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掲載日:2008年9月3日
香港と本土の租税協定における来料加工のP/E問題

多くの香港企業が珠江デルタで来料加工を行っています。
これは、珠江デルタ式来料加工と呼ばれる特殊な形態の来料加工ですが(内資三来一補工場の名義借り形式)、この珠江デルタ式来料加工が香港企業のP/Eとなるかどうかに関る解釈が、国家税務総局よりでています。
その内容(内地と香港特別行政区の所得に対する二重課税防止、徴税漏れを防止する事に関する取り扱い規定に関する条文解釈と執行問題についての通知:国税函[2007]403号、以下、通達)の内容を以下解説します。
これは、2006年8月21日に香港で調印された、租税協定(本土では2007年1月1日より発効)に関して、恒久的施設(P/E)の提議、個人所得税納税義務の判定、譲渡所得などに関して、実務運用におけるガイドラインとして公布されたものです。

1.来料加工のP/E認定

通達では、来料加工のP/E認定に付いて、以下の通り規定しています。

  • 内地企業が、香港企業から来料加工業務を請け負い、香港企業が内地で生産、監督、管理、若しくは販売に参画する場合、恒久的施設(P/E)に該当するものと見做し、当該P/Eに帰属する利益に対して納税を行わなくてはならない。

では、全ての来料加工に関して、内地の来料加工工場が外国(香港)企業のP/Eとして認定されるのかというと、そうではありません。
その理由は、租税協定第5条では、「香港企業が、中国内地で加工を行う目的のためのみに、香港企業に所有権が帰属する商品を中国に保有する場合は、P/Eには該当しない」と規定している為です。つまり、独立した中国内地企業に、通常の来料加工を委託する場合(加工のみを単純委託する場合)は、租税協定の規定に基づき、P/E認定は受けないと判断してよいと思います。
但し、珠江デルタ式来料加工は、実質的には、香港企業が、内地の来料工場の管理運営を行っていますので、通達に基づけば、「香港企業のP/Eに該当する」事がほぼ明確になったといってよいと思います。
今後、珠江デルタ式来料加工工場において、P/E課税の問題が本格化する事が懸念されます。

2.P/E認定された場合の影響

内地の来料加工工場がP/E認定された場合、どの様な事態が生じるのでしょうか。
結果から言うと、当該来料加工から派生する所得に対して、香港企業が内地で企業所得税を納税する必要がでてきます。
誤解が生じやすい点として、数年前から、珠江デルタの来料加工工場が、見做し課税方式で企業所得税・営業税を徴税されるようになっていますが、これは、P/E認定に関係があるのか、という点です。但し、これは、飽くまでも、来料加工工場自体に対する課税であり、P/E認定とはなんら関係がありません。
内地の来料加工工場が香港企業のP/Eとして認定された場合は、「この様な来料工場自体に対する課税は継続された上で、更に、香港企業に対しても、来料加工から生じた所得に対して、内地で納税義務が発生する」事になる訳です。
これは、通達に、「この規定(香港企業にも内地で納税義務が発生するという内容)により、現在、内地企業が取得する加工賃収入に対して企業所得税を徴収している事に関する取り扱いが変更される訳ではない」という記載がある事からも分かります。
では、どの様な算式で課税所得を計算するか、という点ですが、これは、多分に実務運用の影響を受ける為、ここでは明確な解説が出来ません。
租税協定で明確となっているのは、「当該来料加工に帰属する所得が課税対象となる事」、「所得の算定に当たっては、関連する販管費(内地で発生したものに限定されない)の控除が認められる事」、「状況に応じて、総利潤の割合に基づく計算などの簡便方法の採用が認められる事」、「課税所得算定方式は、継続使用が認められる事」という点です。
P/E認定を受けた場合は、この条件を踏まえて、所管の税務局と協議・交渉する事になります。

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