に関する暫定管理弁法:税関総署令[2005]第130号)が公布・施行されています。
保税物流中心B型は、区内で「保税保管、簡単加工、輸出入・中継貿易、国際調達・配送」の業務を展開する事が認められており、中国内の財貨を区内に搬入した段階で増値税の還付が認められるなど、その機能・位置付けは、物流園区に類似しています。
よって、香港代替機能(加工貿易品の香港・マカオ遊)を果たす事も可能です。
両者の違いは、物流園区が国務院の認可による開発区であるのに対して、保税物流中心B型は、個別企業が運営し、税関総署の認可によって設置される物流センターである事です。

現時点では、保税物流中心B型は、蘇州以外は北京・南京の2箇所のみですが、全国で百数十箇所の申請が上がっている様ですので、今後、大きく増加する可能性があります。

7.保税港区

保税港区は、第一号の上海洋山港保税港区が2005年に認可され(洋山港保税港区設置に関する批復:国函[2005]54号)、2007年に関連規定(保税港区管理暫定弁法:税関総署令[2007]164号)が公布・施行されています。

関連規定には、「国務院の認可を受けて、国が対外開放している貿易港の港区内、若しくは、それに隣接する特定区域内に設置され、貿易港、加工、物流等の機能を有する税関特殊管理監督地域を指す」と規定されています。
区内で展開できる業務としては、加工、物流、輸出入・中継貿易、調達・販売・配送、商品展示、検査・補修、研究開発、港湾作業が規定されており、保税開発区の中では、最も多様な内容となっています。
また、国内貨物を区内に搬入した段階で、増値税の輸出還付を適用する点は、物流園区等と同様です。
その意味では、最も大掛かりで完成された保税開発区という事ができるかもしれませんが、新しく、歴史の浅い開発区であり、現時点では具体的な評価を行うに足る実例が乏しい状況です。
今後の発展状況に注目する必要が有ると言えるでしょう。

注:
この内容は、保税開発区・保税倉庫活用実践マニュアル(NNA出版)の導入部分の抜粋です。
詳細に付いては、同著を参照下さい。

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